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含蓄だらけのMANABIYAのパネルディスカッションを詳細レポート

クックパッド、VOYAGE、メルカリが語るエンジニアにとって理想の制度

2018年05月30日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●中井勘介

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モチベーションは? 採用や定着の決め手は?

 エンジニアの疑問解決を目的とするMANABIYAのイベントということで、最後の30分は質疑応答大会。会場からも質問が相次ぐ。

モデレーターを務めたアスキーの大谷イビサ

 エンジニア不足という昨今は、採用に効く施策に関心も高い。会場からの「昇級以外にモチベーションを上げる方策はありますか?」という質問に関しては、基本的には仕事のやりがいしかないという答えが返ってくる。

「いつでも起業もできる、好きな会社に行けるみたいな優秀な人を、僕らは採用していかなければならない。だとすると、その人が起業するより、別の会社に行くより、僕らの会社で仕事がした方がその人のためになるという状況を作る必要がある」(成田氏)

「経営者たちは合理的。エンジニアの生産性が上がり、世の中を変えられる可能性が高いと考えれば、働きやすい環境を作ると思う。その方がやはり投資対効果が高いから」(小賀氏)

「HRで『mercan(メルカン)』というオウンドメディアを立ち上げ、プロダクトの情報だけではなく、社内の雰囲気や人にフォーカスする情報提供をするようになったら、採用した人はけっこう読んでくれていた」(梶原氏)

 採用だけではなく、定着にも悩みが多いようだ。定着に関する施策を聞くと、3人からはミッションの発信、新規事業や技術的チャレンジなどの施策が返ってきた。

「会社やミッションを真摯に説明するしかないと思う。料理とテクノロジーに関わる領域だったら、やはりクックパッドは選択肢に上がると思うし、そこにモチベーションがある人たちが集まっている」(成田氏)

「エンジニアってやっぱり飽きっぽい。カオスな状態を整え、トラブルがなくなると辞めてしまう人だってけっこういる(笑)。だから、ある程度炎上している状態が残しておくのは、組織として健全だと思う。あとは新しい事業に少しずつ足を突っ込んでもらって、飽きないようにしている。失敗はウェルカムだけど、致命傷にならない程度に失敗できる環境を考えている」(小賀氏)

「経営からバリューをどんどん伝えていくこと、新しい事業領域を拡げていくことは僕たちもやっているけど、もう1つ技術的なチャレンジをいかに創出していくかを考えている。『メルカリはPHP』みたいに決めていくのではなく、新しい技術にアグレッシブに挑戦していける体制をCTOと相談しながら進めている」(梶原氏)

 続いて制度の見直し。これに関しては事業フェーズによって、随時アップデートしていくことが重要だという。成田氏は従来、オフィスから1.5km範囲内だった家賃補助の範囲を500m拡げたという制度アップデートについて語った。実は成田氏のこの話が個人的には一番お気に入りだ。

「もともとオフィスから1.5km範囲であれば家賃補助が出るという制度だったけど、白金台から恵比寿にオフィスを移して、そのまま運用していたら、スーパーの数とか、住める家のレベルが全然違うことがわかった。だから、予算と満足度を天秤にかけて2km範囲にチューニングした。メンバーに聞いたら、このアップデートは満足度も高かった」(成田氏)

 成田氏曰く、事業やビジネスのフェーズは、突然変わるのではなく、じわじわと変化しているものだという。気がついたら、とりつかない事態に陥っていることもあるわけで、可能な限りぼやのうちに収めたい。そうするためには、メンバーの声につねに耳を傾ける必要があるだろう。その点、クックパッドではエンジニアのやりたいことを吸い上げるテックリードの仕組みを作り、成田氏自身はメンバーとのコミュニケーションに多くの時間を割いている。

「この時代に『呑みニケーション』かと思うかもしれないけど、僕は社員とめちゃくちゃ呑みに行ってます。年に1回呑みに行くだけじゃ不満なんて出てこない。しょっちゅう呑みに行って、仲良くなって、2軒目くらいにボロボロ出てくるんですよ(笑)」

総論:エンジニアにとってよい制度とは?

 そして、パネルの最後はモデレーターの大谷は、「エンジニアにとっていい制度ってなんだろう?」というタイトルの回収に入る。

「エンジニアって真面目なので、ギチギチの制度を作ってしまうと、息苦しく感じてしまう。だから僕が意識しているのは、ルールを担当者に運用させることと、みんなの声を反映した仕組み、プロセスの透明化。エンジニアリングできる制度が、エンジニアにとっていい制度だと思う」(小賀氏)

「やっぱりエンジニアの邪魔しないこと。挑戦したい人の足を引っ張る要因を組織からいかに取り去るか、そして挑戦したい人の背中を押してあげるのが、少なくとも今の自分たちのフェーズとってはいい制度だと思う」(成田氏)

「メルカリはよく『性善説』という言葉を使いますが、ルールはなければないほど働きやすさにつながると思っている。性善説に基づいた働き方を進め、そういう文化を社内に作っていくのが、重要だと考えている」(梶原氏)

 制度のコンセプトや社内文化の醸成など、3社3様の哲学が見え隠れした興味深いパネルディスカッション。多くの企業がテクノロジーに正面から向きあう時代になり、先達となる彼らの一言一言は、正解のない組織運営においてさまざまな示唆を与えてくれる内容だったと言えるだろう。

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