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「糸満IoTクラブ」プログラミング体験会開催

「めっちゃ楽しい!」プログラミングに熱中する子どもたち=沖縄

2019年07月19日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 糸満は沖縄本島の最南端に位置する市。沖縄戦終焉の地として知られ、南部にはひめゆり学徒隊の慰霊碑「ひめゆりの塔」や平和祈念公園があり、訪れた人々が手をあわせています。観光としては西部の砂浜などから美しい夕陽がのぞめることも有名だそうです。

 糸満西部の糸満市ふくらしゃ館で7月15日、「糸満IoTクラブ」が主催するプログラミング体験会が開かれ、地元の親子100人以上が集まりました。来年から小学校でプログラミング教育が必修化されることもあって関心が高く、親たちも熱心に体験会に参加する子どもたちの様子を見ていました。

 子どもたちはプログラミングツール「Scratch」で動画を作ったり、ロボット「mBot」「EV3」をプログラミングして動かしたりしました。糸満IoTクラブに通っている子どもが教師役になってスクリプトや各種パラメーターの設定方法を教え、子どもたちはときに失敗しながら「こうかな?」「こっちじゃない?」とお互いに教えあい、熱心にパソコンやタブレットを操作していました。

Scratchで魚の絵を動かしてみる子どもたち
たくさんの魚たちがディスプレーの中で泳ぐ

●「必修化もあり慣れさせようと」

 体験会に参加した子どもたちは「めっちゃ楽しかった」「ロボットのコントロールは難しかったけど面白かった」「またあったら死んでも来る!」などと興奮気味に話していました。

 10才の子どもと参加した40代のお父さんは、「必修化もあり、慣れさせようかと思って参加した。子どもは『マインクラフト』が好きで、興味を持って自分からEテレのプログラミング番組も見ている。将来こういうものは能力として持っておいたほうがいいだろうと思う」と話していました。

 7才の子どもと参加した30代のお母さんは、「高校生の息子2人はタブレットに慣れてしまってキーボードが打てない。周りもそうだという。この子はPCに慣れさせたいと思って参加した。将来はものを作る仕事に就いてほしいという希望もある。通信教育も考えたが、通信教育だとわからないことを教えられる人がいない。今後も定期的にやってもらえると助かる」と話していました。

動作を設定してロボットに転送する子どもたち
「これでいいの?」「こっちじゃない?」
ロボット対決。「危なーい!」と熱くなる

●コンテストで受賞する子も

 糸満IoTクラブは「糸満をITの街に」を合言葉に一般社団法人イノベーション糸満が主催するクラブ活動。幼少期からプログラミングやロボットにふれる機会を作ってもらおうと、小中学生の子どもたちを対象に、Scratch体験会や、Unityによるゲームプログラミング講座、ドローンプログラミング講座などを定期的に開催しています。

糸満IoTクラブ参加者の子ども

 糸満IoTクラブ代表の山城渉さんは、「2035年にはIT人材不足などと騒がれる中、子どもたちから教えていかないといけない」と話します。「平成22年に糸満市をITの町にしたいという思いをもっている人間が集まって組織化したが、企業誘致はなかなか前進しない。そこでまず先に人材を育成して時機が合えば誘致をしようと平成28年にクラブを作った」(山城さん)

糸満IoTクラブ代表の山城渉さん

 活動開始から3年、糸満IoTクラブ出身の子どもがIT系のコンテストで受賞することも増えてきました。クラブメンバーの山城望くん(中1)は今年、グローバルキャスト主催の子どもみらいグランプリに自作のゲームを提出して優良賞を受賞しています。

 山城さんは、こうしてクラブに参加した子どもたちが作った実績や運動が行政や企業を動かすきっかけになることにも期待を寄せていました。「大人たちは経験不足でわからないことも多い。まず子どもからムーブメントを引き起こして、大人たちを動かしていきたい」(山城さん)

AIについての絵本を使った講座も開かれた

●総務省が挑戦を支援

 プログラミング体験会と合わせ、総務省の「異能vation」プログラム説明会も開催されました。

 異能vationは奇想天外でアンビシャスな技術課題に失敗を恐れずに挑戦する人(異能)の支援を目的に2014年度から実施中のプログラム。課題への挑戦を支援する「破壊的な挑戦」部門では年齢制限なく1年間で300万円を上限に支援が受けられます。今年の応募は7月31日まで受け付けです。

挑戦する人を支援する総務省の「異能vation」

 総務省 国際戦略局 技術政策課の笠井康子さんは異能vationプログラムについて「初めてだと失敗することを躊躇するかもしれないけど、恐れないでやってほしい。失敗しても取り返せばいい。総務省はそれを応援していこうとしている」と話していました。

総務省 国際戦略局 技術政策課の笠井康子さん

 今年からは、糸満IoTクラブのように地域の異能を支援する団体を募集する、「プレ異能vationスクール」も受け付けを始めています。やはり1年間で300万円を上限に支援が受けられ、団体は事務局と一体となって活動しますが、活動内容は基本的に自由です。

 前述の山城さんは異能vationプログラムについて「(糸満IoTクラブに参加している)子どもたちが、自分の考え方を発表するとか、世の中で通じるかを見極めるプレゼンテーションの練習としては一番いいと思う」と話していました。

●興味を持ち、行動する力

 厚生労働省の2015年毎月勤労統計調査によると沖縄の平均給与は全国最下位。山城さんによれば、糸満の給与水準は沖縄の中でも最下位3位グループに入ります。また沖縄の給与水準からすると公務員と同等の所得が得られるのがIT関連の職種なのだそうです。沖縄・糸満で生まれた子どもたちの将来のためにもIT教育は重要な鍵になるという思いを強く感じました。

 一方、IT教育は大人たちが考える「将来」のためだけではなく、子どもたちがいまをよりよく生きるための教養を身につけるものでもあります。

 11才の子どもと参加していた40代のお父さんから聞いた話が特に印象的でした。お父さんは子どもが5才のときからテレビの代わりにタブレットを与えていたそうです。理由は、好奇心をもって自分から学ぶ力を身につけてもらいたいからというものでした。

 「一方的に情報を与えられるより、興味がある情報を見られるようにしたほうがいい。自分の中に『なんで?』をもってほしい。たぶんベースは自然になる。自然の中で感じたことを『なんで?』と探していく。自然にふれてもらい、こっち(IT)にもふれてもらいたい。こっちが先じゃない。やっぱり感じたことが先になる」

 ITに限らず、教育の機会を増やすことは、世界を広げ、選択肢を増やし、生きる力を育むことに他なりません。子どもたちがいまコンピューターを学ぶ本来の意味をお父さんに教えられた気がします。子どもたちの歓声が響く会場の外には、空を映したように青く透き通る海が広がっていました。


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