単一プラットフォームでデータセンターにまつわるIoTデータを集約、活用可能に
シュナイダーがクラウドDCIM「EcoStruxure IT」発表、狙いは
2017年09月28日 07時00分更新
単一の「EcoStruxureプラットフォーム」採用で狙うものは
今回のカンファレンスにおいては、EcoStruxure ITがオープンでスケーラブルな共通プラットフォーム(EcoStruxureプラットフォーム)上に構築されたソリューションであることが繰り返し強調されていた。つまり、単に既存製品のStruxureWareをクラウド移行し、クラウドサービスとして置き換えることだけが目的ではないわけだ。
シュナイダーエレクトリック 会長兼CEOのジャン=パスカル・トリコワ氏は、“EcoStruxure”の名を冠したインターネットベースのシステムを「10年前から提供してきた」と振り返る。実際にこれまで、ビルや工場における安定的な電力供給を支援する「EcoStruxure Power」、IIoTでスマートオートメーションを実現する「EcoStruxure Machine」、都市電力網(グリッド)の効率化を図る「EcoStruxure Grid」が提供され、これらの合計導入実績はグローバルですでに45万件に上るという。
そして今回は新たに、EcoStruxure ITのほか、スマートビルディング向けの「EcoStruxure Building」、インダストリー向けの「EcoStruxure Industrial Software」がEcoStruxureファミリーに追加された。これにより、合計で6つの専門特化したソリューションがラインアップされたことになる。
それでは、本来目的の異なるソリューション間でプラットフォームを共通化することで、顧客側にどんなメリットがあるのか。トリコワ氏は大きく2点を挙げた。
まずは、顧客が複数のソリューションを組み合わせて導入しやすくなる点だ。EcoStruxureファミリーでは、前述のとおり6種類のソリューションをラインアップしているが、EcoStruxureがターゲットとする顧客市場は4つ(ビルディング、データセンター、インダストリー、公共インフラ)であり、1種類のソリューションがそのまま1つの顧客市場に対応しているわけではない。
トリコワ氏は、どの市場の顧客でも複数分野のソリューションを組み合わせて導入し、全体最適化された(=よりメリットの大きな)エネルギー効率化を実現したいと考えていると説明した。その際、複数のソリューションが単一のプラットフォームやインタフェースで統合されていれば、導入も運用も効率的に進めることができる。
「たとえば顧客がデータセンター事業者ならば、EcoStruxureファミリーのIT、Power、Buildingを組み合わせて導入することで、(ITインフラ部分だけでなくデータセンター全体を包含した)完全なソリューションが構築できる」(トリコワ氏)
さらにトリコワ氏はもうひとつ、EcoStruxureプラットフォームに幅広いデータが集積され、ビッグデータとして活用可能になるメリットも指摘した。
「(複数ソリューションを導入することで)プラットフォーム上では同じデータモデルで(幅広い領域の)データを集積、統合することができる。これをアプリケーションで活用したり、アナリティクスを通じて洞察を深めたり、他社と(エネルギー効率などを)比較する際のベンチマークにもなる」(トリコワ氏)
シュナイダーでは、EcoStruxureプラットフォームのアーキテクチャを3つのレイヤーで考えている。そして、データソース(デバイスやセンサー)の下位レイヤーだけでなく、アプリケーションやアナリティクス、AIなどデータを活用する上位レイヤーについても、APIなどを通じてサードパーティやパートナーに対し積極的に開放していく方針だという。
発表されたばかりということもあり、現時点ではEcoStruxure ITで収集されるデータセンターインフラ関連データが、DCIM以外のアプリケーションで具体的にどのように活用可能なのかは明らかではない。とはいえ、ビジネスデータと組み合わせたビジネス視点からのアナリティクス、あるいはSDI(Software-Defined Infrastructure)コントローラーとの連携によるITインフラ運用の自動化、AIによるエネルギー効率改善のアドバイスなど、データ活用のアイデアは幅広く考えられそうだ。
トリコワ氏は「EcoStruxureプラットフォームは、あらゆるモノが接続でき、それをオープンなデータソースとして活用可能にする」と述べる。IoTのデータプラットフォームとしては汎用的ではなく、極めて領域特化したものと言えるが、そのぶんその領域においては「顧客のことを深く理解しているのが強みだ」とも語った。来年の提供開始に当たってどのような新たな可能性を提示してくれるのか、注目しておきたい。