昨年末、とある繋がりから「来年、一緒にエコレースに出ませんか?」というお誘いがあった。エコレースといえば2013年に電アスレース部として出場し、クラス優勝を成し遂げたという実績がある(関連記事)。ふたつ返事で「出ましょう!」と返事をしたのだった。
年が明けて1月20日。気がつけばもう開催日である。この大会の正式名称は「TMSC富士6時間耐久エコノミーラン2018」で、前回出た「エコカーカップ 2013」とは主催もレギュレーションも違うのだが、レーシングカーで全開走行するレースではないということは一緒。ガソリンをできるだけ使わず、既定タイム「3分10秒」以下で周回してはいけないのだ。会場は同じ富士スピードウェイの国際レーシングコースを使う。
6時間耐久レースなので、朝7時にはサーキットにイン。この日までLINEのグループ以外でメンバーと会ったこともなければ、そもそもクルマは何なのかも知らなかったため、チームメンバーと挨拶を交わし、クルマもチェック。チーム名は「GCRT with ミッドタウン前整骨院」でマシンはトヨタ プリウス(2代目)。クラスは1500ccまでのハイブリッド車ということで、クラス1にエントリーされた。
GCRTはGarden Clinic Racing Teamの略で、今回ドライバーとして走った美容外科医師の大庭さんが中心となって結成されたレーシングチーム。GTドライバーとしても活躍する飯田章選手や関口雄飛選手も所属しているが、今回は参加していない(関口選手は別チームでエントリー)。そんなチームの一員として走るからには下手な真似はできない。開店休業状態の電アスレース部ではあるが「足を引っ張らない、迷惑をかけない」という部のモットーは最低限守っていきたいところ。
ドライバーブリーフィングも終わり、10時からレーススタート。なお、グリッドは熾烈なくじ引きの結果、10番手に決定。ゼッケンも10番だったのでわかりやすいし、60台以上のエントリーを考えるとかなりの良ポジションゲットだ。レギュレーションでは既定タイム以外に6回以上のピットイン&ドライバー交代が義務付けられている。今回GCRTのドライバーは8人。7回ピットインが必要になるので、勝負をかけるなら不利ではある。だが「楽しく走りましょう~」と順位はとくに気にしてなかった。そう、レースが始まる前までは……。
走行順は一番手が藤田さんでその後は鈴木さん→筆者→高田さん→吉村さん→浅井さん→田中さん→大庭さんに決定。藤田さんは過去にポルシェカレラカップに出場していたこともあり、混乱が起きやすい1stスティントを任されたのである。
ピットでモシャモシャとお菓子を食べながら、ピクニック気分でタイミングモニターを見ているチームの面々。すると、現場(サーキット)で異変が起きていた。藤田さんが3'10.266というベストタイム(限りなく3'10.000に近い)を記録し、みるみるうちに順位を上げており、なんと3位まで上がり、一時期は1位を走っていた。
コ・ドライバーとして助手席に乗り込んでいたメカニックの山口さんと、LINEを使ってタイムや状況のやりとりをしていく中で、「あれ、もしかしてイケるんじゃねコレ?」という野心が芽生えてきた。第2ドライバーの鈴木さんに交代すると、優勝までのストラテジーを本格的に考え始めていた。
しかし、ここではやくもペナルティーをくらってしまった。ピット前後のインラップとアウトラップでも3'10.000を切ってはいけなかったのだが、うっかり爆速でピットインしてしまったのだ。なお、ペナルティーは1回につき1周減。これが最後のリザルトで反映されるのだが、ほかのチームもタイムだったりピットイン時のホワイトラインカットだったりで、結構なペナルティーが出ていた。
そして筆者の出番がやってきた。5年ぶりのサーキット走行だったので、鈴木さんの走行中にリアシートに乗ってラインなどを確認させてもらっていた。鈴木さんは4位で帰ってきたので、なるべく順位を落とさないようにしないと……。
さすがにSUPER GTなどで何年も富士スピードウェイに来ているし、グランツーリスモでもシミュレーションしていたので割とスムーズに走れているかな、と思いきや助手席の山口さんから「燃費が1km/l落ちてるので、アクセルワークを気をつけてください」と指示が! このレースはタイムも重要だが燃費も重要でガソリンを使いすぎると1リッターあたり2周~4周が減算されてしまうのだ。そういえば、ストレートやコーナーの立ち上がりではアクセルべた踏みにしていた。どれだけアクセルをパーシャルで維持できるか、我慢のレースともいえる。
実際、走ってみると3'10.000に近いタイムで走るのは難しい。できるだけ速度を落とさずに周囲のクルマをパスし、最短のラインを走らないといけない。もちろんレースなので、バトルになることもあるが、ここで頑張りすぎてしまうと燃料もタイヤも使ってしまう。さらにドライバーのレベルもバラバラなので、無理は禁物だ。また、走行ペースを考えると富士スピードウェイでブレーキングが必要になるのは1コーナーと、後半のダンロップコーナーのあたりだけ。あとはエンブレやアクセルのオンオフで曲れる。特に後半は上りなので、できるだけ前半で回生ブレーキを使って充電し、後半は電気のアシストを使って走っていくのが理想。そう意識はしていたのだが、実践できたかと言われると微妙。
なんとかピットに戻りドライバー交代をした。これにて筆者の出番は終了。順位は4位だったので、なんとか落とさずに帰ってこれたし、平均3分13秒くらいで周回できていたようなので、久々のサーキット走行にしては上出来だったかもしれない。
レースも半分(3時間)を過ぎたあたりから順位が入り乱れてくるように。GCRTはいつの間にか20番手以下まで落ちており、ペナルティーも数回くらってしまっていた。3'10.000に近づけようとするあまり、うっかり3'09などを出してしまったりと難しい。それでもレース5時間目を迎える頃には総合で10位以内、クラス順位でも5位以内まで上がってきていた。
ドライバー交代が1回多い7回となってしまったが、トリを務めるチーム代表の大庭さんにステアリングを託す。大庭さん自身もレースに出ていることもあり、アウトラップで落ちた順位を徐々に上げていき、ファイナルラップではクラス3位になりチェッカーを受けたのだった。
普通ならこれで「表彰台だー!」と騒げるのだが、これはエコラン。ペナルティーの精算次第で上下する。発表された結果は
クラス17位、総合25位
だった……。ペナルティーは5回と比較的少ないほうだったのだが、上位3台はノーペナルティーだった。周回数は108周とピット回数が多かったわりには検討したほう(クラス1位は109周、総合1位は110周)ではなかろうか。
こうして「TMSC富士6時間耐久エコノミーラン2018」は幕を閉じた。今回の健闘によりチームはすでに「来年は2台体制で出るか!」と大盛り上がりである。来年はトヨタ アクアかラ・フェラーリか……。
次回のスピーディー末岡の活躍にご期待ください。