CGアニメーターとして参加した若杉 遼氏にインタビュー
アカデミー賞受賞作『スパイダーマン:スパイダーバース』アニメならではの映像が新鮮!
2019年03月06日 17時00分更新
アニメーションは世界共通の言語
伝えたい言葉を動きに乗せてお客さんに伝えるのが仕事
――海外にしかないジェスチャーなどもありますよね
若杉氏:確かに海外にしかない難しいジェスチャーや仕草などはありますが、ほかの海外の3DCGアニメを観ても、セリフなしでキャラクターの感情が伝わることがありますよね。個人的には、お客さんとのコミュニケーションツールがアニメーションなので、アニメーションというのは世界共通の言語だと思っています。
――そうすると、その映像でどう伝えるかが大事ですね
若杉氏:はい。自分たちの仕事は、作った動きやポーズでお客さんがどれだけ感情移入できるか、キャラクターの気持ちが絵から伝わるかだと思います。伝えたい言葉を動きに乗せてお客さんに伝えるのが仕事として考えています。
――日本ではアニメによってはキャラクターごとに作画監督がいたりしますが、全キャラクター担当するのですか?
若杉氏:作り方としてキャラクターごとに分かれているわけではなく、カットごとに分けて作ります。今回はスパイダーマン5人全員がいるショットも担当したので、一応全キャラクターに携わりました。
――どのキャラクターがお気に入りですか?
若杉氏:スパイダー・グウェンですね。女の子のキャラクターだけどちょっとかっこよさがあり、さらに複雑さというか深い印象があるので好きですね。あとバレエをしているという設定なので、ダイナミックなポーズや記号的なポーズを作りやすかったですし、そのポーズを作るのが楽しいキャラクターでした。
――パワードスーツに乗ってるキャラクターもいましたね
若杉氏:ペニー・パーカーですね。本作はリアリスティックな表現が多いですが、アニメーションにした大きな理由として、ペニーのようなキャラクターもいれば、スパイダー・ハムのようなルーニーテューンズのようなキャラクターもいるのをアニメ的に表現できるというところかなと思います。やはり実写できないし、CGアニメでやる理由でもあるし、そうした部分が今回の見どころの1つかもしれませんね。
――見どころという話が出たところで、アニメーターとしてこういうところを観てほしいという部分はありますか?
若杉氏:モーションですね。キャラクターがパンチしたときのモーションブラーとか、顔の表情ではしわを全部描いてますし、そうしたディテールをすべてアニメーターが手描きで担当しているので、そこを観てほしいですね。細かいしわとかを描くのはたいへんはたいへんだったのですが、アニメーターからすると動かすのが好きということもあり、すごく楽しかったんです。そうした、自分が仕事をして楽しかったディテールを観てもらえたらうれしいですね。
――最後に読者に向けてメッセージをお願いします
若杉氏:この映画で共感することとして、自分がなりたいと思うものになれないという点があると思います。自分の場合、ピクサーに行きたいという気持ちが強く、ラッキーや人の支えがあってかなえることができました。しかし、そうしたことは必ずしも叶うとは限らない。でも、自分にしかできないものというのは必ず1人1人にあると思うんです。結果的には叶わないかも知れませんが、自分にしかできなものとかそこに注力して情熱を向けてがんばれる若い人が増えたらいいなと思うのです。自分が大好きだと燃えたり、寝る間も惜しんでやってしまうような、情熱が煮えたぎるものを見つけられたいいなという、そういうメッセージがこの映画の中にあると思います。
主人公のマイルズも、思い描いているスパイダーマンの姿があるのに、それがうまくいかずにフラストレーションになってる。でも、最終的に、自分は自分でいいんだというような話があり、ストーリーとしてとても気に入っています。
自分は学校などで若い子たちを教えてることが多いのですが、好きなことを仕事にするというのはちょっと残酷なことがあります。好きだからこそどうしても譲れなかったり、自分を追い込んでしまったりする。そうしたときに、自分は自分でいい、自分が好きなものをやり続けていれば、どこかにたどりつける。そういうメッセージがある『スパイダーマン:スパイダーバース』。モノづくりをしている人全員観てほしい映画です。
――ありがとうございました
作品概要
タイトル:『スパイダーマン:スパイダーバース』
監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー
監督・脚本:ロドニー・ロスマン
プロデューサー・脚本・ストーリー:フィル・ロード
プロデューサー:アヴィ・アラッド、エイミー・パスカル、クリストファー・ミラー、クリスティーナ・スタインバーグ
エグゼクティブプロデューサー:スタン・リー、ブライアン・マイケル・ベンディス、ウィル・アレグラ
日本語吹替版主題歌:「P.S. RED I」(歌:TK from 凛として時雨)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
日本語吹き替えキャスト:
マイルス・モラレス/スパイダーマン:小野 賢章
ピーター・パーカー/スパイダーマン:宮野 真守
グウェン・ステイシー/スパイダー・グウェン:悠木 碧
スパイダーマン・ノワール:大塚 明夫
スパイダー・ハム:吉野 裕行
ペニー・パーカー:高橋 李依
キングピン:玄田 哲章
公式サイト:http://www.spider-verse.jp/
3 月8 日(金)全国ロードショー