アップルが、再びクアルコムのチップを採用する。訴訟で争っていた両社は4月16日、和解を発表。特許ライセンス契約を結び、複数年のチップセット供給でも合意したことを発表した。アップルはクアルコムに特許ライセンス料を支払うことも明らかになっており、クアルコムの特許ライセンス料が高すぎるという言い分を完全撤回したような内容だ。
iPhone1台あたり8~9ドル?
アップルがクアルコムに払うライセンス料
ワイヤレス技術の開発は簡単ではない。研究開発に多額の投資をしたのだから、その結果としての特許に対して対価を払うべき。クアルコムの主張が認められたような形の和解となった。
初代iPhone以来、クアルコムのチップを採用していたアップルだが、2017年初めにアップルはクアルコムが求める特許ライセンス料が高すぎるとして提訴した。Wall Street Journalによると、当初はiPhone1台に対し7.5ドルのライセンス料で合意していたのだという。
アップルCEOのティム・クックは、この特許ライセンス料が高すぎると感じたようだ。スマートフォンが成熟期に向かう中でiPhoneの売上が鈍化したという事情もあるだろう。そしてクアルコムのビジネスモデルを問うために訴訟という手段に出た。
それが一転して今回の合意だ。しかも、審理が始まって2日目。両者は詳細な和解内容を開示していないが、UBSのアナリストは、AppleはiPhone1台に対して8~9ドルを払うという見積もりをしている。また、アップルが訴訟の期間中に支払っていなかった特許ライセンス料として50~60億ドルを払うと推測している。つまり、これはクアルコムのビジネスモデルを全面的に受け入れる形と言える。しかもこのアナリストの予想が正しければ、ライセンス料は以前よりも上がっていることになる。
インテルにとってのアップルは“迷惑な客”だったのか?
アップルが当初の主張を翻してでも手に入れるのは5Gだ
クアルコムの提訴以来、アップルはクアルコムに依存しない体制をつくろうとインテルと手を組んだ。だがインテルはこの分野では後発に過ぎない。iPhone XSなど2018年に発表したラインでなんとか全面的に採用したものの、5Gではクアルコムに遅れをとっている。
クアルコムは2018年末に5Gに対応したSnapdragon 855を発表しており、サムスン「Galaxy S10」のほかLG、シャオミ、OPPOなどが採用する。一方のインテルのは5G対応モデムの「XMM 8160」を2019年後半としていたが、どうやら開発は予定通りではなかったという報道がある(FastCompanyなど)。
アップルに残されていた選択肢は「インテルによる開発を待つ」 「自社開発」「MediaTek、サムスンなどから調達する」、そして「クアルコムと和解」くらいだったのだろう。
ちなみに、4月に入りファーウェイ創業者、任正非氏がCNBCの取材において、アップルに5Gチップを提供してもいいといった旨を語ったが、米中貿易戦争の最中にあってそれは難しい選択だ。そこで、4番目の選択肢を選んだのだろう。
インテルは上記の和解の発表と同日に、5Gモデム事業からの撤退を発表している。インテルにとってアップルは“望まざる顧客”だったのかもしれない(昨秋にインテル幹部に取材をさせてもらったとき、アップルについての質問はノーコメントだった)。インテルは2月、ロバート・スワン氏を正式なCEOとして任命しているが、同氏は元々はCFO。アップルのニーズに合わせて開発を急かされることは、財務的に意味をなさないとの判断を下したとしてもおかしくなさそうだ。
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