クアルコムは6月20日、同社のボイス&ミュージックビジネスに関する記者説明会を開催した。オーディオのワイヤレス化トレンドにともない、BluetoothオーディオチップセットやUSB Type-C対応SoCなど5つのプラットフォームを投入する。
説明会にはシニアSVP兼ゼネラルマネージャーのアンソニー・マレー氏が登壇し、最初にオーディオ関連のトレンドを解説した。マレー氏は「音楽はダウンロードではなくストリーミングの需要が高まっており、通信が重要となる」とコメント。さらにワイヤレス化が広まっていると述べた。この理由としてワイヤレスでの音質が向上したことと「ヘッドフォン端子がないスマホが出てきた」と語る。
音声コントロールもトレンドのひとつだ。マレー氏は「Amazon EchoやGoogle Homeなどの製品が登場しており、我々はこれらの需要に対応していく」とコメント。音声コントロールのためにはこれまで以上にDSPの処理能力が求められると語った。
最後のトレンドは“ヒアラブル(hearables)”。「ヘッドフォン型でも単に身に付けるだけでなく、健康状況などを検出するインテリジェントなデバイスが増えてきている。さらにこれらのデバイスはケーブルレスで、今後製品サイズや処理性能への要求が高まっていく」(マレー氏)。
続いてクアルコムの新たな5つのプラットフォームが紹介された。最初に紹介されたのはBluetoothオーディオのプラットフォーム。クアルコムはプレミアムとエントリーレベルで製品分布を大別しており、「CSRA68100」はプレミアムセグメントに対応するBluetoothチップセットで、DSP×2、CPU×2を搭載し一方のCPUはBluetoothを処理、もう一方は機器メーカーが利用できる。
前世代の「CSR8675」はDSP×1、CPU×1の構成で、CSRA68100の処理能力は4倍向上。これまで以上に複雑なアルゴリズムを処理できる能力をもち、ボイスコントロールでより精密にキーワードを検出できるとのこと。
次に紹介されたのはUSB Type-CのオーディオSoC「WHS9420」「WHS9410」。上位モデルのWHS9420はハイレゾ(192kHz/24bit)およびノイズキャンセルに対応する。マレー氏は「業界のトレンドはモバイルの世界でヘッドフォン端子がなくなったこと。そしてUSB Type-Cが普及しつつある。このトレンドに対応するSoC」とコメント。
スマートオーディオプラットフォームはスマートスピーカー向けに開発されたもので、LinuxなどのOSをサポートする。マレー氏は「スマートオーディオにはスマートスピーカー、サウンドバー、ネットワークオーディオという3つのカテゴリーがある。3カテゴリーの製品はそれぞれまったく異なった部品構成だが、ボイスコントロール対応のサウンドバーなど製品の使い方が混ざってきている。この需要に対応するためボイスUIやキーワード検知、ノイズキャンセルなどの複数機能を統合した」と語る。
最後に紹介されたのはデジタルアンプテクノロジーである「DDFA」。デノンなどのメーカーに供給している既存モデルは2チップ構成だが、新たに発表されたDDFAはシングルチップ化。これにより製品設計の自由度が高まり、ハイエンドオーディオだけでなくさまざまな機器への搭載が可能となる。
マレー氏は「クアルコムはワイヤレスオーディオの分野で世界をリードしていく」と語り、今後もオーディオ関連技術に注力していく姿勢を示した。