iPhone Xでの仕様変更はDynamic Type準拠を促す警告か
iOSは文字情報の表示サイズに際して、スクリーンサイズに依存しない方針を貫いている。Plusサイズだろうが、Xサイズだろうが、設定されたDynamic Type機能で設定した文字サイズがそのまま反映される。
だから、同じ文字サイズを指定した場合、スクリーンサイズに応じて変わるのは文字の量であって、文字のサイズではない。大きいiPhoneは文字が大きくて見やすいというようにはならないのだ。
それでもDynamic Type機能に忠実な標準アプリ、たとえば「設定」や「メール」、「カレンダー」などは、指定した好みの文字サイズでちゃんと表示される。小さい文字がいい人にとっても、大きい文字がいい人にとっても有用な機能だ。
ところが、サードパーティー製アプリはそうはいかない。TwitterにしてもFacebookにしても嫌がらせに近い文字サイズだ。文字と写真が主役のコンテンツなのに、写真はともかく文字がまるで軽視されている。TwitterはDynamic Typeに準拠してはいるが、文字サイズの指定範囲が狭すぎ、iOS側での指定とは異なる点で余計にたちが悪い。
かろうじて、iPhone 8までは設定の「画面表示と明るさ」に「拡大表示」という機能が用意されていて、それを指定することで、多少大きな文字での表示ができた。それでもまだ小さいのだが設定できないよりはマシだ
ところが、iPhone Xでは、この機能が削除されてしまった。だから表示時の最大文字サイズは無印iPhoneやPlusよりも小さい。これを知らないで期待して乗り換えるときっと後悔する。
OSベンダーとして、これはこれで正しい。スクリーンにおけるユーザー体験の統一という点で「拡大表示」をユーザーに選択させるのは邪道だという考え方だ。これはスケーリングが自在なAndroidと一線を画する方針で、ハードウェアが一社からしか提供されず限定的であることの強みでもある。
Dynamic Typeは2013年にiOS7で追加された機能だ。登場からもう4年もたつのに、いまなお、その恩恵をユーザーに与えられないでいることにシビレをきらしたのかもしれない。
つまり、これは、サードパーティー製アプリもDynamic Typeに正しく準拠しろという警告でもある。そのうちアプリ側でのフォントサイズ指定を無視して強制的にDynamic Typeを適用するくらいのことをやりかねない。そういうことをシレッとやってしまう点でiPhone Xは正統派逸脱に果敢にチャレンジしていると言えるし、そここそを期待したい。変われないiPhoneを変えるためのテストベッドだ。
スクリーンサイズが縦に拡張されて増えた表示エリアを、より多くの情報の「量」のために使うか、情報の「量」はそのままに文字のサイズを大きくするのか。それを選ぶのはユーザーでありたい。
iPhone Xはそのことの是非をサードパーティーアプリのベンダーに問いかけている。そんな無茶ができるのがXというプラットフォームであり、Xが未知数を連想させる証でもある。そういう姿勢は悪くない。
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