主要エンタープライズワークロードをほぼカバー、導入ユーザーも登壇し今後の方向性を語る
「忘れてしまうほどシンプル」Rubrikが最新版バックアップ製品を説明
2019年03月07日 07時00分更新
バックアップ/データ管理製品を提供するルーブリック・ジャパン(Rubrik)は2019年3月6日、製品および同社ビジネスの方向性に関する記者説明会を開催した。最新版OS(“Andes 5.0”バージョン)では、保護対象として主要なエンタープライズアプリケーションの多くをカバーしているほか、コスト効率を高める自動クラウドアーカイブ機能、GUIの日本語化などを実現している。
説明会ではRubrik製品の特徴や新機能などが説明されたほか、導入顧客である成城大学やコミュニティネットワークセンター(CNCI)の代表もゲスト登壇。従来のバックアップ製品にまつわる課題をいかにRubrikが解消しているのかについて語った。
「バックアップを取っていることを『忘れてしまう』ほどシンプルな操作性」
Rubrikは2014年に米国パロアルトで設立された新興企業である。2016年には日本法人のルーブリック・ジャパンも設立しており、グローバルの従業員数は現在1400人以上に及ぶ。
まだ歴史の若い会社にもかかわらず、元シスコCEOのジョン・チェンバース氏や元シマンテックCEOのジョン・トンプソン氏、エンリケ・サーレム氏といった業界著名人らから600億円規模(5億5300万ドル)の投資を集めたこと、ヴイエムウェアの「VMworld Best of Show Award」を2017年、2018年と連続受賞したことなどもあり、バックアップ製品市場において大きな注目を集める存在となっている。2016~2018年度における売上高のCAGR(年平均成長率)は480%に及び、顧客数もCAGR 418%の勢いで急伸している。
Rubrikでは、自社のソリューションを示す言葉として“クラウドデータマネジメント”を標榜している。これはデータセンター/クラウドといった環境の違いを問わず、包括的なデータ管理を実現する単一のソフトウェアファブリックを意味するという。
ルーブリック・ジャパンの永井弘訓氏は、同社ではバックアップにとどまらず「デジタルトランスフォーメーション時代のデータ保護」を考えており、過去のバックアップソリューションが抱えていた課題を解消していると説明した。たとえば、従来はバックアッププロキシや専用ストレージなど多数のコンポーネントが必要だったものを、シンプルな“ハイパーコンバージドインフラ(HCI)”型のアプライアンスで置き換えたほか、パブリッククラウドや自動化、セキュリティといった現在の要件にも標準で対応している。
当初はハードウェアアプライアンスとしてのみ提供していたが、昨年からはサードパーティー製ハードウェア(シスコ、Dell EMC、HPE)で動作するソフトウェアも提供を開始した。また、ROBO(リモート/ブランチオフィス)環境向けの仮想アプライアンス「Rubrik Edge」、パブリッククラウド(AWS、Azure)上でクラスタノードを構成するソフトウェア「Rubrik Cloud Cluster」もリリースしている。
ルーブリック・ジャパンの神近孝之氏によると、Rubrikアプライアンスは30~40分程度でセットアップが完了し、サービスレベル(SLA)ベースのデータ保護ポリシーを作成し、個々のバックアップ対象(仮想マシンなど)に適用するだけで、あとは自動的に運用が続くという極めてシンプルなデータ保護ソリューションだと説明した。「バックアップを取っていることを『忘れてしまう』ほどシンプルな操作性と自動化機能、それがRubikの特徴だ」(神近氏)。
永井氏は今後の日本市場における拡大戦略として、リセラー(二次販売店)向けの支援策を拡充するほか、テクニカルアライアンスパートナーとの連携強化、コンテンツの日本語化(日本語Webサイトの開設)などに取り組むと説明した。アライアンスパートナーについては、Windows Server 2008やSQL Server 2008のサポート終了を控えて、現在は特にMicrosoft Azureとの取り組みに注力していると述べている。
エンタープライズアプリケーションへの対応がほぼ完了、次の方向性は?
Rubrikでは、2015年の製品初版リリースから継続的なアップデートと機能拡張を続けてきており、14回目のアップデートとなる最新版“Andes 5.0”バージョンでも多くの機能強化がなされている。神近氏は、今回の機能強化によって「Oracle Database」や「SAP HANA」「MySQL」「PostgreSQL」といったエンタープライズ系ワークロードに「ほぼすべて対応できた」と説明した。
Ver 5.0における新機能では、たとえばOracle DBのライブマウント機能がある。これは、バックアップデータを使って短時間でDBインスタンスをリストアできるというもので、業務の可用性を高められるだけでなく、開発/テスト環境用のクローンDBとしても、開発者のセルフサービスでより簡単に活用できる。なおOracle DBについても、仮想マシンなどと同じようにポリシーベースでの自動データ保護が適用可能だ。
また「NAS Direct Archive」機能も追加されている。これは、NAS上にある膨大なファイル(非構造化データ)について、メタデータだけを検索可能なかたちでRubrik上に残しつつ、データそのものはクラウドアーカイブへと移すもの。これにより、いつでもデータを検索/取り出しできる状態を維持しつつ、アーカイブストレージコストの削減につなげられるとしている。
Rubrik環境の統合管理SaaSツール「Rubrik Polaris」を用いた、「Office 365」のEメール/カレンダーのバックアップ機能も提供される。バックアップ先はAzure BLOBストレージであり、クラウド環境ですべてが完結するメリットがある。
神近氏は、Rubrikではこれまで「オンプレミスの既存バックアップ環境をシンプル化する」「クラウド環境との連携を図る」という進化のステップを踏んできたが、これからは「ハイブリッドクラウド全体のデータ管理を行う」方向性に向かうことになると説明した。
「バックアップ環境のシンプル化やクラウド連携までなら、競合他社でもやっている。ルーブリックは、Polarisを中心として大規模なハイブリッドクラウド環境全体の統合的なデータ管理を行う方向性に向かう」(神近氏)
さらにそこでは、バックアップデータのリカバリ以外での活用も進めていくという。たとえば現在は、Polarisに収集したバックアップデータを機械学習で分析し、たとえば「数百個のファイルが一気に削除されている」といった、マルウェア/ランサムウェア感染の疑われる異常なふるまいを検出して管理者にアラートを上げる機能(Rader)が提供されている。このマルウェア検知/復旧機能だけでなく、クラウド/オンプレミスをまたぐ柔軟なDR環境の実現、バックアップデータに含まれる個人情報などを自動検知するコンプライアンス支援機能なども追加される予定だという。
成城大学、CNCIが導入までの経緯や評価、今後への期待を語る
記者説明会にゲスト登壇した成城大学 メディアネットワークセンターの五十嵐一浩氏、コミュニティ ネットワークセンター 技術本部のニコライ・ボヤジエフ氏は、それぞれにRubrikを導入した経緯や評価を語った。
五十嵐氏が所属する成城大学のメディアネットワークセンターは、学内IT/ネットワーク基盤を支える部門である。2011年の東日本大震災を契機に、同学では災害対策として、学術情報ネットワークのSINETと沖縄県の宜野座データセンターを用いた遠隔バックアップ環境を構築した。当時の接続回線(SINET 4)は100Mbpsであり、バックアップ元での重複排除処理が必須だったため、2013年にはバックアップアプライアンスの「Dell EMC Avamar」を採用した。
ただし、Avamarのアーキテクチャでは“イメージプロキシ”と呼ばれる中間サーバーが必要であり、バックアップ処理中にはしばしばこのイメージプロキシがダウンすることがあった。そうすると処理途中の仮想マシンデータが異常な状態になり、これを復旧するためには面倒な手作業が発生するため、リプレース時に製品を再検討することになった。結果として「2016年のVMworldでもすでにブースが大盛況だった」(五十嵐氏)というルーブリックを選択している。
五十嵐氏はルーブリックを評価するポイントとして、プロキシサーバー不要のシンプルな構成だけでなく、設定済みポリシーを新しい保護対象(仮想マシン)に適用するだけの簡単な設定と自動運用、ファイル単位での優れた検索/リストア機能、20分程度で完了するバージョンアップなどを挙げた。ふだんの運用では「本当に忘れてしまう」ほど何もする必要がなく、エンドユーザー自身でもセルフサービスで簡単にバックアップ/リストア操作ができる点が、忙しいシステム管理者としては特に評価が高いという。
「Rubrikがあるおかげで、VMUGのコミュニティ活動ができていると思っている。つい先日もパロアルトに出かけて1週間ほど(大学に)いなかったが、それでも(バックアップやリストアができないと言って学内から)怒られない。システム管理者にとって重要な情報収集活動や、新しいことにチャレンジするための『時間』を、Rubrikが与えてくれていると思う」(五十嵐氏)
コミュニティ ネットワークセンター(CNCI)のニコライ・ボヤジエフ氏は、ISP事業者の立場からRubrikの採用理由を説明した。CNCIは、東海地方のおよそ150万世帯をカバーするケーブルテレビ局(11社)グループの統括運営会社(MSO)であり、およそ50万ユーザーを抱えるISP事業も展開している。
CNCIでは2017年、新たな仮想化基盤を構築することになり、そのタイミングで統合バックアップの導入が必要となった。それまではシステムごとにバックアップしていたが、新基盤の構築に伴って100VM以上の仮想マシンが追加されることになったため、包括的にカバーできるバックアップシステムが求められたという。社内向けだけでなく顧客サービス用システムも多数あるため、オフサイトバックアップも必須の要件となった。
同社として大規模なバックアップシステムの構築は初めてだったため、調べてみたところ、一般的な構成はコンポーネントが多く、それぞれにチューニングやメンテナンスを行わなければならず非常に複雑であることがわかった。「もしこの一部が壊れたら、それを修復するために別のパワーが必要。これはかなり運用工数が取られると思った」(ボヤジエフ氏)。
ボヤジエフ氏もルーブリックが話題になっていることは2016年ごろから知っていたが、特にルーブリックのチーフテクノロジストであるクリス・ワール氏のブログを呼んで、その技術的な特徴に興味をひかれたという。「当時は別件でHCIを検討していたのだが、『HCIをバックアップに適用する』というルーブリックの考え方は面白いと思った」(ボヤジエフ氏)。
2017年9月に検証機でPOCを実施したところ、「ラック設置を含めて45分以内でバックアップが開始できた」「ライブマウントとvMotionでRTO数秒でリカバリできた」「20VM+物理サーバー数台+数TBのNASを1週間バックアップしたが問題なし」といった良好な結果が得られたため採用を決定し、11月には導入したという。ちなみに同社のバックアップ規模(100VM以上、29TB)で競合製品と比較した場合、機能面で優れることに加えて、筐体ライセンスによるランニングコスト面の優位性もあったという。
ちなみにCNCIでは、「VMware vSAN」と10Gbpsのメトロエリアネットワークを使ってマルチサイト間でストレッチクラスタを構築しているが、そのSDDC全体を1台のRubrikでバックアップしているという。
ボヤジエフ氏は、Rubrikを1年超使ってきた経験からの総合評価として、「とにかく運用がラク」であるのに加え、実際にリストアを数回実施し短時間で済んだこと、ソフトウェアのメジャーバージョンアップを2回実施したが無事に実施できたこと、機器の構成ミスで障害が発生したが自動復旧できたこと、問い合わせ時のサポート対応が非常に迅速だったことなどを紹介した。「良い買い物をしたという気分。バックアップが楽しくなった」(ボヤジエフ氏)。
最後に五十嵐氏、ボヤジエフ氏の両氏に、最新版の機能や「バックアップデータのさらなる活用」という方向性に対する期待を尋ねてみた。両氏とも新版で追加されたNAS Direct Archive機能を活用したいと答えたほか、五十嵐氏は次のバージョンで予定されているGDPRなどのコンプライアンス対応機能を、またボヤジエフ氏はマルチテナント機能の活用による新サービス展開を、それぞれ検討していきたいと述べた。