シャープは、2018年度の連結業績を発表するとともに、2019年度の業績見通しを発表した。
2018年度の売上高は前年比1.1%減の2兆4000億円、営業利益は6.6%減の841億円、経常利益は22.7%減の690億円、当期純利益は5.7%増の742億円となり、減収および営業減益になった。期中には2回に渡る下方修正を発表し、期初計画には未達。鴻海傘下となってから、有言実行を打ち出してきた戴正呉会長兼社長にとっては厳しい結果となった。
予算未達は残念だが、最終利益と最終利益率は前年度を上回る
シャープの代表取締役兼副社長執行役員の野村勝明氏は、「残念な結果である」とし、「米中貿易摩擦や、大手顧客の需要変動の影響などが強まり、年度末にかけて、想定以上に厳しい市場環境となった。IoTエレクトロデバイスやアドバンスディスプレイシステムといったODMビジネスを中心に厳しかった。スマートホームやスマートビジネスソリューションも想定に届かなかった。だが、第2四半期以降、『量から質へ』の転換を進めており、最終利益と最終利益率は前年度を上回った。四半期ベースでは、2016年度の第3四半期以降、10四半期連続で最終黒字を継続している」と総括した。
また、2019年度の業績見通しでは、売上高は前年比6.3%増の2兆6500億円、営業利益は18.8%増の1000億円、経常利益は37.7%増の950億円、当期純利益は7.8%増の800億円と増収増益を見込むが、戴会長兼社長が打ち出した2019年度を最終年度とする中期経営計画の売上高3兆2500億円、営業利益1500億円とは乖離する内容となっている。
「事業環境は、中期経営計画を策定した際の想定に比べ、厳しいものになっている。2019年度も、米中貿易摩擦や顧客の需要変動の影響など、厳しい事業環境が継続し、第1四半期は、とくに厳しいものになると考えている。相応の影響は受けると見ている」とし、「8K+5G EcosystemとAIoTの最先端技術による、特長商品やサービスを創出するとともに、グローバルブランドの強化を図ることで、通期業績は前年度を上回る予想としている。2019年度は、改めて販売の強化にも取り組み、収益力強化と事業拡大の両立を図る」とした。 売上高では、中期経営計画の目標値に対して、6000億円という大きな乖離を生むことになったが、「未達のうちの6割がIoTエレクトロデバイスによるもの。15%がアドバンスディスプレイシステム。残りの25%がスマートホームやスマートビジネスソリューションの下振れとなっている」という。
PCのDynabook事業は早くも黒字化
一方で、2018年10月に子会社化したDynabookは、2018年度下期に早くも黒字化したことを報告。さらに、米国市場におけるテレビ事業において、ハイセンスに売却していたシャープおよびAQUOSのブランド使用権に関して、新たな協力関係を構築することで合意したことにも触れ、2019年後半以降、米国でのテレビ事業を再開し、テレビの販売にも弾みをつける考えだ。2018年度第4四半期は、テレビ事業は赤字となったが、今回発表した2019年度業績のなかには、米国でのテレビ事業での上乗せは織り込んでいないため、これがどれぐらいのプラス要素になるのかも注目される。野村副社長も、「北米のテレビ事業は、後半にしっかりと積み上げ、収益貢献したい」とした。
2018年度のセグメント別業績は、スマートホームの売上高が前年比14.6%増の6969億円、営業利益が9.8%増の480億円。「白物家電を中心に販売が増加。エアコンや洗濯機の冷蔵庫のほか、エネルギーソリューションのEPC事業が大きく伸長した。さらに、Dynabookを連結した効果もあった」という。スマートビジネスソリューションの売上高が前年比0.7%増の3204億円、営業利益が1.2%減の216億円。海外の複合機などが堅調だったという。IoTエレクトロデバイスの売上高が前年比1.1%減の4990億円、営業利益が13.1%減の28億円。「半導体は伸長したものの、大手顧客向けセンサーモジュールが前年度を下回った。大手顧客の需要変動の影響や成長投資に伴う償却費が増加した」という。アドバンスディスプレイシステムの売上高が前年比11.7%増の9596億円、営業利益が26.9%減の270億円となった。「米中貿易摩擦の影響などによる市況の悪化や、競争環境の激化、中国でテレビの販売を抑制したこと、スマートフォン用パネルの売上げが減少したといった要因のほか、有機ELディスプレイの立ち上げ費用などがあった。だが、液晶テレビ事業でアジア地域の販売が伸長し、ディスプレイ事業でPC・タブレット向けの中型パネルの売上げが増加している。注力する地域および領域での事業拡大は着実に進展している」とした。
グローバルブランドの「SHARP」を確立する
一方、野村副社長は、2019年度の方向性についても説明。「ディスプレイ技術、通信技術、クラウド/ IoT技術、センシング技術など、保有する数多くの独自最先端技術を核に、次々と新規事業を創出し、スマートホームやスマートオフィス、エンターテインメント、インダストリーといったさまざまな事業分野で、イノベーションを実現する」などと語った。
また、「グローバル事業拡大」、「新規事業の創出」、「M&A/協業」、「競争力強化」を進め、特長商品やサービスを創出。スマートホームでは、AIoT対応機器やサービスの拡大や5Gスマートフォンの発売などを計画。エンターテインメントでは、8Kテレビの販売強化やコンテンツの拡大、小型8Kビデオカメラの商品化などに取り組むという。
さらに、「2019年度は、グローバルブランド企業“SHARP”の確立も加速する。中国では、『量から質へ』の転換を加速させるとともに白物家電事業を本格展開し、米州ではブランドビジネスの本格展開を図るなど、各地域でのニーズと当社の強みを考慮した効果的な取り組みを進める。デバイス事業では、IGZOなど長年に亘って培ってきた技術を活用し、中型パネルへのシフト、有機ELパネルの外販推進などに取り組む」とした。
米州では、シャープおよびAQUOSのブランドで展開するテレビ事業では、8Kなどの付加価値モデルでの展開を重視。さらに、白物家電の展開などによる製品の拡大、Dynabookの販売貢献にも期待を寄せた。米州は、シャープにとって空白市場であり、そこを伸ばしたい」と、成長の伸びしろがあることを強調。また、「Dynabookは確実に貢献してくれだろう。中期経営計画でも、Dynabook事業を伸ばす計画にしている。2018年度は半期だけの貢献であったが、2019年度は通期で貢献する」などとした。
2022年の北京に向けて8K強化、郭台銘会長の総統選立候補は影響なし
2020年度に3000億円の事業規模を目指している8Kについては、「中国が2022年の北京オリンピックに向けて8Kを強化する方針を打ち出すなど、8Kの流れが世界的に出ている。その目標に向けて、きちっとやりたい」とした。
なお、親会社である鴻海精密工業の郭台銘会長が、台湾総統選に出馬することを表明しているが、「これまで通り、鴻海が持つ共同調達、生産、物流などの強みを生かすことには変わりはない。シャープと鴻海の関係にも変化がない。シャープの経営は、会長兼社長の戴に任されている。郭会長が堺の本社を訪れたのは一度だけである。また、戴は2019年度の中期経営計画をやり遂げるとしている」とした。