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CES 2018レポート 第12回

「Tangle Lake」に「Loihi」、データの洪水を見据えた準備

Intel、基調講演で量子コンピューターや脳型コンピューター、CPUの脆弱性対策に言及

2018年01月10日 16時00分更新

文● 中山 智 編集●ジサトライッペイ

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Intel基調講演のテーマは「データ」。

 米Intelは1月8日(現地時間)、アメリカのラスベガスで行なわれるCES 2018のオープニングイベントとして基調講演を開催し、CEOのブライアン・クルザニッチ氏が登壇。「データ」をテーマとして、同社の最新の取り組みなどについてプレゼンした。

基調講演のオープニングアクトはミュージシャンやダンサーが登場し、データと連係した演奏やダンスを披露。

基調講演に登壇したインテルCEOのブライアン・クルザニッチ氏。

 クルザニッチ氏は冒頭で、現在話題になっている「メルトダウン」と「スペクター」、2つのプロセッサーの脆弱性問題について言及した。「現時点ではこの問題が悪用され顧客データが漏洩したという情報はない」とし、さらに「1週間以内に過去5年間にリリースしたCPUの90%をカバーできるアップデートを提供。残りも今月中に解決できる」とのこと。「顧客のデータを守ることがインテルの一番の使命」と強く語り、問題の影響を最小限に留める努力をしているようだ。

脆弱性問題についての各社の声明。

データはキープされると安全性をアピール。

 次にクルザニッチ氏は「データはテクノロジー革命の源」とデータの重要性を説明。現在は人が活動することの大部分がデータ化されており、2020年には人は1人あたり1日平均1.5GBのデータが生成されるという。また、自動運転車では1台あたり1日に4TB、スマート化された工場は1日に1PB(ペタバイト)ものデータが生まれ、データの洪水が発生するだろうと主張した。

自動車の自動運転では1日に4TBのデータが生成される。

飛行機の自動運転では1日に40TBのデータとなる。

 19世紀に内燃機関が産業革命を牽引したように、今世紀ではこの生成されるデータがその役割を担い、さらに1世紀に1から2回しか発生しないような革命的な変化をもたらすとクルザニッチ氏は説明している。

 特にスポーツやエンターテイメントでその変化は大きく現われるとし、その一例として挙げたのが、VR技術を使ったスポーツ観戦。Intelは360度の3D映像が撮影可能な「Intel True VR」を開発しており、スポーツ中継に導入している。例えばアメリカンフットボールでは、このカメラを会場に多数導入することで、視聴者は実際に会場にいるような気分で観戦できる。

360度の撮影が可能なIntel True VRのカメラ。

2Dの「ピクセル」(Pixel)ではなく、3Dデータは「ボクセル」(Voxel)として処理。

 また、奥行きを撮影する3Dカメラを活用するため、データの活用方法をこれまでの「ピクセル」(Pixel)ではなく「ボクセル」(Voxel)として処理することがポイント。撮影データを立体として処理することで視点の変更なども可能になり、選手の目線でリプレイを観るといったことも可能になる。

数多くのカメラで撮影し、試合内容すべてをキャプチャーする。

VR用のヘッドセットでスポーツ観戦。

ゲストとして元NFLの選手で現在解説者として活躍するトニー・ロモ氏が登場し、スポーツ観戦が大きく変わることに興奮していた。

 なお、Intelはオリンピックの公式スポンサーになっており、2月に開催される韓国・平昌冬季オリンピックでこの「Intel True VR」を使ったスポーツ中継を行なうと発表。中継はアメリカ(NBC)以外にも世界各国に専用アプリを使って配信するとのこと。

平昌冬季オリンピックでは30以上イベントをIntel True VRで中継予定。

 また、同社はハリウッドの映画制作会社などに向けた「Intel Studios」を2017年秋にオープンした。100台のカメラを使った3Dモーションキャプチャーが行なえるスタジオで、1回の撮影だけで視点を変えた動画の撮影が可能。映画制作者のイマジネーションをさらに拡大させるスタジオとしてハリウッドから注目されている。

映画制作会社に向けたモーションキャプチャースタジオの「Intel Studios」。

通常のカメラでは一定の構図でしか撮れない。

Intel Studiosでのキャプチャーなら、1回の撮影であらゆる視点からの映像が作れる。

動画内に登場した馬の視点でも問題なし。

 このように動画の撮影やストリーミングだけを見ても、3Dですべてをキャプチャーする方式が一般的になりつつあり、その一方で処理するデータ量は膨大になる。このデータを処理するためにはよりパワフルな処理能力が必要なのは自明だ。そこで、クルザニッチ氏はこのデータ処理の問題を解決するための方法として、量子コンピューター向けの「Tangle Lake」と、脳型コンピューター向けの「Loihi」と2つのチップを紹介した。

Intelは量子コンピューターにも取り組んでいる。

量子コンピューター用の「Tangle Lake」。

 現在のAIはマシンラーニングやディープラーニングなど、膨大な学習用のデータを元に処理を行なっているが、Loihiはそれとは異なるアプローチで少ないデータで処理が行なわれる。これらのチップセットの開発が進めば、データ量が膨大であっても効率良く処理ができるという。

膨大な学習データを必要としない脳型コンピューターに注目。

脳型コンピューター向けの「Loihi」。

 クルザニッチ氏はそのほかIntelが取り組んでいるソリューションとして、2つの自動運転に関する会社を紹介。1つはインテルが昨年買収したイスラエルの自動車向けの自動運転ソリューションを提供しているの「Mobileye」で、同社のシステムを搭載した自動運転の自動車がステージを走行した。

Mobileyeを搭載する自動運転車のデモ運転を披露。

自動運転の技術について説明が行なわれた。

 もう1つはドイツのドローンメーカー「Volocopter」。人が乗り込めるサイズのドローンで空中を飛行するタクシーを目指して開発中だが、これにはIntelの「Flight Control Technology」が採用されているとのこと。

人が乗って飛行できるVolocopterもステージで飛行デモを行なった。

 プレゼンの最後には、インテルが開発した小型ドローン「Intel Shooting Star」を100台同時に会場内で飛行させた。これは屋内でのドローン同時飛行としては世界最多でギネス記録になる。

手のひらサイズのドローン「Intel Shooting Star」。

基調講演の最後は100台の「Intel Shooting Star」が飛行。

 Coreシリーズなどコンシューマー向けのチップセットについてのプレゼンは皆無だったが、Intelが今後注力する分野や現在取り組んでいる技術がわかる基調講演となった。

 

■関連サイト
Intel CES 2018 Intel Keynote

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