深層学習を使ってドローンやロボットが自律的にパイプ・ライン、送電線などを点検する企業がある。石油精製所の点検作業を人力から機械化することで、100万ドルの費用が浮くという。
ゼネラル・エレクトリック(GE)の子会社でボストンに拠点を構えるアビタス・システムズ(Avitas Systems)は、ドローンやロボットを活用してパイプライン、送電線、輸送機関といったインフラの点検作業の自動化を進めている。アビタスはエヌビディア(2017年版スマート・カンパニー50)が提供する既存の機械学習テクノロジーを利用して、点検項目を指示させ、収集済みのデータから自動的に不具合を特定できるようにしている。
アビタスの取り組みは、低コストのドローンやロボットシステムを、急速に進歩した機械学習と組み合わせて活用するもので、高いスキルを必要としないあらゆる仕事を自動化できる可能性を如実に示している。製造業や事務的な仕事の自動化に対して懸念する声は多いが、決まった手順によるセキュリティ・チェックや安全検査は、進化した人工知能(AI)が人の代わりになる初の大規模な分野となるのかもしれない。
ドローンが複数の産業現場で活用されるようになってからしばらく経つ (「New Boss on Construction Sites Is a Drone」参照)。さらにケスプリー(Kespry)、 フライアビリティー(Flyability)、サイフィ(CyPhy)などさまざまな企業が、採鉱場の監視、風力タービンの検査、建物保険請求の査定を目的としたドローン・システムを提供しており、作業の自動化をさらに進めるために必要なテクノロジーが利用可能になりつつある。似たようなテクノロジーを利用して、ロボットにオフィスやショッピングモール内を自動的に巡回させ、不審な行動の監視もできそうだ(「Rise of the Robot Security Guard」参照)。
アビタスではドローン、車輪走行型ロボット、自律型潜水艦を活用し、石油精製所、ガス・パイプライン、冷却塔などの設備から点検に必要な画像データを収集している。アビタスが利用しているエヌビディアのDGX-1システムは最先端の機械学習のために設計されたコンピューターで、収集した画像データと同じ地点までドローンなどを誘導し、画像データを分析して不具合のある可能性を探らせるために使っている。
エヌビディアのシステムは深層学習(人の神経に似せた大規模ニューラル・ネットワークを訓練して、データ中のパターンを自動的に認識できるようにする取り組み)を駆使するものだ。深層学習は画像処理の分野で、特に長けていることが明らかとなっている。深層ニューラル・ネットワークを、過去の故障事例を写した画像を何千枚もインプットして学習させれば、自動的に送電線の故障箇所を特定するといったことが可能だ。場合によっては、深層学習の方が人間よりも正確な画像認識ができる。
アビタスの創業者アレックス・テッパーによると、遠隔地まで作業員を派遣して検査させるコストも含めると、顧客企業は人力での設備点検作業に数億ドルのコストをかけているという。ドローンやロボットの場合、同じ場所の画像データを何度でも自動的に収集できる。おそらく、人の目では見逃すような不具合の特定がより簡単にできるようになるだろう。この方法を使えば、たとえば、石油精製所1カ所あたり年間約100万ドルの点検コストを削減できるようになる、とアビタスでは推定している。
AIの進歩により、ロボットが自ら目的地にたどり着けるよう教え込むことも簡単になってきている。たとえば、9月第2週に、深層学習を専門とする企業、ニューラー(Neurala)は、ドローンが特定のターゲットの認識・追跡、障害物の回避を連続してできるように学習させる、ソフトウェア・ツールキットの販売開始した。