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「ライブ配信メディア完全解剖 〜過去と今、そして未来へ〜」 第107回

今更過ぎるサイバーエージェントのライブ配信サイト改善策

2018年09月19日 09時00分更新

文● ノダタケオ(Twitter:@noda) 編集● ちゅーやん

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 株式会社サイバーエージェントが運営するライブ配信プラットフォーム「FRESH LIVE」はTwitterやFacebook、Ameba、Googleのアカウントでログインすることで、誰でも手軽にチャンネルを開設してライブ配信ができるようになりました。(関連サイト

 これは、代表取締役社⻑の藤田晋氏が4月26日に実施した「2018年9月期第2四半期決算説明会」の質疑応答で答えた「リブランドのためにこれから名前をまた少しかえ、機能を強化して再出発する準備をしている」という話の答えのひとつが「チャンネル開設フローを変更」と言えるでしょう。

誰でもチャンネルを開設してライブ配信ができるようにした狙い

 では「誰でも配信できるように」したその狙いはなんだったかのでしょう。結論から言えばその答えは単純で、FRESH LIVEでライブ配信される「コンテンツを増やしたい」からということです。

 正直なところ、昔もいまもFRESH LIVEにはライブ配信をしてくれる配信者が集まり、配信を視聴してくれる視聴者も集まるというサービスの「賑わい」を感じられません。

 視聴者が集まるためには、いまのYouTubeのように見るものを選ぶのが大変なぐらい多種多様なコンテンツが生まれなければなりません。そして、多種多様なコンテンツが生まれるためには、クリエイターにとって利便性のあるプラットフォームでなければならないと、ライブ配信のプラットフォームには配信者も集まることはありません。

 FRESH LIVEがAmebaFRESH!というサービス名称でサービスを開始した2016年1月は、ライブ配信メディアの黎明期をニコニコ生放送やツイキャスと共に創ってきたUstreamが日本からのサービス展開を事実上撤退することがアナウンス(2015年12月)された直後のことでした。

 その当時のFRESH LIVEは、サービス開始当初からUstreamのように大量の視聴者が集まっても安定したライブ配信をすることができる強固でプラットフォームの力をもち、「ポストUstream」として商品やサービスのプロモーションを目的としたライブ配信をするためにUstreamを選んでいた日本の企業たちを引き込める絶好の好機だったはずです。

 もちろん、Ustreamを利用していた主要の企業や個人の配信者に対してアプローチをしたことによって、FRESH LIVEへ移るところもありました。しかし、それらを完全にうまく取り込んでいくことは結果的にできなかったのです。

絶好の好機を逃してしまったチャンネル開設の「申請許可制」

 この理由のひとつに、FRESH LIVEでチャンネルを開設するためのフロー手順にありました。

 Ustreamは誰もが自由にチャンネルを開設してライブ配信をすることができました。その一方、FRESH LIVEはチャンネルを開設したい人が申請し、過去のコンテンツ内容の審査をしたうえでその権限を与える「申請許可制」でした。

 このようなチャンネル開設における「ハードル」があったことで、Ustreamでチャンネルを持っていた企業や個人の配信者たちはFRESH LIVEへ気軽にプラットフォームを乗り換えることができませんでした。

 とはいえ、いまのAbemaTVと同じように、良質なライブ配信コンテンツをFRESH LIVEへ揃えたかった当時のこの方針は理解できます。

 FRESH LIVEは、Ustreamのように企業や個人の配信者たちが自由にチャンネルを開設して配信できるのではなく、申請許可制にすることで良質なコンテンツをコントロールしようとしました。ところが、FRESH LIVEを使ってライブ配信をする人が思うように集まらず、配信の賑わい(多種多様なコンテンツ)も生まれず、さらに視聴の賑わいも生むことへ繋がりませんでした。

 賑わいを出し切れなかった背景を受けたことで、「申請許可制」というハードルを取り除くというチャンネル開設までのフローに変更することへ至ったのではないでしょうか。

存在が薄れていったFRESH LIVEの再出発

 FRESH LIVEがサービスを開始し、「AmebaFRESH!」「AbemaTV FRESH!」「FRESH! by AbemaTV」「FRESH! by CyberAgent(FRESH!)」「FRESH LIVE」へとサービス名称を変えながら模索し続けること約2年8ヵ月。当然ながらライブ配信の全体での事情は大きく変わっています。

 FRESH LIVEが生まれた2016年はFacebookの「Facebook Live」が登場し、LINEの「LINE LIVE」は個人でもライブ配信ができるようになりました。また、ライブ配信の仕組みがさらに注目されたことで、TwitterやYouTubeの「Periscope」「YouTube Live」など、企業や個人の配信者たちが自由にチャンネル開設をしてライブ配信できるサービスへ既に移ってしまい、それらを利用する流れが一般的となってしまいました。

 まさに、FRESH LIVEは「AbemaTVが注目される一方で存在が薄れていった」(2018年9月期第2四半期決算説明会での藤田氏の発言より)のです。

 今回、この「ハードル」が除かれたことによって、商品やサービスのプロモーションを目的としたライブ配信を“これから”始めようとしている企業は、利用するライブ配信のプラットフォームの選択肢として「FRESH LIVE」を気軽に選ぶことが可能となりました。

 と言いつつも、もう少し早く実現されるべきだったように思え、いままでそうならなかったことにとても残念に感じています。すでに不利な状況となってしまっている「FRESH LIVE」がこれからどのようなかたちで再出発をしていくのかはとても気になるところです。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com

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