2018年1月25日、インターネットイニシアティブ(IIJ)はデジタル通貨の取引・決済を行なう新会社「ディーカレット」を出資会社とともに設立。キャッシュレス社会を支えるプラットフォームを提供するFinTech事業に本格参入することを発表した。
日本のキャッシュレス化を推進する新会社のサービス
ディーカレットはデジタル通貨の取引を担うプラットフォームサービスを提供する新会社。持分比率35%のIIJが筆頭株主となり、野村ホールディングス、伊藤忠商事、東日本旅客鉄道、QTnet、ビックカメラ、ケイ・オプティコム、三井住友海上火災保険、SOMPOホールディングス、三井住友銀行、第一生命保険、三井不動産、大和証券グループ本社、三菱東京UFJ銀行、東京海上日動火災保険、伊藤忠テクノソリューションズ、日本生命保険相互会社、電通などが出資企業として名を連ねる(ヤマトホールディングスは出資検討中)。
ディーカレットが目指すのは、デジタル通貨によるキャッシュレス化。デジタル通貨の一般化により、個人端末にデジタル通貨が入金されるようになれば、現金を介さない取引が可能になる。当然、店舗支払いの簡素化や決済記録の集約なども可能になるほか、法人間で行なわれる煩雑な決済処理もデジタル化。取引の自動記録や業務の効率化により、取引と決済が一体化した「スマートコントラクト」を実現するという。発表会において事業概要を説明したディーカレット代表取締役社長の時田一広氏は、「デジタル通貨によって、日本のキャッシュレス化に寄与する」とアピールする。
具体的には、ディーカレットはビットコインをはじめとする仮想通貨や法定通貨などのデジタル通貨をリアルタイムに交換できる取引所機能、通貨の資産保管、暗号通貨の鍵管理、送金受け取り、本人確認・認証、履歴管理など口座機能などを提供する。また、デジタル通貨を発行する銀行や電子マネー、モバイルウォレット、決済サービスなどのサービスともAPI経由で連携する。
冒頭、挨拶に立ったIIJ代表取締役会長 CEOの鈴木幸一氏は、「インターネットの面白いところは、世の中の仕組みを変えられること」と第一声。過去、楽天証券やマネックス証券などの金融プラットフォームを開発してきた実績をアピールするとともに、「中国ではコーヒーを一杯飲むのに、もはやキャッシュは使えない。通貨や決済の仮想化は避けられない流れ。われわれがFinTechを現実のものにする」と意気込みを語った。
デジタル通貨取引のスタンダードを作る
サービスとしては、2018年度の下期からウォレットを用いたデジタル通貨の交換サービス、決済サービスなどを開始。まずは通貨取引、次に決済の市場を拡げ、2022年には500万人超の利用者規模を目指す。同時にブロックチェーンを用いた新決済プラットフォームの開発を進め、2022年にリリースする予定となっている。
新会社設立の背景は、ビットコインをはじめとする仮想通貨の台頭や法定通貨のデジタル化などが進んだこと、そして改ざん不能な情報を記録するブロックチェーンのような基盤技術が確立してきたことが挙げられる。また、海外に比べて、現金比率が高く中国や韓国に比べて、キャッシュレス決済の比率が低いという現状もある。
これに対し、IIJはFXやネット銀行、証券会社向けの高速通貨取引のネットワークや、クラウドやセキュリティなどのインターネット技術、金融機関と同等のサービスレベル、不正防止を担保するセキュリティなど、さまざまな技術的な強みを元に、信頼性の高いデジタル通貨の金融サービスを開発。「デジタル通貨取引のスタンダード」となるプラットフォームを目指すという。