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オープンデータを活用して高校生が本格的なアプリを制作

ビジネス現場で活きるIT演習を行なう島田商業高校情報ビジネス科

2019年04月23日 11時00分更新

文● 重森大 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

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年々高度化し、外部コンペティションで評価される作品も誕生

 筆者の個人的なお気に入りは先述の通りチームゆめかさごの「Sea Fish Picture」だったが、他のチームも負けず劣らず粒ぞろいの作品発表会だった。その中でもダントツの評価を受けていたのが、チーム「平塚PR部」が作成した「Hiratsuka Maistas(ヒラツカ マイスタス)」だ。オープンデータを使ったアプリのコンペティションである「LODチャレンジ2018」において、学生奨励賞を受賞している。アプリの概要をひとことで紹介するなら、神奈川県平塚市の飲食店をリトアニア語で紹介するアプリなのだが、成立背景が実にしっかりしている。

平塚市に乗り込んだチーム「平塚PR部」

 平塚市は2020年の東京オリンピックにおいてリトアニアのホストタウンになっている。この機会に交流を深めようと、平塚市内ではリトアニアの文化や食べ物を紹介するイベントが盛んに行われているという。平塚PR部は平塚青年会議所主催の「ひらつかスクール会議」に参加してこうした実態を学んだ上で、「リトアニアのことを平塚の人に知ってもらう活動は盛んだけれども、平塚に来たリトアニア人に向けて平塚の情報を発信する活動が不足している」と感じたという。

 飲食店情報にしぼったのは、来日外国人が日本で何にコストをかけているかを調べた結果、食事と買い物とわかったため。地の利のない平塚を訪れ、飲食店データを集めて自分たちでデータを作成し、検索可能なアプリに仕上げた。お店を探せるだけではなく、料理の説明が掲載されているのがポイントだ。日本食の紹介と、それを平塚で食べられるお店の紹介とを組み合わせることで、来日したリトアニア人に日本の食事を知ってもらい、実際に食べに行ってもらえるアプリになっている。2019年2月14日には、平塚市役所でもプレゼンテーションを行った。

平塚市役所でのプレゼンテーションの様子

 先輩が作ったデータを流用したり、アイディアを熟成させたりすることで、回を重ねるごとに高度になっていく島田商業高校 情報ビジネス科のアプリ制作演習。プログラミングだけを学ぶのではなく、課題解決の力としてITを活かしていくための手法を学ぶ場として成熟しつつあることを感じた。今後への期待を込めつつ、最後に全9チームを改めて紹介して終わりたい。

地元のことを知らない人が多いことに課題を感じ、島田の歴史と近辺の名物を紹介する「しまれき」を制作したチーム「しまナビ」

深海魚の魅力で筆者のハートをつかんだ「Sea Fish Picture」を制作したチーム「ゆめかさご」

「さっぽろ一番」というインスタントラーメンのように安直なネーミングのチームは、海外からの観光客に人気が高い北海道に焦点を当て、中国語による観光案内アプリ「札幌一番」を制作

チーム「しょうにゅうどうさん」が四日市市をアピールするために制作したアプリは、魅力のひとつとして工場夜景に注目、夜景スポットや深夜営業の飲食店を検索が可能、筆者の心を動かしたアプリのひとつだ

路駐で有名という名古屋の不名誉な印象を払拭するため、チーム「金しゃち」はナビタイムから教育目的ということで特別にデータ提供を受けて名古屋市内の駐車場検索アプリ「かんたん駐車場ナビ」を制作

震災や豪雨災害で観光客の足が遠のいている九州地方をPRするため、クイズ形式の観光案内アプリ「NaZoToKi」を作ったチーム「Q-syu」

東北地方や九州など近年災害に見舞われた地域を支えるボランティアの新しい形として、「貢献モール」という地元産品のオンラインショッピングを提案したのは、チーム「奉仕部」

外国人観光客向けに岐阜の観光スポットや日本のマナーを解説する「GIFU SIGHTSEEING」を制作したチーム「ぎふTRIP」

リトアニア語での平塚飲食店案内アプリを制作、LODチャレンジ2018学生奨励賞を受賞したチーム「平塚PR部」

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