今回もApple WWDC 2018の話題をお届けします。
前回の本連載では、「生活のショートカット」というフレーズを思いついて、iOS 12に用意されるSiri Shortcutsについてご紹介しました。今回のテーマは「目玉」です。
昨年、AppleはWWDC 2017で、iOS 11とともにARKitというAPIを用意しました。拡張現実アプリを作成できる“無料”ライブラリで、これとiPhone 6s以降のデバイスで利用可能なことをあわせて「世界最大のARプラットホーム」になったと紹介しました。
今年iOS 12に用意されたARKit 2では、複数の人が1つの拡張現実空間を共有することができる仕組みを備えました。レゴや積み木のシューティングゲームでは、2人以上の人が同時にプレーするデモを紹介していたのが印象的です。
このデモ、何もないテーブルを前にiPadをかざして盛り上がっている4人の大人の図が現れ、実に奇妙なものです。しかし今までは、1人で空間を使用するだけでしたので、そこに人が加わると、ゲームや活用の幅も広がるというものです。
ただ、空間を共有できること以上に、重要な機能な機能は、ARKit 2では、空間情報の保存と再読み出しが可能になった、という点です。
今までのARKitの機能だけを使っている場合、アプリを立ち上げてその都度水平面・垂直面を認識しなければなりませんでした。しかし今後は、同じ場所であれば、以前認識しておいたり、既に用意されている空間マッピングを読み込むことができるようになります。そのため、アプリ側で処理すべき事が減りバッテリー消費面で有利になるほか、より作り込んだコンテンツを用意することができるようになります。
簡単に言うと、場所に応じた拡張現実体験の配置を、より簡単に用意できるようになりそうだ、とうことです。
ARKit 2を活用した「Memoji」
そのほかにもARKit 2には、Metal 2を活用して物体の表面に反射するものを現実世界から生成・レンダリングする機能や3D物体認識をサポートするなど、数多くの進化を果たしています。3D物体認識では、手元のデバイスを活用した物体のモデリングも実現しました。
これらに加えて、顔追跡の向上があります。60フレームでの3D顔認識に対応し、拡張現実空間でのライティングの色や陰影の反映も可能になっています。基調講演ではAnimojiに「舌」の認識が追加されたことがアナウンスされたのですが、実はさらに、視線の認識をサポートしていました。
Memojiは、自分の顔の絵文字を作ることができる新機能です。筆者はそのデモを体験することができました。デフォルメが強めであることから、割と自分に似た絵文字を作成することができます。しかし、自分の顔文字は、思った以上に自分の表情を反映していることに驚かされました。
そのリアルさが非常に増しているのです。
動物やロボットなどに表情を付けるアニ文字同様、Memojiでも50の顔の筋肉を検出してそれらをブレンドして表情に反映させます。これに顔の向きと傾き、舌、視線が加わること、60フレームでの認識を反映していることから、自分以上に自分らしい表情を見せてくれるようになりました。
個人的には、Animojiにあまりピンと来ていなかったのですが、Memojiは「本命」だと思いました。目玉の動きがこれほどまでに重要なのかという発見があったわけです。
もちろん、iPhone Xだけで終わるはずがない
iBookという名前のハードが復活するかも……?
iOS 11でのAnimoji登場時は、iMessageだけでの利用でしたが、iOS 12ではさらにMemojiが追加され、iMessageに加えてFaceTimeに動物や自分の絵文字の絵文字をリアルタイム合成できるようになりました。しかし現段階では引き続きiPhone Xでしか、これらの機能が利用できません。iPhone X以外には、3D顔認識に対応するTrueDepthカメラが搭載されていないからです。
しかしiMessageやFaceTime自体は、iPadやMac、Apple Watchでサポートします。当然、iPhone X以外のデバイスでも、Memojiを使えるようにしたいですよね。今年なのか、来年なのか時期は分かりませんが、iPad ProやMacBook Pro、iMacなどにTrueDepthカメラが搭載されるのが自然な流れです。
もちろんデバイスとして見ると、指紋認証よりも高いセキュリティを確保できる、顔認証に対応するというトピックが大きいのですが、MemojiのメッセージをiPadから送ったり、アバターでのFaceTime参加を実現するといったAppleプラットホームのコミュニケーションの楽しさを演出するには不可欠でしょう。
ちょっと話は逸れますが、iOS 12で電子書籍プラットホームのiBooksが、Apple Booksに名称を変えました。Apple Musicがあること、またTexutureという雑誌定額購読プラットホームを買収しており、これと統合することから、確かに「Apple Books」という名称は最適なのです。
ただ同時に「iBooks」という名前が空いたなあ、とも思ったのです。
iBookはかつて、iMacのノートブック型として半透明の取っ手がついたノートパソコンとして存在し、その後真っ白なモデルに変わってIntel製CPUの採用直前まで存在していました。その後iPad向けの電子書籍のアプリと電子書店として登場し、再び名前を消しました。
ということは、再びハード製品で「iBook」という名前が使えるかもしれないと思ったのです。たとえば、来年の3月、キーボード一体型のiOSが動作するARMデバイスとして、iBookが登場するなら、昨今の噂の答えとしては最適なのかもしれません。
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