OSS DBも商用DBも、技術イベント「AWS DB Day」開催――基調講演レポート(前編)
“PostgreSQL互換版”Amazon Auroraの性能はRDSの何倍?
2017年07月07日 07時00分更新
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSJ)が7月5日、AWS上でのデータベース(DB)技術をテーマとしたイベント「AWS Solution Days 2017 ~AWS DB Day~」を開催した。基調講演では4名のゲストが登壇し、Amazon Aurora/RDS、PostgreSQL、MySQL/MariaDB、Oracle DB、SQL Server、Kinesis FirehoseなどのAWS上での性能検証結果やDB移行、活用事例などを技術的側面から紹介した。
基調講演レポート前半ではまず、SRA OSS, Inc.の石井達夫氏による「Amazon Aurora with PostgreSQL Compatibility」のパフォーマンス検証結果報告、インサイトテクノロジーの小幡一郎氏によるOSSのカラム型DBエンジン「MariaDB ColumnStore」紹介をお届けする。
PostgreSQL互換版 AuroraのWrite性能を検証、SRA OSS・石井達夫氏
最初に登壇したSRA OSS 日本支社 取締役支社長の石井達夫氏は、昨年11月の「re:Invent 2016」で発表され、現在プレビュー提供中の「Amazon Aurora with PostgreSQL Compatibility(以下、Aurora PostgreSQL互換版)」を性能検証した結果を報告した。
石井氏はまず、Aurora PostgreSQL互換版の機能ブロック構成について説明した。このAuroraでは、DBエンジン部分にはPostgreSQL 9.6のコードをそのまま利用して互換性を持たせる一方で、Read(読み込み)処理を分散し高速化するリードレプリカ(Read Replica)はAWS独自のものに差し替え、加えてフェールオーバー処理や高速なWrite(書き込み)性能を新たに実現しているという。
このうち、石井氏はWrite性能の向上に注目して性能検証テストを実施した。Write処理の性能向上は、アプリケーション変更が必要になるなどRead処理のそれと比べて難しいというのが常識で、「『Auroraに乗り換えるだけで性能が向上する』といううまい話が本当にあるのか?」と考えたという。
検証は、AWS上でAurora PostgreSQL互換版とAmazon RDS for PostgreSQLのインスタンスを用意し、pgbench(PostgreSQL用のベンチマークツール)が大量のトランザクションを流し込むかたちで実施した。同時接続数を250/500/750/1000と変化させながら1時間ずつトランザクションを流し、実行できたトランザクションを性能指標とする。なお、1つのトランザクションにはSELECTが1回、UPDATEが3回、INSERTが1回含まれる。
検証の結果、Aurora PostgreSQL互換版は、Amazon RDS for PostgreSQL比でおよそ3倍のスループットを実現し、レスポンス時間も短く安定していることが明らかになった。Auroraのほうは同時接続数を増やしてもスループットの劣化が少ない点もポイントだと述べた。
なお石井氏は、SRA OSSが中心となって開発しているPostgreSQL管理ミドルウェア「Pgpool-Ⅱ」の機能を紹介し、今後、Aurora PostgreSQL互換版にも対応していく意向を明らかにした。Pgpool-Ⅱは、クエリ内容に応じて複数ノード(Writer、Read Replica)への負荷分散処理ができるOSSツールであり、Aurora PostgreSQL互換版の処理をさらに効率化/高速化するはずだ。