クラウド完全移行に取り組む住信SBIネット銀行も登壇、Oracle DBとの比較評価結果も紹介
「商用DBのクラウド移行が加速」AWSJが移行支援サービス説明
2019年03月11日 07時00分更新
「クラウドDBへの移行コストは3年間でカバー」住信SBIネット銀行が事例紹介
説明会では上述したDatabase Freedom Workshopを実際に利用して、オンプレミス/商用DBからクラウドDBへの移行を進める住信SBIネット銀行 システム開発第2部長の相川真氏がゲスト登壇した。
住信SBIネット銀行は、三井住友信託銀行とSBIホールディングスの合弁会社として2007年に開業した金融企業だ。「革新的な事業モデルの追及」や「最先端のITを駆使した金融取引システム」を経営理念に掲げ、システム関連の4部門とFinTech/イノベーション関連の4部門を抱えており「システムやテクノロジーの業務に従事する社員が全体の6割を占める」と相川氏は説明する。
2007年の開業時には全国6カ所のデータセンターを使い、物理環境をオンプレミス運用していた同社だが、2012年から仮想化によりデータセンターを4カ所に集約し、同時に一部システムでAWSクラウドの利用も開始している。そして2017年には、オンプレミスアプリケーションの全面的なクラウド移行を決定し、2020年の完了をめどに移行作業を進めている最中だ。
移行対象システムのうち、相川氏はインターネットバンキング(Web)システムを取り上げ、そのDB移行検討や移行作業の実際を紹介した。このシステムでは2017年末から2018年初頭にかけてDBサーバーの予備検討を行い、オンプレミスの「Oracle Database 11g Enterprise Edition」からAurora PostgreSQLへの移行を決定している。
相川氏はまず、移行の予備検討において実施した現行システム(Oracle DB)とAurora PostgreSQLとの比較検証の評価結果を示した。パフォーマンスではピーク時スループットを現行システム比で50%向上できることが確認できたほか、可用性、拡張性についてもAuroraが上回ると評価した。そしてランニングコストに関しては、現状の価格ベースで83%程度削減が可能であると試算している。
「Aurora PostgreSQLへの移行に際しては、コードの書き換えに結構なコストがかかるのも事実だ。それでも、この移行コストは3年間の運用でカバーでき、それ以降はAuroraを使い続けるほどコストメリットが出てくるものと試算している」(相川氏)
そのほか予備検討段階では、Oracleの代替機能確認、SQL互換性調査、可用性検証、運用性検証、性能検証、移行制検証なども実施した。このうちSQL互換性調査では、前述のSCTサービスを使って自動変換可能なものの割合も調査している。
「Schema Conversion Toolで互換性を調べ、SQLの62%が自動変換可能という結果が得られた。ただし実際には、開発段階になって変更が必要な(自動変換できない)ものが一部に見つかったため、AWSのサポートを受けながら変更を進めている」(相川氏)
また移行性検証においては、DMSを使ったオンラインマイグレーションサービスを検証した。ここでは移行処理中に、移行元(ソース)のDBで25%程度のパフォーマンス劣化が生じることがわかったため、本番DBではなく、同じデータを持っている災害対策(DR)サイトからのレプリケーションを行うことにしたと説明した。
なおクラウド移行後のDR対策について、相川氏は「まだ(DRサイトを設けるかどうかの)最終的な意思決定はしていない」と語った。AWSの大阪ローカルリージョン利用も考えたが、もともと東京リージョンはマルチAZ構成であり、ある程度距離の離れた環境で稼働させる要件は満たしているためだという。