産業用インタフェース/プロトコルに対応するエッジサーバーやソフトウェアで構成「HPE Edgeline Converged Edge System」
HPE、IoT/エッジ領域の“OT+IT”統合ソリューション発表
2019年02月12日 07時00分更新
日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2019年2月8日、エッジコンピューティング領域の新たなハードウェアとソフトウェアで構成される「HPE Edgeline Converged Edge System」を発表し、各ハードウェア/ソフトウェアの国内販売を開始した。
2016年から提供しているハードウェア(Edgelineエッジサーバー)ラインアップの強化だけでなく、産業現場のIoTデバイスや制御用機器(PLC)などのOT(オペレーショナルテクノロジー)製品とのダイレクト接続を提供する「OT Link」ハードウェア/ソフトウェアも新たに投入しており、OT/ITの簡素化された一元管理、エッジにおける本格的なデータ分析とそれに基づくリアルタイム制御、クラウドとの接続などが可能なプラットフォームを提供する。
Edgelineソリューションの開発を主導するトム・ブラディシッヒ(Tom Bradicich)氏は、今回の発表はHPEが「OT製品を伴ってOT市場に参入する」ものであり、Edgelineは“OT+ITの統合プロダクト”という新たなカテゴリーを開拓するものだと強調。すでにOT領域のテクノロジーパートナー企業も多く持ち、「将来的には競合他社もこのカテゴリーに参入し、HPEを追随することになるだろう」と自信を見せた。
エッジコンピュータとOT機器との直接接続を可能にする「OT Link」を実装
HPEでは2016年から、エッジコンピューティング向けのサーバーハードウェアである「Edgeline EL1000/EL4000」を提供してきた。これは0~55℃の稼働温度、耐衝撃/耐振動性を持つハードウェアで、最大64コアのXeonプロセッサと512GBメモリ、48TBのSSDを搭載することで、工場やプラントなどの産業現場のエッジにエンタープライズクラスのコンピューティングリソースを提供する製品だ。
今回は、これら従来のハードウェアも包含しつつ、新モデルのハードウェアやOTとの接続モジュールおよびソフトウェア、管理ソフトウェアを追加し、OT領域のデバイスとの接続や制御が可能な「HPE Edgeline Converged Edge System」を構成している。
まず、新たに追加されたコンピューティングハードウェアが「Edgeline EL300」だ。EL1000/4000よりもコンパクトで低消費電力、-30~70℃の幅広い動作温度を実現した設計となっており、プロセッサにはCore i5/i7/Atomを採用。最大32GBメモリ、2TB SSD、1ギガビットEhternet×2ポートに加えて、オプションにより無線LANやLTEでの無線接続も対応予定。さらに、UPS(無停電電源装置)の役目を果たすバッテリモジュールも提供予定だ。定価(税抜)は47万7000円から。
EL300ではドーターカードを取り付けることで、産業用/OT領域のさまざまな標準インタフェースに対応し、産業用機器をダイレクトに接続することができるようになる。「OT Link認定モジュール」と呼ばれるこのカードには、産業用Ethernetの1GbE TSN(Time Sensitive Networking)、車載ネットワークのCAN Bus、シリアル通信のRS-232/422/485、汎用I/OのGPIOの各インタフェースを搭載したものが用意されている。定価は3万2000円から。
各種OTデバイスとの接続やデータ収集、アプリケーションとの連携、クラウドへの転送を管理/制御するソフトウェア「HPE Edgeline OT Link Platform Software」も提供される。データ処理のパイプラインをGUIにより簡単に構成できるほか、オープンなAPIを介して柔軟に外部システムやクラウドとの接続ができる。このソフトウェアに加えて、コンテナ化したアプリケーションをリポジトリで中央管理し、各現場に分散配置されたEdgelineサーバーに配信する管理ソフトウェア「HPE Edgeline OTLink Workload Orchestrator」も提供する。 発売はいずれも今年5月の予定。
加えて、ハードウェアレベルでのリモート管理ソフトウェア「HPE Edgeline Integrated System Manager(iSM)」と「HPE Edgeline Infrastructure Manager (EIM)」も用意されている。iSMは、HPE ProLiantサーバーが内蔵するiLO相当の機能を提供する。またEIMは統合管理ソフトウェア。いずれも無償版、有償版が用意されている。
エンタープライズクラスのワークロードとOTアプリケーションを単一筐体で
ブラディシッヒ氏は、OT市場には産業制御システム、データ取得/収集システム、産業ネットワークにまつわる多様な製品群があり、1000億ドルの市場規模があると説明する。今回HPEはこの市場に、OTとITを統合した製品群で参入すると述べる。
さらにブラディシッヒ氏は、Edgeline Converged Edge Systemでは、エンタープライズクラスのITワークロードとOTのアプリケーションが同じエッジ筐体内で動作するため、機器導入コストの削減、省スペース化、省電力化、さらには実装や管理の利便性などを実現すると説明した。
OT領域のメーカーからもITシステムとの接続を可能にする製品は多数登場しているが、既存のそうした製品との大きな違いとして、ブラディシッヒ氏は「エンタープライズクラスのコンピューティング能力」を強調する。Edgelineが狙うものは、エッジヘビーなワークロード処理を実現するプラットフォームの展開と管理だ。
Edgeline Converged Edge Systemはすでに、電力会社である米センターポイント・エネルギー、HDD/SSDストレージメーカーの米シーゲイト、航空機メーカーの仏エアバス、石油会社の米マーフィーオイルなどで、プラントや製造現場に導入されているという。
発表会では、キヤノン イメージソリューション事業本部の荒井毅一氏がゲスト登壇し、今年1月にキヤノンとHPE、NSWの3社が共同で発売した産業用映像ソリューションを紹介した。このソリューションは、キヤノン製のソフトウェア「Vision Edition」「Monitoring Edition」を現場のEdgelineサーバー上で動作させ、キヤノン製産業用カメラの映像に高度な認識/分析処理を施すというものだ。
「動画を含む画像を処理するソフトウェアなので、当然ハイパフォーマンスなマシンが必要。ここでEdgelineハードウェアがすぐれた性能を発揮する。さらに、OT Link Platformソフトウェアはオープンなインタフェースを備えているので、PLCなどのOTシステムと連携する当社のソフトウェアに適していた」(キヤノン 荒井氏)
なおEdgeline Converged Edge Systemでは、国内外主要メーカーのPLCや産業システムで使われているプロトコルを標準でサポートしている。ブラディシッヒ氏は、OT市場で製品を供給する200以上のサードパーティに対応していると述べたうえで、OT領域でも豊富なテクノロジーパートナーをすでに獲得していることを紹介した。また国内でもすでに複数の企業がベータテストに参加しているという。