プリンターの目的は20年前と変わらないが……
Hopkins氏が現在フォーカスを当てているのは以下の3点だ。
・プリンティングの将来を的確に見据えること
・アナログからデジタルへの移行を踏まえ、新しい用途を広げること
・平面を超えた印刷、つまり3Dプリントや3Dオブジェクトへの印刷
Hopkins 「身の回りを見渡せば、あらゆるものが印刷によってできているのが分かります。絨毯だって、壁紙だってプリントの結果です。つまりそれだけの可能性があるということ。世界が大きく変わっていけば、その分だけプリンターの新しい用途が生まれてくるでしょう。新しい用途を探していくのがわれわれの仕事です」
HPは1980年代半ば、サーマル方式のインクジェットプリンターを開発し、いち早く市場投入した。オフィス向けではレーザープリンターも手掛けるが、個人、SMB、大企業、そして業務印刷などすべての領域を1社でカバーできる数少ない企業のひとつと言える。さらに昨年、韓国サムスン電子のプリンター事業を買収することで最終合意。A3クラスのレーザー複合機の事業を強化した。近年は、10年ほど前にデジタル輪転機向けに開発した「PageWideテクノロジー」を、オフィス向けインクジェットプリンターに展開中だ。
PageWideテクノロジーは、紙と同じ幅の印刷ヘッドを使うことで、一般的なインクジェットプリンターにはない高速かつ高品質な印刷が可能な点が特徴となる。
Hopkins 「HPはオフィスにおけるインクジェット機を補完的な技術と位置付けています。(プリンターの進化に対する認識は希薄かもしれないが)Better、Cheaper、Fasterの観点で改善を進めてきました。例えば20年前、オフィスに置かれたインクジェットプリンターの印刷速度は毎分4枚。1台約1000ドルの価格だった。しかし現在では59ドルで買え、毎分16枚の印刷ができます。PageWideであれば300ドルで75ページ。技術の成熟は携帯電話と似たところがあります。手元にあるスマホに求める機能は5年前と今で大きな差はないでしょうが、品質・堅牢性・構造・セキュリティ・コストなどあらゆる面でスマホは進化しています。これと同じことがプリンターにも言えるのです」
PageWideテクノロジーの強みは、ハイエンドの画質。特にA3以上の印刷で本領を発揮する。業務用途ではさらに大きな、30インチ幅(約76.2mm)や40インチ幅(約1.02m)、さらには120インチ幅(約3m)の用紙を扱える。A4・A3クラスのPageWideプリンターは比較的安価に導入でき、レーザープリンターの特徴であるギラつきや、表現の硬さ、あるいは不均一なコート処理などを嫌う大企業を中心とした幅広い層に受け入れられているそうだ。
またHPは「Rigid Latex」と呼ばれる新しい印刷技術についても最近海外発表したばかりだ。Latexは水性インクを使用し、紙だけでなく塩化ビニールなど様々な素材にプリントできる点が特徴となる。無臭で安全な環境性能がうりで、壁紙やロールスクリーンなどインテリア用途でも活用されている。従来のLatexシリーズは、ロール素材だけに対応していたが、厚みのある板素材へ直接プリントできる機種が発表された。プラスチック素材や木製ボード、アルミニウム、ガラスなどにも出力でき、前後の工程が省略できるため、応用範囲が広がる。またLatexシリーズ初のホワイトインクも用意される。対応製品である「Latex R」シリーズの販売開始は2018年の第3四半期を予定している。