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日本MS榊原CTOが「トポロジカル量子コンピュータ」とその言語を解説

5年後には実用化か、マイクロソフトが「汎用量子コンピュータ」を開発する理由

2017年10月16日 16時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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日本マイクロソフトは10月16日、AIと量子コンピュータの開発に関する記者説明会を開催。同社 執行役員 最高技術責任者(CTO) 榊原彰氏が、マイクロソフトが先ごろ発表した「トポロジカル量子コンピュータ」について解説した。

日本マイクロソフト 執行役員 CTOの榊原彰氏

 マイクロソフトは、米国時間9月25日の「Ignite 2017」基調講演で、「トポロジカル量子コンピュータ」と呼ばれる量子コンピュータ理論の仕組みを実装したチップ実機、BlueFors社と共同開発した専用の冷却装置、Visual Studioで使える量子コンピュータ向けプログラミング言語を発表した。

 将来的には量子コンピュータをAzureに統合するとしており、年内に、量子プログラミング言語を用いて、アプリケーションの開発・デバックができる量子シミュレーターが無料でプレビューリリースされる予定だ。量子シミュレーターは既存のPC上で、30~40量子ビットの量子コンピュータのふるまいを再現するものだが、シミュレーター向けに開発したアプリケーションは実際のトポロジカル量子コンピュータでも動作可能だとしている。

IBM、Googleと同じ「量子ゲート方式」を採用、汎用化めざす

 量子コンピュータには、組み合わせ最適化計算に力を発揮する「量子アニーリング方式」と、汎用コンピュータの実現を目指す「量子ゲート方式」がある(方式の分類には議論がある)。量子アニーリング方式の量子コンピュータは2011年にカナダのD-Wave System社が商用化した。一方、IBM、Google、インテルは「量子ゲート方式」の研究を進めている(Googleは量子アニーリング方式の研究プロジェクトにも一部関わっている)。

 今回、マイクロソフトが採用したトポロジカル量子コンピュータも量子ゲート方式に含まれるものだ。「より用途が広く、汎用的な計算に強い量子コンピュータの実現を目指すために、マイクロソフトは量子ゲート方式を採用した」(榊原氏)。

 「量子コンピュータは、超電導体を絶対零度(マイナス273度)近くまで冷却して電流の流れを止めて、量子をコントロールしやすくする。この状態を維持できる時間を“コヒーレンス時間”と呼ぶ。量子ゲート方式は、量子アニーリング方式よりも外部のノイズの影響を受けやすくコヒーレンスが安定しにくい。トポロジカル量子コンピュータは、量子ゲート方式でありながらコヒーレンスが安定しやすいのが特徴だ」と榊原氏は説明した。

トポロジカル量子コンピュータ専用に開発した冷却装置

トポロジカル量子コンピュータを実装したチップ実機を手にするサティア・ナディラCEO

5年後には部分的に実用化か

 量子ゲート方式の量子コンピュータ開発においては、IBMが2016年5月に5量子ビットの量子コンピュータをクラウドサービスとして提供。また、2017年5月にIBMは17量子ビットの超電導チップを発表した。2017年4月にはGoogleが9量子ビットの超電導チップを発表。インテルも2017年10月に17量子ビットの超電導チップを発表している。

 IBMやGoogleが開発競争を繰り広げる舞台にマイクロソフトが参戦するのは不思議ではないが、あらためて「なぜマイクロソフトは量子コンピュータに取り組むのか」を榊原氏に尋ねた。

 「マイクロソフトは、今は“AIの民主化”、かつては“データベースの民主化”などを掲げてきた。今後は“量子コンピュータの民主化”に向けて取り組んでいかなければいけない。また、量子コンピュータがAIの開発を加速すると言われれば、マイクロソフトはそのテクノロジーを取り入れざるを得ない」(榊原氏)。

 また、実用化はいつ頃か。「IBMの量子コンピュータは、1年間で5量子ビットから17量子ビットまで増えた。この研究開発スピードを鑑みると、5年後には部分的に実用化されているのではないか」(榊原氏)。量子コンピュータは、量子ビット数が増えるほど並列計算能力が上がる。しばらくは各社の「量子ビット数」競争が続くだろうと榊原氏は述べた。

新しい量子プログラミング言語は「F#」に近い

 マイクロソフトはトポロジカル量子コンピュータに関して、ハードウェアから、ソフトウェア、プログラミング言語までフルスタックで提供していく方針を打ち出している。ソフトウェア開発企業のマイクロソフトらしく、ソフトウェアスタックの提供が先行し、Ignite 2017では、まず新しい量子コンピュータ向けプログラミング言語が発表された。

新しい量子コンピュータ向け言語は「関数型プログラミング言語のF#に近い」

 まだ正式名称がつけられていないこの言語は、榊原氏によれば「関数型プログラミング言語のF#に近い(あるいはF#そのもの)」という。この言語はVisual Studioで利用でき、デバック機能やオートコンプリート機能などのツールも提供される。2017年末にプレビューとして利用可能になる量子シミュレーターにはライブラリやチュートリアルも含まれており、量子コンピューティングの知識がない開発者であっても、量子コンピュータで実行されるサブルーチンを呼び出したり、完全な量子コンピュータ向けプログラムを作成したりできるそうだ。

 榊原氏は、今後のソフトウェアスタックのロードマップについて「プログラミング言語の次は、量子コンピュータ向けプログラミングのライブラリ、フレームワーク、アプリケーションの順に提供していく」と述べている。

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