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低スペックスマホでも「フェイスID並み」実現? 顔認証に新技術

2017年10月14日 23時10分更新

文● Rachel Metz

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アイフォーン Xの登場で3D顔認証が注目されている中、専用ハードウェアが不要で、安価なスマホでも使える技術を開発したと謳うスタートアップ企業が現れた。

パスワードと違って、同じ顔は1つとしてない。その単純な事実によって、顔認証は株取引からビデオゲームに至るまで、近い将来、非常に有力な認証システムになるかもしれない。スマートフォンによる生体認証がますます一般的、かつ高度になっているからだ。

アップルのような一部の企業は、赤外線カメラなどのセンサーで顔を3Dマッピングするのが最善だと考えているが、その技術が使えるのはハイエンド機種のスマホに限られている。一方で、ラスベガスの小さなスタートアップ企業フェイステック(FaceTec)は、あらゆるタイプのスマホにソフトウェアだけで動く3D顔認識を搭載しようとしている。

フェイステックの「ズーム(Zoom)」技術は、相手が写真や映像ではなく本物の人間かどうか、スマホの正当な所有者かどうかを判別するのに、アップルとは別の方法を採用している。スマホのカメラを顔に近づけるときに発生するひずみに着目し、あらかじめスマホに保存してある画像と、アプリを使うときの画像のひずみを比較して、違いを分析するのだ。

パスワードに代わる認証方法へ移行する動きはここ数年かけて進んでおり、指紋や虹彩スキャン、顔といった生体認証技術はスマホにも次第に浸透しつつあるものの、大きな成果は収めていない。とはいえ、特に顔認証は普及しつつあり、11月に発売される予定のアイフォーンのハイエンド機種に搭載される予定だ。顔認証機能の有望さが大きく取り上げられることで、フェイステックのような企業が市場での足がかりをつかむ可能性はある(「顔で決済」参照)。

フェイステックのケビン・アラン・トッシー最高経営責任者(CEO)は、4年近くにわたって顔認証に取り組んでおり、銀行や決済サービスなどの企業から引き合いがあるという(中小企業、教育機関、非営利団体の利用は無料だ)。開発者向けのソフトウェア・ツールも提供しており、現在、2つの銀行がパイロット版をテストしているところだ。

登録と認証のステップだけを実行できるAndroidiOS向けのデモアプリ「ズーム・ログイン(Zoom Login)」では、フェイステックのシステムがどのように機能するか、実際に試すことができる。まず、スマホと顔を約30センチ離した状態、次に数センチまで近づけた状態で自分の顔写真を撮影し、スマホの所有者を登録する。ログイン時も同様に顔の前にスマホを持ち、顔に近づけていく。暗いところでも動作するようになっており、ディスプレイの縁の部分が白く光って顔が十分に照らされるので、真っ暗な部屋でも実際にログインすることができた。

トッシーCEOによると、ズームはカメラのレンズが顔に近づく短い動きの中から1コマ、1コマを抜き出し、鼻の先などの顔の特徴がどのように変化するかを感知している。スマホ上で画像を直接解析しており、ローエンド機種でも利用できるという。

カーネギーメロン大学CyLab生体認識センターのマリオス・サブバイズ所長は、フェイステックの手法は理にかなっており、写真を使ってスマホに侵入するといったなりすましを防ぐのに役立つと話す。だが、3Dマスクを被った人のなりすましを阻止できるかは不明だ。アップルは3Dマスクを見分けるためにフェイスID(Face ID)を学習させたとしている。

フェイステックのトッシーCEOは、マスクやマネキンによるなりすましを見分けられると主張している。ズームの精度は設定次第で変わるが、誤認証は5万回に1回から、100万回に1回の間だという。アップルが公称している、タッチID(Touch ID)指紋センサー(5万回に1回)、フェイスID(100万回に1回)と同じ数値だ。

しかし、セキュリティ調査企業セキュロシス(Securosis)のアナリストでもあるリッチ・モーグル最高経営責任者(CEO)は、フェイステックの技術が完全にソフトウェア・ベースであることを踏まえると、「(アップルの顔認証技術と)同等レベルのセキュリティを達成するには、追加のハードウェアによる防御策が必要になるはずだ」と指摘する。

フェイステックの技術は十分に実用レベルに引き上げることができ、単純な2次元の顔認証より安全性は高まるだろう、とモーグルCEOはいう。「ですが、現在、採用されている手法と同程度にフェイステックの技術が実用的かつ安全となれば、私は衝撃を受けるでしょう」とも付け加えた。


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