ネオキャリア「jinjer」とエフアンドエム「オフィスステーション」、中堅企業市場向け施策を強化
デル“ひとり情シス”施策で人事/労務SaaSをラインアップ追加
2018年09月11日 07時00分更新
デルは2018年9月10日、昨年から展開している中堅企業(従業員数100~999名規模)の“ひとり情シス”向け施策において、販売するクラウドサービスのラインアップ拡大を発表した。人事/労務系クラウドサービス(SaaS)であるネオキャリアの「jinjer(ジンジャー)」、エフアンドエムの「オフィスステーション」をラインアップに追加し、デルの中堅企業向けインサイドセールス部隊“クラウドコンシェルジュ”を通じて販売していく。
同日の発表会では、今年8月に行った中堅企業の「働き方改革」に関する動向調査の結果もふまえながら、ひとり情シス支援施策で新たに求められる要件、そして今回販売を開始する労務/人事系クラウドサービスの意義などが、中堅企業向けビジネスを展開するデル 広域営業統括本部から説明された。
クラウドサービス“第2弾”として人事/労務系クラウドサービス追加
デルでは昨年6月、中堅企業のひとり情シス支援施策として、ラクス、カゴヤ・ジャパン、エックスサーバーの国内3社との協業によるクラウドサービス販売を開始した。この第1弾発表では汎用的な業務をターゲットとして、Webホスティングや法人向け電子メールサービス、グループウェア、データバックアップなどのIT系サービスと、ワークフローや経費精算といった業務系サービスがラインアップされていた。
今回はそれに続く第2弾のサービス群として、人事系および労務系の業務を支援し、中堅企業における「働き方改革」を促す2つのクラウドサービスを追加発表した。デルでは、いずれもすでに市場で高い導入実績を持つクラウドサービスであり、長期にわたって実績を上げ続けているコスト優位性、ターゲット顧客層がデルと一致することなどが両サービスの選択理由だとしている。
ネオキャリアのjinjerシリーズは、勤怠管理や労務管理、人事管理といった各領域のデータを単一プラットフォームに一元化することで、これまで個別管理だった各管理業務のオペレーションを改善すると同時に、人事にまつわるデータを可視化/数値化することが特徴。これにより、経営者が自社の現状を把握し、より戦略的な人事を行うためのデータ活用が実現する。無料版を含めるとこれまで5000社以上の利用実績があり、その7~8割がデルの定義する中堅企業層に該当するという。
さらにjinjerでは、AIを活用した従業員のエンゲージメント/モチベーション分析機能も提供している。ネオキャリアの加藤賢氏によると、これは過去数カ月分の勤怠データから従業員のエンゲージメントを分析するもので、たとえば「このアルバイトさんはそろそろ辞めてしまいそうだ」といったアラートを出すこともできるという。jinjer導入を通じて業務を効率化し、空いた時間をそうした従業員の面談などに割り当てられると、加藤氏は説明した。
エフアンドエムのオフィスステーションシリーズは、各種労務手続き業務を「インターネットショッピングをするかのように」簡易化/自動化するサービスだと、同社の渡辺尚人氏は説明した。申請帳票作成においては社会保険や雇用保険、労災保険、労働保険、年末調整など97種類に対応しており、59帳票では電子申請にも対応。こうした機能により、面倒な労務手続き業務が大幅に効率化される。有償版サービスのみで約2500社が利用しており、うち社労士事務所が約800社を占めるなど“プロも認める”サービスとなっている。
渡辺氏は、これから中堅企業においても女性や高齢者の従業員がさらに増えることで、行政に対する給付申請などの手続きも増えることになり、それを効率化していく必要に迫られると指摘する。加えて、2020年度(平成32年度)から資本金1億円以上の企業に対し法人税(e-Tax)や社会保険において電子申請が義務づけられることから、そこへの迅速な対応という意味でもニーズがあるのではないかと語った。
中堅企業における「働き方改革」の実態も調査
発表会では今年8月に行われた、国内中堅企業を対象とする「働き方改革」関連の追跡調査の結果や、それをふまえた今回のサービス拡大の意味合いについても説明された。
デルでは今年2月、中堅企業IT投資動向調査の中で行った「働き方改革」の取り組み状況調査結果(調査対象760社)を発表していた。それによると、何らかの取り組みに着手している中堅企業が81%を占め、その目的は「長時間労働の是正」(79%)、「労働生産性の向上」(51%)などが上位だった。今回の追跡調査(調査対象497社)では、その実態をさらに詳しく問うている。
追跡調査の結果を見ると、他業務を兼務するタイプのひとり情シス(兼務型ひとり情シス)では、兼任業務が忙しいため情シス業務に割り当てられる時間が少なく、情シス業務に割り当てるリソースが「1割」という回答者が30%を占めた。同様に「2割」14%、「3割」11%であり、兼務型ひとり情シス全体の過半数(55%)は、ほかの業務の合間に情シス業務をこなしている実態がわかる。兼務型ひとり情シスの24%は人事、労務、総務、経理などバックオフィス系業務との兼務であり、こうした業務の合理化が必須だとデルでは指摘する。
「働き方改革」について経営層が主導してメッセージ発信しているとする中堅企業は43%で、増加傾向だった。経営層主導で働き方改革を進める企業では46%が関連予算を増額しており、経営層が主導していない企業における関連予算の増額(21%)との大きな差が見られた。またリモートワークの普及に伴って、社外や在宅での業務時間が増加傾向にある企業は15%増加したが、そうした企業ではそのぶん執務時間が増える傾向も見られる。通勤時間とのトレードオフとも考えられるが、たとえば23%の企業では残業や休日出勤が増加傾向にあると回答しており、本来大きな目的としていたはずの「長時間労働の是正」とは逆行している。
デル 広域営業統括本部 執行役員 統括本部長の清水博氏は、こうした状況をふまえたうえで、提供するクラウドサービスを人事/労務領域に拡大すると説明した。
「ひとり情シスは管理系業務との兼務も多く、その業務時間を合理化する必要がある。またひとり情シスがいる企業では、“ひとり経理”や“ひとり総務”などひとりに業務負荷が集中しやすい傾向もあり、可視化できる労務管理が求められる。また『働き方改革』で場所を選ばず働ける環境は整いつつあるが、一方で執務時間をモニタリング、コントロールする環境がないため、その足回りも整備しなければならない。中堅企業層においてはSaaSが普及期に入ったと考えており、必要とされている人事/労務系サービスにもラインアップを拡大する」(清水氏)
清水氏は、デルではすでに国内中堅企業のおよそ6割に当たる3万社を何らかのかたちで顧客としているが、これまで18カ月間の中堅企業/ひとり情シス向け施策を通じて「新規の顧客も増えた」と語り、今回のポートフォリオ拡大で「さらに市場占有率を伸ばしていきたい」と述べた。