ここまで連続3回で「Backlog」の活用法を紹介してきた。今回は、4回目ということで、ヌーラボ Client Marketing/Customer Success 鍋島理人氏に、Backlogについていろいろと聞いてみた。
グローバル6拠点に展開するヌーラボ
コラボレーション型プロジェクト管理ツール「Backlog」は、2006年からスタートした。開発元であるヌーラボは2004年に福岡で創業し、現在は東京や京都、ニューヨーク、アムステルダム、シンガポールの6拠点に展開している。
Backlogが提供する価値は「カジュアルなプロジェクト管理」だ。エンジニアだけでなく、普通のビジネスマンが利用でき、コミュニケーションをとりながら、プロジェクトを円滑に進められる。そのために必要な機能がBacklogには数多く盛り込まれている。
「プロジェクト管理というと、複雑で高度な工程を想像するかもしれません。しかし、誰がいつ何をするのかというタスクの管理、それがちゃんと進んでいるかという進捗の確認、業務を進めていくための資料や書類の参照などは、どの会社でもやっています。ここを簡単にしようというのがBacklogです。私たちの認識では、プロジェクト管理はもう少しカジュアルなイメージで、Backlogは皆さんの負担をできるだけ軽くするためのツールという位置づけです」(鍋島氏)
従来のように、メールとエクセルでタスクを管理しようとすると、受信トレイがメールであふれて必要な要件を探し出すのが難しくなる。スレッドが長くなると、過去のやりとりを確認するだけでも大変だ。途中で関係のない話題に逸れたり、管理しきれるものではない。個別のタスクでもそうなのに、プロジェクト全体となると、さらにブラックボックス化してしまう。
何かのデータをエクセルの表にコピー&ペーストして管理するのも手間がかかる。関わるメンバーが多くなるのと、メンテナンスの負荷は大きくなる。もちろん、手動だとミスも多発することだろう。
Backlogを使えば、タスク管理表を作る要領で担当者と期限日、タスクのジャンルなどを決められたフォーマットに沿って入力するだけでOK。登録すると、担当者に自動で依頼が送られるので、別途メールを送る必要はない。あらかじめ情報のフォーマットが決まっているので、表のメンテナンスや更新の手間もほとんど不要になる。みんなのタスクの状況もすぐにわかり、未着手だったり自分が必要とするタスクに素早くたどり着くことができる。
「メールやエクセルで管理する場合、概要は管理表に書き、具体的なやりとりはメールやチャットで進めるパターンがほとんどだと思います。しかし、この方法だといろいろな所にタスクの状況とやりとりの情報が分散してしまい、行ったり来たりしなければならないので大変です」(鍋島氏)
Backlogならタスクそれ自体にコメントを付けていくことができる。タスクの情報とその処理に必要なコミュニケーションがつねにワンセットになっているのだ。
Backlogはファイル管理機能も備えている。プロジェクト管理には、ドキュメントを管理したり、ファイルを共有する必要がある。もちろん、クラウドストレージサービスは多数存在するが、ビジネスで使うツールが増えるのは好ましくない。情報の分散化にもつながり、異なる場所にあるデータを常に最新の状況に維持するメンテナンスコストも増大する。メンテナンスが甘いと、いざという時に古い情報を使ってトラブルを起こす可能性もある。プロジェクトに必要なファイルはBacklogでまとめて管理した方が、探し回り手間やデータのバージョンを気にする必要がなく、業務効率もアップする。
「GBクラスの大きなファイルの受け渡しも、Backlogの中でできます。会社によっては同じ会社の中でもクラウドストレージの利用が禁止されていたり、ファイルサーバーの設定が異なると特定の部署が使えなかったりします。さらに、物理媒体も禁止されていると、社内だけど一般的な無料のファイル転送サービスを使おうか、ということが日常茶飯事で起きています」(鍋島氏)
Backlogでは、エクスプローラーやファインダーから直接アクセスできるので、普通のファイルのような感覚で活用できる。頻繁に編集する場合、いちいちダウンロードとアップロードをするのは面倒なので、ありがたいところ。ちなみに、この接続にはWebDav機能を利用している。
エンジニアだけでなくITに詳しい人も使いこなせるシンプルUI
GitやSubversionでのソースコード管理やマイルストーン、バーンダウンチャートといった機能を備えているので、エンジニア向けのツールなのかと思いきや、そうではないという。
「エンジニアがターゲットとして重要であることは確かですが、Backlogの特徴が評価され、ほかのいろいろなところから引き合いが増えています。たとえば、エンジニアとITに詳しくない非エンジニアが協力する必要があるデジタルマーケティングだと関わる部署です。BacklogはITに詳しくなくても使えるので、共通の基盤として使っていただける例が増えています。このまま、デジタルトランスフォーメーションの流れに乗っていきたいなと思っています」(鍋島氏)
導入は全社導入というよりも部門導入が多いようだ。まずはプロジェクト単位で使ってみて、そこで便利に感じたメンバーから口コミで広がっていくそう。Backlogでスペースを借りる契約の主体は「組織」と呼ばれるが、会社と1対1で紐付いているわけではない。プロジェクトごとにメールアドレスだけで、ほかの部署の人を呼んだり、外部の取引先を参加させたりできる。いろいろな人が利用する場合はアクセス権限設定が気になるところだが、Backlogはシンプルな設定になっている。
「Backlogではプロジェクトメンバー間でタスクやファイル、予定といったあらゆる情報がフラットに共有されます。細かな権限設定ができない代わりに、ブラックボックスが生まれにくいのです。属人性のない、透明性の高いプロジェクト管理を可能にしているのが特徴です。ある人が休んでも、途中までの仕事の経緯と今どんなタスクを持っていて、いつまでにやらなければいけないかという情報がBacklog上にすべてあります。ほかの人に引き継いでおくから安心してね、ということがやりやすくなるので、実は働き方改革の所にも役に立ちます」(鍋島氏)
コミュニケーションを活発化させる機能を用意している
Backlogは、あえて絵文字機能やスター機能といった、一見プロジェクト管理に関係なさそうなかわいいUIに力を入れている。LINEのスタンプのような感覚で、タスクや文書のコメント欄で絵文字を使えるのだ。ほかの人の書き込みに対して、いいね! という意味でスターを付けてもいい。プロジェクト管理ツールとしてはユニークな機能だが、もちろんここにもこだわりがある。
「文字だけのコミュニケーションだと情報量が不足しまいがちです。ちょっとした言葉がとげのある感じになってしまうなど、ニュアンスが伝わらなくて感情的な行き違いが発生してしまうことがあります。そんな時、絵文字を使うことで微妙なニュアンスを伝えて、柔らかいコミュニケーションができるようになります。活発なコミュニケーションがないと、プロジェクトの問題を見過ごしてしまったり、あるいはそもそも認識のずれがあることに気付かず、プロジェクト失敗の原因になってしまうと思います」(鍋島氏)
企業の中で、お互いを褒めることでモチベーションを向上させるというマネジメント手法があるが、スター機能を使えば同様のことができる。
ヌーラボは「Backlog」以外にも、チャットツール「Typetalk」やビジュアルコラボレーションツール「Cacoo」といったサービスも提供している。一貫してチームでビジネスを進めるための管理や支援をしてくれるプロダクトを提供しているのだ。
ユーザー企業としては、コストが手頃なのも嬉しいところ。料金設定は5つ用意されており、ガントチャートを使えるスタンダードプランが月額9800円、プロジェクト数無制限&100GBストレージが使えるプレミアムプランは月額1万6800円となる。なんと、スタンダードプラン以上はユーザー数課金ではないのだ。つまり、多人数でも存分に利用できるということ。スタンダードプランを100人で使った場合、1人あたりは月額98円になってしまう。そんなBacklogは、現在、無料プランを含めた導入社数は約5万社、有償プランの契約社数は6000社。うち、300社は上場企業という。
「しっかりとした法人サポートを提供しているところが、ほかのサービスと比べた優位性になります。また、Backlogはスタンダードプランからはユーザー数が無制限になっています。人数によって費用が変わらないので、半年間だけ別の会社のメンバーを追加したり、応援でチームが増えたときに増やしたメンバーをプロジェクトが終わったときに削除しても、費用が変わらないという点がメリットです」(鍋島氏)
今後の機能拡充については、チャットワークとの連携を計画しているという。何か変更があれば、チャットワークに通知を出したいというニーズがあるそうだ。ちなみに、ヌーラボが提供しているチャットサービス「Typetalk」には標準で飛ばすことができる。APIも豊富に用意しており、一通りの操作には対応しているとのこと。ノンプラミングで外部サービスとつなげて、さらに便利に活用できる。
これからますますエンジニアと非エンジニアが混在して仕事を進める世界になってくる。そんな時に業務を効率化するためのプロジェクト管理ツールの操作に躓いては本末転倒。シンプルUIのBacklogはその点、誰でも利用できる。柔軟なプロジェクト管理だけでなく、メンバー間のコミュニケーションにも役立つ。今後も、Backlogはチームのコラボレーションを支えていってくれることだろう。
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