2019年2月26日、ネットアップは「NetApp HCI」についての戦略説明会を開催した。ストレージベンダーによるサーバー製品として注目を集めたNetApp HCIだが、パブリッククラウドとオンプレミスの連携を実現する。
性能遅延、バックアップ破綻、コンテナ管理の負荷など課題山積
昨年から国内展開されているNetApp HCIは、エンタープライズ向けを謳うHCI。Hyper Converged Infrastractureではなく、Hybrid Cloud Infrastractureを意味しており、VDIやプライベートクラウドでの利用のみならず、ハイブリッドクラウドのオンプレミス側システムとしての利用も想定している。1月には最新Skylake CPUを搭載したコンピュートモデル「H410C」と初のGPU搭載のモデル「H610Cシリーズ」が追加されている。
発表会の冒頭、NetApp HCI戦略について説明したネットアップの神原豊彦氏は、NetApp HCI導入の背景を説明すべく、先進的なITに取り組んでいるユーザーの課題を挙げた。
たとえば、イスラエルのコカコーラは、製造プラントの自動化と品質向上のためにクラウドベースの新システムを導入したが、ライン管理システムから膨大なデータが取り込まれた結果、120msという性能遅延につながった。また、カンサス市の小児科医は医療ITの高度化によってデータ容量が急増し、既存のバックアップやクラウドでのデータ共有プロセスが破綻してしまった。「HIPPAでは災害時もデータを参照できなければならないので、IT担当者6人が交代制で対応する事態になった」(神原氏)。さらにドイツのサービスプロバイダーはコンテナベースのDevOps体制に移行する予定だったが、クラスターの運用が難しかったり、コンテナ間でのデータ共有が大きな課題となっていた。こうしたエンタープライズ顧客の課題を解決したのが、クラウドのようなインフラを提供するNetApp HCIだ。性能を改善し、管理工数を削減し、コンテナの同時展開数を大幅に拡大できた。
NetAppクラウドとオンプレミスをシームレスに統合するData Fabricの戦略について概説したData神原氏は、NetApp HCIについて「パブリッククラウドのローカルリージョンを作るのを手伝ってほしいという声に応えた」と語る。
ユースケースもクラウド連携を意識したものに変化しつつある。たとえば、HCIの典型的なユースケースであるエンタープライズVDIにおいては、従来はサービスの継続性やクライアントへの性能面での追従がメインだったが、今後はクラウド連携やGPUによるレンダリング性能が重要になる。こうしたエンタープライズの用途でクラウド連携を前提としたNetApp HCIは最適だ。また、クラウド活用や開発のDevOps化が求められるSoR型の業務アプリケーション、オンプレミスとクラウドを併用することの多いKubernetes環境をエンタープライズで利用するのにも、オープンアーキテクチャを採用するNetApp HCIは最適だという。
「予測可能」「柔軟性」「シンプル」がメリット
後半ではネットアップの大削 緑氏が、NetApp HCIの製品詳細を説明した。
SolidFireのSSDストレージを採用したNetApp HCIは、QoS機能としてパフォーマンスを保証しており、インラインで実施される重複排除や圧縮処理のオーバーヘッドも生じないと。また、コンピュートノードとストレージノードを組み合わせることで、処理能力と容量をリニアに拡張することができるのも特徴で、キャパシティに応じたライセンスも用意されている。さらに、導入や運用もシンプルで、ストレージも含めてvCenterから一元的に運用管理できるのも魅力だ。こうした「予想可能」「柔軟性」「シンプル」などのメリットにより、ユーザーは既存のHCIのメリットをそのまま享受でき、さまざまな課題を解決するという。
NetApp HCIは出荷1年未満で、顧客数は350社を超え、出荷容量も200PB以上を誇る。大削氏は、「『HCI=VDI』というイメージは強いが、NetApp HCIはVDIとデータベースを同居させたり、エンタープライズアプリケーションを動かしたり、いろいろなワークロードを載せられる」とアピールする。