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私たちの働き方カタログ 第32回

制度と文化が男性育休を推進したリクルートコミュニケーションズ

エンジニア部長が考える男性育休の広げ方

2019年02月20日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●曽根田元

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 その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第32回は、マーケティングサービスを展開するリクルートコミュニケーションズ。エンジニアをマネジメントする観点から見た男性育休について、同社のエンジニア部門の責任者である阿部直之氏に聞いた。

リクルートコミュニケーションズ ICTソリューション局 アドバンスドテクノロジー開発部 部長 プロダクトアーキテクト 阿部直之氏

「変化の激しい子どもの成長を間近で見てみたかった」

 まだまだ事例の少ない男性の育休だが、制度導入から3年弱を経て、組織に根付き始めたのが今回取材したリクルートコミュニケーションズだ。同社は、2016年4月に男性の育児休暇取得を必須化し、同10月には全従業員対象のリモートワーク制度を導入した。単に制度を用意しただけにとどまらず、男性の育児をトップダウンで積極的に啓発しており、管理職を巻き込んだ冊子なども配布してる。

 こうした制度や運用面の後押しを受け、自身もいち早く育児休暇を取得。マネージャーとして男性育休の推進に関わっていたのが、今回取材した阿部氏だ。「もともと子育てにはきちんとコミットしようと思っていたし、妻とも相談していました。子どもは好きだし、変化が激しいと聞いていたので、小さいうちから子どもの成長を間近で見ておきたいと思いました」(阿部氏)というのが育休を取得した理由だ。

 同社の男性育休制度は、最大20日間の育児休暇(5日間は必須)を出産から1年以内に不連続に取得できるというもの。「不連続に取得できるので、使いやすいです。僕は分けて使いましたが、別のマネージャーは20日連続で取得しました。出産直後に10日取得して、残りをバラバラとったメンバーもいますね」(阿部氏)とのことで、取得の仕方はさまざまだ。阿部氏の場合は、出産直後に休みとリモートワークを多めにあて、その後出社する回数を増やしていったという。

 阿部氏の場合は、実家が近所で支援を受けられやすかったことに加え、リモートワークと育休を組み合わせることで、仕事と子育てをうまく両立できた。「午前中は育児にあてて、午後はミーティングのために出社。夕方早めに帰り、夜中にリモートワークするとか。1日まるごと出社しなくても、柔軟に働けたと思います」(阿部氏)と感想を語る。一方で、職場のメンバーとのコミュニケーション不足に陥らないよう、レスポンスをスピーディに返すことを心がけ、オフラインでのメンバーとのやりとりにも時間を当てた。「メンタリングを直接やりたいメンバーもいたし、リモートワークだけでいいモノが作れるとも思ってません。組織のパフォーマンスを落とさないために、短時間でもコーチングやブレストには時間を割きました。でも、僕のマネジメントを必要としない組織になれたら、むしろ最高だと思っています。役割がなくなったら、また新しい仕事を作りにいけばいいわけで(笑)」と阿部氏は語る。

 育児休暇が必須化される前からリモートワークの導入検証を行なっていた阿部氏の場合、コミュニケーションがきちんととれていれば、仕事がきちんと回るのはわかっていた。時間をかけないで、成果を出すという文化が組織に根付いていたからだ。「事前検証の段階でメールのやりとりをチャットにしたり、Wikiのような情報共有の仕組みは作っておきました。他のメンバーが自律的に動いてくれるという組織的な特性もあったので、恵まれた環境だったと思います」と阿部氏は振り返る。

スケジューラーに「育児帰宅」と登録し、他のメンバーにもアピール

 育休制度をいち早く利用した阿部氏は、マネージャーとして率先して取得することで、組織内での育休制度の利用を自らリードしてきた。制度自体はポジティブに受け入れられていたものの、導入当時の現場の空気感として「男性が育児に参加するのが当たり前」という空気ができていなかったからだ。「カレンダーに『帰宅』って登録しても、ミーティング入れられちゃうんですよ(笑)。でも、『育児帰宅』って登録してみたら、入れられなくなりました。早く帰って、子どもをお風呂に入れられるようになるんです」と阿部氏は語る。阿部氏自身が、男性育休制度自体を積極的に発信し、チャットに育児チャネルを作ったり、社内Wikiに育児で使える休暇一覧をまとめたり、育児に関わっている男性が社内にいることをきちんとアピールしたという。

 こうした阿部氏のアピールもあって、40名のチームでの“育休男子”はすでに6人に上っている。「最近は、男同士でわりとディープな子育て話もできるようになってきました(笑)。男性も『家族を大事にしたい』というモチベーションが強いことを実感しています」と阿部氏は語る。

 育休で得られたものは大きかった。「短期的に見ると、勉強する時間は間違いなく減るのですが、子どもが育っていく様子を見るのは、僕にとってむしろ勉強でした。子どもが学んでいる様子を見ていると、なんだかニューラルネットワークの発展と類似しているところあるなとか(笑)」と阿部氏もエンジニアらしいコメント。その他にも、組織内のコミュニケーションや子育てにおける家庭内の役割、子育てに関わらなかったら見られなかったサービスや店舗設計など、エンジニアとして、マネージャーとして成長につながる学びは数多く得られた。「マネジメントをエンジニアリングの応用だと感じられるようになりました。エンジニアリングを外の世界でどれだけ応用できるかという視点まで拡がったのは、たぶん家事や育児での経験が大きいですね」(阿部氏)。

 なにより育休を取得し、家事や育児に積極的に関わると、男性も自信を持てる。「2人目のときは妻が長めに入院したので、2ヶ月くらい長男と2人暮らしでした。でも、1人目のときに経験していたので、家事も育児もなんとか乗り越えられたし、今振り返れば子どもともきちんと向き合う時間だったと思います。男同士の2人暮らしも楽しかったですよ」と阿部氏は笑う。


会社概要

リクルートコミュニケーションズは、リクルートグループを横断する機能会社として、主にWebマーケティングや広告制作を通じた集客・成約ソリューションをクライアント各社に提供しています。また、リクルートの商品・サービスとユーザーとの接点の拡大・拡充を目的とし、広告・宣伝、流通、カスタマーサポートまでを一貫して担当しています。


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