4月1日付けでKDDIの代表取締役社長に就任した髙橋 誠氏が、メディア向けに社長就任会見を開催した。
通信とライフスタイルの融合で事業と利益の拡大を目指す
髙橋氏は、フィーチャーフォン時代に端末やサービスの発表会でしばしば登壇しており、メディアにもおなじみの人物。前社長の田中孝司氏の就任後は、渋谷ヒカリエのオフィスを中心に新規事業の統括やベンチャー企業支援などを主に担当してきた。
KDDIは前社長時代からの中期経営目標として、「ライフデザイン企業への変革」を掲げている。新規事業に積極的に取り組んできた新社長のもとで、通信企業からライフスタイル企業に変化が進むのではないかという見方が社内外にあることを紹介。実際にはシフトではなく、「通信とライフデザインの融合」であることを社員にも語りかけているという。
そのライフデザインについては、ユーザーの生活を楽しくすること、体験価値の向上にあると説明する。そして中心にあるのはKDDIの場合は、やはり「通信」。通信と通信によって繋がるユーザーを中心に置き、金融、エンタメ、教育、エネルギー、EC、ヘルスケアなど、その周辺にある事業へと同心円状に拡大していくとともに、利益も同様に広げていきたいとした。同時にこれまでのKDDI、および通信会社はどうしてもプロダクトアウトでサービスを提供しがちだったが、これをユーザー視点で提案していきたいと語る。
ここで少し昔話になり、3Gが導入された時代も「高速通信なのだから動画だろう」と通信会社側は考えたが、実際には主にメールが受け入れられたように、5G時代も通信企業が想定しているのとは違うサービスによって普及が進む可能性があり、実際のところ「わからない」と言う。そのために必要なのがパートナーとの協業。同時にKDDIでは、「“ワクワクを提案し続ける会社”へ」というテーマで取り組んでいきたいとした。
ワクワクの具体的な内容としては、すでに展開されているECサイト「Wowma!」、「au WALLET」を中心としたキャッシュレス生活、スポーツマッチングサービスへの参画、AR/VRなどが紹介されたが、そうした新しいサービスの開発拠点として「KDDI DIGITAL GATE」を今夏に大手町に開設する。同社傘下のソラコムを始め、データ分析を得意とする企業が集まり、新時代のサービスに繋げていこうというものだ。
それと同時に総額200億円の新ファンド「KDDI Open Innovation Fund 3号」も設立する。このファンドについては質疑応答でも、どんな狙いがあるかについて問われたが、大企業がベンチャーに投資する際にありがちな「そのベンチャーってウチの会社とどういうシナジーがあるのか?」という議論はしないという。というのも、小さなベンチャーが大きな会社にシナジーを返してもそれは小さいメリットであって、まずは大きくなってもらうのが重要。そのためにKDDIのアセットをフルに活用してもらうようにしているとした。