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「もっとうまくやる」ロシア人科学者が遺伝子編集ベビーに意欲

2019年06月12日 07時47分更新

文● Antonio Regalado

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あるロシア人の生物学者は、遺伝子を編集した赤ちゃんを誕生させたいと考えている。承認が得られ次第、実験に取り組むつもりだという。ネイチャー誌が報じた

モスクワにあるピラゴフ名称ロシア国立医学研究大学のデニス・レブリコフ教授は、昨年中国で実施され、大いに非難を浴びた実験を再現し、HIVに抵抗力のある人間を作り出すことを望んでいるという。レブリコフ教授は、自分ならもっとうまくできると考えている。

レブリコフ教授は遺伝子編集の研究では無名だ。同教授が発表した論文のほとんどは、歯周疾患のバイオマーカーに関するものである。しかし昨年10月にレブリコフ教授は、遺伝子編集ツールのクリスパー(CRISPR)をヒトの体外授精胚に適用したとする論文を書いた。こうした実験について記述した論文はこれまでに十数件程度しかなく、レブリコフ教授の論文はそのうちの1つである。

さらに、同論文の共著者には、ロシアの大規模産科病院であるモスクワの国立クラコフ産婦人科・周産期医療研究センターのセンター長が名を連ねていた。レブリコフ教授は、遺伝子改変ベビーを誕生させることに関してロシアのルールは不明確であると考えており、この手順を実行するために承認を求める計画だという。

専門家たちは、現時点でさらにクリスパーベビーを誕生させることは無責任だと話す。その理由の1つとして、新生児の遺伝子を改変することで、どのような予期しない影響が生じるかを把握するのが難しいことがある。ロシア人研究者たちが胚から除去したいと考えている遺伝子「CCR5」を取り除くことは、HIVに抵抗力を持たせるだけでなく、認知力寿命にも影響を及ぼす可能性がある。

それでもなお、子どもたちの遺伝子改変への欲求に突き動かされる研究者たちは存在し続けるだろう。「私がやろうとしていることは、十分に正しいと思っています」と、レブリコフ教授はネイチャー誌に語っている。

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