ベリタステクノロジーズは9月14日、中堅中小企業(従業員規模1000名以下)におけるデータ保護(バックアップ/リストアなど)の実情や課題、「Backup Exec」最新版など同社データ保護製品における対応に関する記者説明会を開催した。
中堅中小企業でも「平均4.1種類」のデータ保護製品を導入
エンタープライズ(大企業)と同様に、近年では中堅中小企業においても、アプリケーションは旧来の物理環境だけでなく、仮想環境やクラウド環境にも配置されるようになっている。それに伴って、業務データも徐々に物理/仮想/クラウドの各環境への分散化が進んでいる。
米ベリタスでBackup Exec製品群担当GMを務めるジェリー氏は、中堅中小企業のIT意思決定者(ITDM)900人余に対するグローバル調査(2016年、Spiceworksが実施し日本も含まれる)の結果データを紹介した。それによると、現時点ではまだ半分近く(45%)のデータが物理システムに保存されているが、今後3年間で、物理環境からクラウド環境へのデータ移行が進む見込みだという。
ここで重要なのは、たとえデータのクラウド移行が進んだとしても、一部のデータは物理環境や仮想環境にも残り続けるという点だ。つまり、複数の環境それぞれに対応したデータ保護対策を行う必要がある。
ジェリー氏は前述の調査結果からもうひとつ、データ保護製品の導入状況に関するデータも示した。それによると、現状で回答企業が導入しているデータ保護製品は、平均で「4.1種類」もある。これは長年をかけて、新たなアプリケーションやシステム、インフラを導入するたびに、それ(だけ)に対応するデータ保護製品を追加導入してきた結果と考えられる。そのバックアップ/リストアのオペレーションが複雑なものになっていることは、想像に難くない。
「平均で4種類のデータ保護製品を導入しているということは、ライセンス(料金)も4倍、オペレーションの手間も4倍、技術トレーニングも4倍必要になるということだ」(ジェリー氏)
このようにデータ保護対策の複雑さが増すなかで、保護対象のデータ量は今後も変わらず急速に増加していくと予想されている。そのため、前述したデータ保護にまつわる問題は、今後さらに大きくなっていくだろうとジェリー氏は指摘する。
他方で、昨今ではランサムウェアの脅威も見逃せない。ジェリー氏は、サイバー攻撃や天災などによる不慮のシステム停止が中小企業にもたらす損害額は、1時間で1万2500ドル(約138万円)、1日で15万ドル(約1650万円)、1週間では75万ドル(約8250万円)にも上るという試算(IDCによる)を示した。だが、その一方で「『Wannacry』などのランサムウェア攻撃が猛威を振るった後でさえ、29%の中小企業はセキュリティ対策やデータ保護規則に手を加えていない」という調査結果もあると述べ、深刻な事態であると指摘する。
Backup Execでデータ保護を統合、今後は「360度データ管理」へ
こうした問題は、物理/仮想/クラウド環境を統合的な単一ツールでカバーすることにより解決できる、というのがベリタスの提案だ。具体的には、中堅中小企業向けの統合データ保護製品であるBackup Execを採用することで、物理/仮想/クラウド環境のデータを単一コンソールから一元的に保護することが可能となり、ライセンスコストやオペレーションコストの削減や、高速なリカバリの実現(インスタントリカバリ、簡易DRなどの機能による)につながるとしている。
ジェリー氏は、Backup Execの最新版(Backup Exec 16 Feature Pack 2)では特に「顧客のクラウド移行ニーズに着目した」と説明した。たとえば、Amazon S3互換のオブジェクトストレージへのバックアップに対応したことで、パブリッククラウドだけでなくローカルのS3互換SDS(Software-Defined Storage)にもデータ保管が可能となり、プライバシーやセキュリティの問題を解消している。また、クラウド保存時にデータ容量を「最大90%」(ジェリー氏)削減できる重複排除機能が追加され、パブリッククラウド利用時のコスト負荷を下げることができる。
なおベリタスでは今年2月から3月にかけて、Amazon Web Services(AWS)とのテクノロジーアライアンス、マイクロソフトとの「Microsoft Azure」に関する戦略的パートナーシップ、グーグルとの「Google Cloud Platform(GCP)」および「G Suite」に関する戦略的パートナーシップ強化を相次いで発表している。こうした施策により、たとえばAWSの「Test Drive」や「Azure Marketplace」を通じて、パブリッククラウドでBackup Execを簡単に試用/導入することができるようになっている。
そのほか今後の開発ロードマップとして、ジェリー氏は「(さまざまなクラウドプロバイダーの)マーケットプレイスでの提供」「Office 365などのSaaSワークロードのサポート」「サブスクリプション型ライセンスの導入」などを挙げた。
昨年のシマンテックからの独立後、ベリタスでは「360度データ管理」のビジョンを掲げ、単なる「データ保護」だけでなく、システムとしての「可用性」を向上させ、さらにデータから「洞察(インサイト)」を得るためのソリューション群をリリースしてきた。これまでは主にエンタープライズ向けに展開してきたが、今後は中堅中小企業向けにもそのビジョンを展開していく。
そのひとつとして、今年後半に、Backup Execを「Information Map」と連携可能にする計画であることも明らかにされた。Information Mapは、保護対象のメタデータを収集し、さまざまな視点から可視化することで、利用頻度の低いサーバーや共有の破棄、陳腐化した無駄なデータへの対応など、ビジネス判断を可能にするツールだ。
ジェリー氏は、中堅中小企業が統合型のデータ保護製品(=Backup Exec)を採用するモチベーションについて、前述したようなデータ損失時の損害の大きさと対策コストの削減のほか、社内法務部門による監査への対応もあるだろうと述べた。IT部門は個人情報など特定のデータがどこにあり、どのように管理されているのかを答える必要があり、そのためにもこうした仕組みが必要になるとしている。