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秋のヘッドフォン祭 2017 第13回

FOCALの「CLEAR」は、ボビンをなくして軽量に動く新ドライバー搭載

2017年11月04日 22時40分更新

文● 編集●ASCII

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 フランスのFOCALは11月3日、秋のヘッドフォン祭 2017の会場で、開放型ヘッドフォンの新製品「CLEAR」(クリアー)を公開した。2016年の「UTOPIA」(ユートピア:税抜き58万円)、「ELEAR」(イリア:税抜17万5000円)に続く第3弾。価格は25万円(税抜)で、12月から販売する。

 FOCALは自社製品を5つのカテゴリーに分類し、代理店など販売チャネルも分けている。CLEARは家庭でじっくりと聴くための“HOME”に属し、スピーカーなどと同様に国内代理店をラックスマンが担当する。なおモバイル向け製品は“NEW MEDIA”としてエミライが代理店となる。発表会も別々に開催した

CLEARは大型ではあるが、軽快感も感じさせるデザイン

ヘッドフォン機構のデザインスケッチ

既存機種とデザインで差別化した

 UTOPIAやELEARとは同サイズ。ドライバーユニットのバスケット部の直径も50mmと共通にしている。ヘッドフォンでも部屋でスピーカーを聞くのと同じ体験が得られるようにするのがコンセプトだ。快適かつフィットする機構を重視。頭部形状に関わらず、真横から同じ角度で音が聴けるように100以上のパーツ(うち4つは可動部品)を使う。なかなか凝ったつくりだ。フレームはアルミ合金製で、ヘッドバンド部分はレザー素材となっている。

 UTOPIA/ELEARの高級感は維持しつつ、デザインは別の方向性を目指した。グレーのヘッドバンド、チャコールグレーにアルマイト処理したアルミハウジング、細かな穴の空けられたマイクロファイバークッションなどを使用し、軽快感も感じさせる外観だ。

 ちなみに開放型であるため、中央付近(ロゴが書かれた部分)のプロテクター越しにドライバーの裏側が透けて見える構造となっている。デザインは少し異なるが、このあたりも3モデルが類似している部分だ。裏側が赤くペイントされたUTOPIAでは、特にそれが分かりやすい。

開放型だるため、ドライバーの裏側が透けて見える

UTOPIAは赤いのでさらに分かりやすい

 振動板はELEARと同じでアルミとマグネシウム合金を組み合わせている。振動板の直径は40mm。ただしボイスコイル部分などドライバーの構造は新開発した。

振動板がシルバーなのがCLEAR。グレーはベリリウムを使用したUTOPIAのもの

中央が盛り上がったMシェイプの振動板

 振動板の形状は、Mシェイプと呼ばれる自動車用スピーカーで培った振動板形状が取り入れられている。Mの字のように中央が盛り上がったドーム形状で、ヘッドフォンのような近接再生に適しているそうだ。素材はアルミ合金とマグネシウムを複合したもの。マグネシウムは剛性が高く、低歪みで高解像度。アルミドームはダンピングに優れ、スムースでリンギングが発生しにくい。両者をいいとこどりした形となる。また、エッジの部分を薄く軽く作ることで動きもスムーズにした。発表会では計測グラフを示しながら、競合と比べて極めてひずみの少ない特性をアピールしていた。

サポートがなく、フィルムだけのボイスコイル

 構造面ではボイスコイルがユニーク。軽量化を図るため、ボビンに銅線を巻くのではなく、フィルムに銅線を巻いただけのコイルにしている。サポート部品は一切置かず線だけで形成。マグネットとも接触せず動くそうだ。非常に凝った作りで、ドライバーから設計・製造ができるFOCALの強みが存分に生きた部分と言えそうだ。

ドライバーの分解図(左)と特徴(右)。周囲に70μmの合成ゴムを使用。ボイスコイルは直径25mm、高さ4.4mm、世界最小・最軽量をうたう

Mシェイプの振動板、ボイスコイルはフィルム状になっている

ボイスコイルの変更によって、ELEARに比べて高域のリニアリティーが改善されている

他社に比べて振動板がぶれなく動く

 導体も従来は銅と銀を使っていたが、銅のみとなり、高域がニュートラルになった。また、ボイスコイルの軽量化も影響してインピーダンスが80Ωから55Ωに低減。感度も104dB SPL/1mW(1kHz)に向上し、ポータブルプレーヤーや低電力のアンプでも駆動しやすくなっている。全高調波歪率は0.25%(1kHz/100dB SPL)。周波数特性(±3dB)は5Hz~28kHz。

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