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グリーンランド国際サンタクロース協会 公認サンタクロース パラダイス山元氏インタビュー

会社を辞めてサンタに転職「儲からないけどやってよかった」

2017年09月22日 20時00分更新

文● ナベコ

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 日本にアジア圏で唯一のグリーンランド国際サンタクロース協会公認のサンタクロースがいることをご存知ですか? パラダイス山元さんという方で、サンタクロースでありながら子ども番組で大人気の楽曲「たこやきなんぼマンボ」を作曲・演奏するマンボミュージシャンでもあります。

パラダイス山元さん。餃子専門店「蔓餃苑」(キャンペーン中は「珍魚苑」)のオーナーシェフですが、実はサンタクロースです。

 そんなパラダイス山元さんは日本で一番予約が取りにくいとも言われる会員制高級紳士餃子レストラン「蔓餃苑」のオーナーシェフとしても活躍しています。提供する餃子は一般的な中華料理の餃子とは異なり独創性ある創作餃子で、度々メディアにも取り上げられています。

 山元さんの本職はいったい、サンタクロースなのでしょうか? ミュージシャンなのでしょうか? 餃子職人なのでしょうか? お会いすることがあったのでユニークな仕事属性についておききしてきました。


異色すぎるパラダイス山元氏の略歴
1962年北海道札幌市生まれ。日本大学藝術学部卒業後、富士重工業に入社し、初代レガシィ ツーリングワゴン、アルシオーネSVXなどのカーデザインを手掛ける。富士重工業を退社後、東京パノラママンボボーイズでマンボミュージシャンとしてメジャーデビュー。グリーンランド国際サンタクロース協会公認のサンタクロース、会員制高級紳士餃子レストラン「蔓餃苑」のオーナーシェフの他、マン盆栽の家元、入浴剤ソムリエとして「蔓潤湯」のブレンドを手がけるたり、飛行機・マイルなど多岐に専門性を発揮する。 


■誰かが極めたことには決して手を出さない

――こんにちは。初めて「蔓餃苑」におじゃまさせていただきました。絶品の餃子レストランと伺っていたので以前から気になっていましたが、会員制で予約が取れにくいということで、断念していました。

パラダイス山元氏:蔓餃苑は2001年にオープンして今年で17年目です。完全会員制で住所を非公開とさせていただいております。新しく餃子会員になりたいという方の声をたくさんいただいておりますが、現在は申し訳ないのですが、会員でもあまりに予約が取れないということで、新規の餃子会員の募集はストップしています。

――繁盛しているのですね。今日はパラダイス山元さんのユニークな職歴についておききしにきました。あらためて、略歴を教えていただいてよいでしょうか。

山元氏:出身は北海道の札幌です。東京に出て日本大学藝術学部でインダストリアルデザインを専攻、卒業後は富士重工業、今のSUBARUに入社してカーデザイナーをやっていました。初代レガシィ ツーリングワゴンをデザインしたり、イタリアの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロと一緒にアルシオーネSVXを作ったりしました。5年で辞めて、学生のころからやっていたマンボ音楽で「東京パノラママンボボーイズ」を組んでメジャーデビューしました。バンドは2年契約だったので、その後またカーデザイナーに戻ろうとも考えていのですが、結局は公認サンタクロースとか餃子とかマン盆栽とか、特殊な方向に進んで戻れなくなってしまったわけですね。

写真は2015年のもの。アスキー編集部に江崎グリコのキャンペーンの一環でお越しいただきました。

――もう異色すぎて(笑)。カーデザイナーというと花形ですし、当然お給料もよさそう。どうしてそれをやめてミュージシャンに転向したのでしょうか?

山元氏:学生のころから乗り物が好きでしたし、カーデザイナーの仕事は本当にこれがしたいなと思って勉強して就職したのですけど、クルマの世界はレスポンスが遅い、というのが自分に合わなかったのかもしれません。車をデザインしてから製品化が決まって、そこからパーツを設計して世の中に新車として登場するまで、最低で4、5年かかります。その繰り返しを死ぬまでずっと続けると思ったら、ちょっとツラいな〜ってなってしまったんです。一方で音楽活動は、ライブしたらその場にいるお客さんが盛り上がってくれて、CD出すとなったら数ヵ月でリリースされて売り上げの結果がスグに出てと、スピード感が全然違って、そういうレスポンスの良さが自分には合っていたのです。

――自分がしたことに対する結果がすぐ出るかという点が山元さんのモチベーションを高めるポイントだったのですね。飲食店もお客さんの「おいしい」という反応がその場でわかりますよね。ただ、失礼ですが、興味があるものには手当たり次第取り組んでいる、という印象があります。

山元氏:それが手当たり次第というわけではないんですよ。自分の中で、誰かがやったことがあるものはやらない、という基準があります。昔から人と同じことをするのが嫌いで、自分が道を切り開くことに価値を感じていました。だから、すでに人がやっていることはやらない。それと、みうらじゅんがやったことには絶対に手を出さない。

――みうらじゅんさん!

山元氏:みうらじゅんさんには、私のマン盆栽の本の解説も書いていただいたり、お世話になっているのですけどね、ちょっと方向が近くなってしまう時があるんです。でも、みうらじゅんさんには絶対かなわないです。エロ本のスクラップとか、崖とか仏像とか、本当にスゴイです。だからこそ、みうらじゅんさんが手がけていらっしゃることは絶対やらない、今後も近づかないと心に決めています。

――まさかみうらじゅんさんの話が出てくるとは思っていませんでした。

Image from Amazon.co.jp
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■公認サンタクロースは儲からない?

――山元さんは「グリーンランド国際サンタクロース協会」の公認サンタクロースでもありますね。認定されてから何年たっているのでしょうか?

山元氏:今年で20年目です。サンタクロース協会の歴史で、最年少の35歳の時に認定され、今に至ります。

――公認サンタクロースってどういうお仕事をされるんですか?

山元氏:クリスマスイブにお家で過ごせない、病院に長期入院していたり福祉施設にいる子どもたちを、先回りして訪ねるというのが主な役割です。それと毎年デンマークの首都コペンハーゲンで開催される世界サンタクロース会議に毎年欠かさず出席しなくてはいけません。季節は真夏なのですけど、サンタクロースは家を出る時からサンタクロースでいなくてはいけないので、暑い中、分厚いサンタクロースの衣裳を着て信じられないくらい汗をかいて自宅から空港に向かい、デンマークに行っています。もちろん飛行機の中もずっと、サンタクロース姿のままです。

――以前、アスキー編集部にビスコのクリスマスキャンペーンででお越しいただいた時にもそのようなことをおききしました(笑)。公認サンタクロースにはなんでなったのでしょうか?

山元氏:日本で他の人がやっていないことだった、というのと、当時はよくわからないままで公認サンタになってしまいました。サンタクロースになってよかったこと、そうじゃないことそれぞれありますが、7対3くらいでいいことが大きいので、なってよかったなと思っています。

――え……? サンタクロースでいられるとハッピーというわけではないのですね。

山元氏:まず時間の面です。公認サンタクロースの任務にこれまで費やした時間を、純粋に仕事とかお金を稼ぐことに費やしたら、今頃隠居生活を送っていたのでは(笑)、と思います。

――つまり公認サンタクロースの仕事は儲からないのでしょうか?

山元氏:儲からないです(きっぱり)。例えば、グリーンランド国際サンタクロース協会の取り組みとして福祉施設などに行ってますが、基本的に報酬というものはありません。

「サンタの仕事は儲からない」という山元さん。

――公認サンタクロースは慈善事業なのですね。

山元氏:海外では名誉職です。子どもが駆け寄ってきて「サンタさん、いつもありがとう」って言ってくれるような。日本だとその感覚はないのでしょうけど……。実は今、自分も20年間やってきたので、任務を引き継げる後継者を探しているのですが。

――後継者ですか。社会福祉に興味ある人など、志望する人は多そうですね。

山元氏:そう思うでしょう。ですけど、公認サンタクロースになって大丈夫だなと思える人は現れていません。

――山元さんの眼鏡が厳しいのでしょうか?

山元氏:主義とか信念がしっかりしているとか、そういう話でもなく、経済面で不安を感じます。不労所得とか経済的な基盤がないと、生活が成り立たなくなります。しかも、サンタクロースらしい体型を維持しなきゃいけませんし、公認サンタクロースの仕事は容易に足抜けできないので、すぐやめたくなっても無理なんです。

――足抜けって(笑)。

山元氏:やめようと思えばやめられるんですけど、一度公認サンタクロースになったからにはずっとついて回るんですよ。例えば去年まで公認サンタクロースだった人が今年辞めたからといって、何か罪を犯して捕まったりしたらダメでしょう。始めた当初自分もあまりわかってなかったのですけど、とにかく責任重大です。一生ついてまわります。

――な、なるほど……。軽い気持ちでなっては後悔しますね。公認サンタクロースをやっていて、良いことはどんなことがあったのでしょう?

山元氏:公認サンタクロースでなければできなかった様々な体験ができたり、いろんな人と出会えたりしたことです。サンタクロース協会の理念は「すべての子供たちにサンタクロースを」。ちゃんと親御さんがいて、いつでもプレゼントがもらえる子どもには我々は必要ないんです。病院にいったり、親のいない子どもたちの施設にいくわけですけど、簡単には表現しにくい複雑な気持ちを味わうことになるんです。小児ガンの患者さんから「来年も必ずボクのところに来てね、待ってるね」と言われたりします。

――……ツライですね。私は、サンタさんの仕事は子供に夢を与える仕事だから、清々しい気持ちでいられるものと思っていました。

山元氏:公認サンタクロースを続けていなかったら知らなくて済んだことまで知ってしまいました。「福祉の充実」を公約に掲げている議員の方達はごまんとおりますが、現場の子どもたちの気持ちに寄り添ったりしている大人は少ないように思います。社会の不条理というか、ツラく感じることも多々ありますが、子どもたちにちょっとでも希望を与えることができたり、その時間を楽しく過ごせると、やっててよかったなと思います。

■有明海の「珍魚」と餃子の特殊な組み合わせ

――餃子はいつからお好きなのですか?

山元氏:そうですね。自分の餃子のルーツをたどると、3、4歳のころから母親の見よう見まねで餃子は作っていました。家で餃子が出る時には、やりたいって言って自分も包ませてもらっていました。生家は北海道の札幌なので海の幸にとても恵まれた環境でした。鮭とか蟹とか、飽きるほど食べていたはずなんですよ。イクラなんかは鮭から自分の家でお腹を裂いてほぐして醤油漬けにして食べていましたし、道外の方からするとうらやましがられる環境なのでした。

――わ、わ、わ。おいしいそう。

山元氏:そんな中で海鮮よりも母親がつくった餃子のほうが、手間をかけ調理するぶん特別という感覚があって好きでした。蔓餃苑では、世界でも類のない餃子のフルコースをお出ししています。

Image from Amazon.co.jp
うまい餃子

山元さんの餃子のレシピ本も多数発売されています。

――最近だと、蔓餃苑では、2017年の8月、9月に、佐賀県とコラボレーションして、有明海の珍魚で作る餃子という有明餃子レストラン「珍魚苑」をオープンしたということですね。珍魚というと具体的にはどういう食材ですか?

山元氏:ムツゴロウ、ワラスボ、イソギンチャク、クチゾコ、アカガイ……、とかです。有明海の滋養に育まれた生物です。有明海というのは、とても特殊な海なんですね。干潟なので、思い浮かべている大海原というのとは全然違う。また、にごっているのですよ。そのにごっている部分に養分がたくさんつまっているわけです。

――ええ~、イソギンチャクとか。食べられるのでしょうか?

山元氏:イソギンチャクはコリコリとした歯ごたえがありますね。ムツゴロウやワラスボは佐賀の特産物なのですが、地元でも食べたことがないという人は多かったです。餃子に仕上げて、召し上がった方からは「おいしい、まったく泥臭くない」という声をいただいています。特殊な食材なので自分が試されているような感覚です。

――佐賀県とのコラボレーションということですが、地方とコラボして特産物を使った餃子をつくるという取り組みはこれまでもやっていたのですか?

山元氏:いいえ、一度もやっていないです。今回、佐賀県の広報広聴課の方から「有明海の珍魚で餃子を作ってみていただけないでしょうか?」とアイデアをいただいたいのですが、私は人から提案されたり、お願いされることは苦手なので最初はどうかなと思いました。ですが、有明海に惹かれていたのと、世界で自分しか作れない餃子づくりという点でチャレンジさせて頂きました。

エイリアンのような見た目の「ワラスボ」も調理。こちらは佐賀特産のワラスボの干物です。

――ここでも、世界でひとつというのがポイントなのですね。

山元氏:はい、世界でそこにしかない、というのが自分の中では大切です。訪ねていって味わうのが、世界でいくつかある場所だったり体験であるならば興味は湧いてきません。有明海の珍魚でつくる餃子を提供する珍魚苑では、お客さんに世界で唯一無二の体験をしていただけたものと自信を持っています。

――公認サンタクロースとしても、餃子のシェフとしてもポリシーを持つパラダイス山元さん。ミュージシャンもやられていますし。最後に、パラダイス山元さんはご自身の本職はなんだとお考えでしょうか?

山元氏:よく、あれもこれもやっていて、ひとり総合商社のようだと言われることがあるのですが、自分の中では整合性があります。例えば、世界各国の公認サンタクロース仲間に餃子をふるまう。そうすると、ものすごく好評で「おいしい、またやろう」と言ってもらって不思議な化学変化が起こるわけです。

――サンタクロースが集まって餃子を頬張っている様子を想像すると……! それぞれの仕事が結びつくとスゴイことになりそう。

山元氏:実は今回の佐賀とのコラボレーションも、昨年、公認サンタクロースとして佐賀県有田町のクリスマスイルミネーションの点灯式に呼ばれたことでご縁ができて、きっかけになっています。さらにその発端は、福島県へボランティアで、私もメンバーとして参加しているOBANDOSというバンドでライブをやった際、ジョイントした地元のミュージシャンから「佐賀県有田町には、有田焼の窯元のサンタクロースが好きそうなレンガ造りのぶっとい煙突が何本もあるんだよ、行ってみたら?」と教えられたからでした。どうです、繋がっているでしょう(笑)。

パラダイス山元さんは、取材にうかがった時に開口一番「ビール飲みますか?」ときいてくださって、とてもサービス精神旺盛な方でした。ありがとうございます。

――すべてが山元さんですし、仕事が繋がってくるのですね。山元さんの生き方から「前例がないことはチャンス」と教えてもらった気がします。新しいことをチャレンジする時、マインドを見習いたいと思いました。今度餃子食べに来たいです。ヒパヒパ~!

■関連サイト

珍魚苑では現在、山元さんが伝授する珍餃子のレシピ動画を公開中です。こちらは「むつごろう餃子」。ビジュアルが衝撃。



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ナベコ

寅年生まれ、肉食女子。特技は酒癖が悪いことで、のび太君同様どこでも寝られる。30歳になったので写経を体験したい。Facebookやってます!

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