単なる「イヤフォンもどき」ではない
ウェアラブルネックスピーカーを衝動買い
平成のオーディオ世界は、昭和な感覚のインイヤー型Hi-Fiイメージのカナル型イヤフォンとは異なる「耳を塞がないイヤフォン」が人気のようだ。筆者は、このイヤーカフ型イヤフォンが登場した際に真っ先に衝動買いしたが、翌週には手放していた。
筆者はハイパワーアンプと大型Hi-Fiスピーカー全盛の昭和な時代に、音楽に全身で没頭する環境に慣れていたため、ソースも周囲の環境音も同時に聴こえるという「聴きながら聞こえる」「聴きながら話せる」といった「どっちつかずの耳掛けラジオイヤフォン」のようなモノには全く興味が無かったのだ。
そんなわけで、今回衝動買いしたソニーのウェアラブルネックスピーカー「SRS-WS1」の類にも最初は極めて似た印象をもっており、全く興味が無かった。よく考えてみれば「耳の穴に深く入れずに耳殻にぶら下げたイヤフォンもどき」と「肩に載せたスピーカー」は完全に別物なのだが、それに気が付くのが遅すぎた。
今回ウェアラブルスピーカーを買うきっかけとなったのは、たまたま暇だった平日の午前中に出かけた秋葉原のヨドバシカメラで、BOSEとJBL、さらにソニーの3台のウェアラブルスピーカーを同時にゆっくりと比較できたからだった。
結論から言えば、価格は別にして、まず音楽としてのサウンドクオリティと軽量性が気に入ったのはBOSEの製品。最も安価だったJBLはテレビとの無線接続はメインでなさそうなイメージ。結果的に、ソニーのSRS-WS1を選択した。最大の理由は、まず送受信の仕組みが唯一Bluetoothではなかったこと。筆者は基本的に、まだまだBluetoothのパフォーマンスと接続安定性をあまり信用していない。
とはいえ、このSRS-WS1を最も気に入った理由は、肩に載せた際に耳の位置と同じ縦位置取り付けのスピーカーを「調音ダクト」や怪しげな「スリット」を利用して、サウンドを噴き上げるように耳元に送り届けようというマニアックな構造だった。他社製品と比較して、その辺りの変態さ加減は筆者が大好きで元気だったころのソニーを思い起こさせる。
さて、自宅に届いたSRS-WS1はかなり大きなパッケージだった。中には、スペースの大半を占めている本体以外に、接続ケーブルが5本、送信機、充電台、ACアダプターが2台だ。そしてドキュメント類は取説、安全ガイド、充電の注意の3点。
SRS-WS1は、首周りに当たりそうな部分はファブリックでカバーされており、ソフトなイメージだ。そして、外周部分はふつうのABS。電源のオン/オフやボリューム調整ボタンは本体の内側に当たるファブリック部分に、左右に分割されて配置されている。
装着時には使用者の左側にボリューム調整ボタン。右側に電源オン/オフボタンと振動調整ボタンがある。振動調整ボタンは、押すたびに弱/中/強をループする。振動だけではなく低音ブーストの意味もあるので、ソースに合わせて適時調整すればよいだろう。
そして、両スピーカーに取り付けられた「パッシブラジエーター(振動版)」の低音との同期効果で、より効果的なバスドラムのアタック音やベースギターのうねりなどを体感できる。テレビのニュースを聞いたり、音楽を聴いたりといった際にソースに応じて最適な振動環境を即座に変更すれば良い。
すべての調整ボタンはファブリック地の上に、極めて容易に判別できるアイコンで少し飛び出した状態で配置されているので、指先に眼が付いていなくてもスイッチの種類を間違うことはなかった。
採用されているスピーカーは、SRS-WS1のために新たに開発された直径30mmの小型フルレンジスピーカーユニットだ。これが左右各1個ずつステレオで配置される。
小口径スピーカーでは難しい低域音の表現だが、スリット(開口部)と調音ダクト、スリット内部のスロープ形状と低域ブースト、本体の振動調整により低域を肩から感じさせる仕組みを上手く組み合わせて、低域のリアリティーを実現している。特に、小音量時における低域音のブーストと振動の調整はなかなかありがたい仕様だ。
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