アイリスオーヤマが炊飯器新製品を発表。3合炊きIHジャー炊飯器は、飯碗によそったときのカロリーがわかる機能つき。5.5合炊き圧力IHジャー炊飯器は、冷凍ごはん・カレー・どんぶりなど用途に合わせてごはんの炊きわけができる機能つきです。
●カロリーが分かる3合炊き
銘柄量り炊きIHジャー炊飯器 KRC-ID30-R
3合炊き 800W
3万2800円
10月14日発売
http://www.irisplaza.co.jp/Index.asp?KB=SHOSAI&SID=H273218
●特長
・カロリー表示機能
・量り炊き
・本体分離
はじめは3合炊き炊飯器。
「カロリー」ボタンを押してからごはんを茶わんによそうと液晶画面にカロリーの概算値を表示します。炊飯器に重量計を内蔵しており、シンプルに重さから割り出した値がカロリーです。むかしの体重計のように数字がゆれるので、目安レベルです。
米の重さを量って必要な水の量を知らせる「量り炊き」機能もついていて、量り炊きは40種類のブランド米に対応。それぞれの銘柄に適した水の量を5g単位で指定します。おいしく炊くのがむずかしい0.5合炊きなど少量炊きにも向いています。
本体は上下に分離する変態構造。上の釜部分はおひつとして、下のIH熱源部分は独立したIHヒーター(最大1000W)として使えます。
お手入れもしやすくなりました。内ぶたがワンタッチではずれるようになり、蒸気口もはずして水洗いができるようになっています。
なお同社試験によれば、炊飯時に入れる水の量が5g単位でズレるだけでごはんの食味は大きく変わってしまうそうです。その上、内釜の水位線にあわせても誤差5g以内におさめられた人はわずか2割程度だったとか。重量にこだわる理由はわかります。
ちなみにカロリー表示機能をつけたのは、炊飯器担当者自身が医師から食事制限(指導)を受けたからだそうです。ちょっと心配ですね。
●こだわり炊き分け5.5合炊き
銘柄炊き圧力IHジャー炊飯器 KRC-PA 50-B
5.5合炊き 1230W
2万9800円
10月14日発売
http://www.irisplaza.co.jp/Index.asp?KB=SHOSAI&SID=H562098
●特長
・銘柄炊き 31銘柄
・炊き分け(カレー、冷凍ご飯など6種類)
・食物繊維米モード
つぎは5.5合炊き炊飯器。圧力IHジャー炊飯器は同社初です。ブランド米をよりおいしく炊けるという銘柄炊きは今までどおり。新機能は「こだわり炊き分け」。用途にあわせて、加圧時間・火力・蒸らしの強弱・時間を自動的に変える機能です。
●こだわり炊き分けモード
・おむすび
・冷凍ごはん
・丼(どんぶり)
・カレー
・すしめし
・食物繊維米
おむすびモードは冷めても粒感・もちもち感が残り、粘りが少なく、口に含んだときほぐれるように炊きあげます。標準モードで冷めるとつぶれがちです。
冷凍ごはんモードは粒立ちをしっかりさせて、解凍したときもやわらかさを維持。標準モードだと解凍時にべちゃっとするか、ボロボロと硬くなりです。
丼モードは牛丼などのつゆが染みやすく、カレーモードはルーとからみやすく、すしめしモードはお酢となじみやすいなど、適した食味に炊くようになっています。
食物繊維米モードは、ごはんの食物繊維を増やす炊飯方法。食物繊維の総量は、標準モードに比べるとごはん1杯で1.4倍になるそうです。具体的にはレジスタントスターチ(RS)という消化されづらいでんぷん質を増やすものということでした。
各種用途に適したごはんが炊けるのですが、パラメーターを振りきって炊飯するスタイルのため、炊きたてのごはんを単体で食べるとあまりおいしくないそうです。思いきっています。
ただ、グルメ担当のナベコさんと話していたのですが、たとえば冷凍ごはんの場合、ごはんを炊いて、食べて、あまったぶんを冷凍するのがふつうではないかと感じます。冷凍するためにごはんを炊くのはかなりのレアケースです。使いどころがわりとむずかしいなと感じました。
ちなみに食物繊維米モードで炊いたごはんは、ちょっと硬めで、香りも少なく、あまりおいしくなかったです。健康に良いと思って食べると、ぎりぎり許せます。
また、時間に追われる現代人のため、1合わずか19分という爆速の「高速炊き」モードも備えています。くわしい調理工程は分からなかったのですが、おそらく浸水・蒸らしの工程を最低限におさえた炊飯モードだろうと推測します。
斜め上発想の加速に期待
アイリスオーヤマは2015年から炊飯器を展開しています。いままで炊飯器は3機種しかありませんでしたが、今回は合計9機種に増やしてきました。
2013年に精米事業に参入して得た知見を炊飯器に入れていこうという大義名分があるのですが、業界後発ということもあり、分離式など斜め上の発想で驚かせてくれているのがアイリスオーヤマです。消費者のお悩みを解決しようというのが製品開発のコンセプトで、今回は「単身・少人数世帯」「健康志向」などをキーワードに開発しているそうです。
例:
健康志向→カロリー計算
体型が気になる→食物繊維米
単身者→冷凍ごはんモード
共働き世帯→高速炊き
同社の炊飯器の基本的な考え方は、高機能・高価格帯が個人の「おいしい」にはつながらない。高級炊飯器は炊飯方法にくわえて釜の素材のちがいなどに注目が集まっていますが、同社では素材云々よりも、加熱方法とバランスで味が決まると考えています。水の量、圧力のバランスを整えることでおいしいごはんを炊こうという考えです。
ちなみに同社の試食試験では、1万円以下のマイコンジャー炊飯器も、10万円代の高級IH圧力炊飯器も、おいしい・おいしくないの判定が、人によって分かれたということでした。5980円と13万円の炊飯器の炊き比べをした身としては分かるところもあるのですが、釜の素材、炊飯方法、そして火力は食味に大きく寄与した印象があります。
アイリスオーヤマの売上はグループ全体で昨年度3460億円。2017年度は4300億円目標です。うちアイリスオーヤマ本体は1220億円から1550億円に伸ばす計画で、うち家電事業は40%から47%に伸ばす計画。全社の5割にあたる730億円が家電事業にあたります。
アイリスの家電はLED照明やスティック掃除機などがヒット製品ですが、2年前からは炊飯器に注力しており、今年度は家電内の売上構成比で炊飯器が最大だそうです。
アイリスの開発の強みは大阪R&Dセンター。国内大手家電メーカーを退職した中途技術者を数多く雇用しています。品質管理・金型設計・知的財産管理など多くの分野で「多国籍軍のようにさまざまなメーカーから社員が集まっている」(同社)ということです。炊飯器も関西系のメーカーからリクルートした技術者が貢献しているものと思います。
アイリスは「消費者の不満を解決するユーザー目線の製品開発」「店頭売価から発想する引き算の製品設計」「製品開発・知財・品質確認など部署間で案件をリレーするのではなく同じプロジェクトに伴走する形のスピード開発」の3要素を強みとしています。
消費者目線でいえば、安くて変態的なアイデア製品をつくる人たちという印象です。
いよいよ炊飯器に本格参入となると、あまり変態的な企画は期待できなくなるのかなと最初心配していましたが、パラメーター全振りのこだわり炊き分けモードなどを見ていると、まったくそんなことはなく、むしろ方向としては加速しているように見え、好ましく感じました。今後もアイリスらしく斜め上の方向にがんばっていってほしいと思います。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中。
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