Watson導入企業数が1年間で7倍に
ひとつは、日本においてWatsonを導入した企業数が、この1年で7倍に達していることだ。
「早期導入企業では、平均で5つのプロジェクトを展開しており、最初はコールセンターやチャットボットで始まった利用が、リスク評価やトレーニングなど、複数の業務プロセスに拡大している」とする。
同時に、日本におけるWatsonパートナーは2倍規模に拡大し、あらゆる業界で利用されはじめているという。
たとえば、JR東日本では、駅構内の案内や鉄道のルート案内、料金の問い合わせなどに対応する「お問い合わせセンター」において、2018年5月からWatson Analyticsを採用したシステムを本番稼働させており、従来は、年間3000件だった対応件数を、月7万6000件に対応。前年に比べて23倍もの問い合わせに対応しているほか、応対品質に対するポジティブな評価は25倍に増加しているという。
また安川電機では、Watsonで製造データをリアルタイムで収集、分析するとともに、ロボティクス技術を組み合わせることで、予兆保守につなげ、工場の生産性を2倍にすることを目指しているという。
キーナン社長は「AIの導入では、日本が世界をリードすると考えている。日本は、労働人口の減少という課題だけでなく、IoTやロボティクスのリーダーともいえる国であり、製造業やカスタマサービス、介護でもリーダーシップを発揮している。日本におけるAIの取り組みは、企業の競争力強化や、社会貢献につなげることができる」とした。
さらに、IBMの量子コンピューター技術が5Qビットから50Qビットへと進化を遂げており、それを利用できるようにクラウドを通じて提供することに加えて、慶応義塾大学にアジア初の量子ンピュータハブを設置したことについても紹介した。
「量子コンピューターは、パートナーとの連携が重要である。新たな応用分野の研究を行っていく」と語った。
データを活用したAIの進化においても、量子コンピューターが果たす役割は大きといえる。また、日本では、2017年だけで300万件のデータ漏洩があったこと、トレンドマイクロの調査では、GDPRへの対応準備ができてない日本の企業が90%に達しているといった課題を指摘しながら、「日本IBMは、GDPRを遵守することを支援する製品を用意している」と、GDPRへの対応についても、日本の企業を支援していく準備が整っていることを強調した。
そして、IBM Cloudの提供において、18ヵ所のアベイラビリティゾーンを追加することを新たに発表し、そのうちのひとつが日本になるとした。IBMのアベイラビリティゾーンは3つのデータセンターで構成されており、日本でも新たに3つのデータセンターを設けることになる。
新たなアベイラビリティゾーンは、首都圏に設置し、いずれも既存のデータセンターに併設する形になるという。「年内のなるべく早い時期に稼働させたい」(日本IBM IBMクラウド事業本部長の三澤智光取締役専務執行役員)とのこと。
「日本IBMは、業界のイノベーターとなる企業を支援していく姿勢は変わらない。劇的な世界の変化のなかで、企業の変革を確実にサポートしていく役割を担いたい」と、キーナン社長。基幹システムの構築および運用の実績を持ち、データを重視する取り組みにおいて、100年以上の歴史を持つIBMの基本姿勢は、データ中心の時代だからこそ、威力を発揮することになりそうだ。
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