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入り口は声に対する興味だった

小岩井ことりがDAWを始めた、いかにも声優らしい理由は?

2017年05月23日 17時00分更新

文● 貝塚 ヘアメイク●Mika Kikuchi(MKTUB’80) 取材協力 ●OM FACTORY

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 ネット上やラジオ等ではすでに完成度の高い楽曲を発表していることでも知られる小岩井ことりさん。その作曲過程を探った。

─作曲はどのように進めますか?

「だいたい歌詞とメロディーをある程度考えて、それをMIDIで打ち込みつつ、コードをつけたりしています。メロディーに合わせて、雰囲気はこんな感じかな~というのを固めていきつつ、参考の音源を聴いてみて、細かい音を真似してみたりとか。メロディーを思いついた時点から、ある程度の完成形が自分の中にあるんです。

 でも、技術班の自分が追いついてなくて、なかなか実現できないこともあったりして。『こういう風にしたい!』という願望を持っている小岩井さんがいるのに、それに対して技術班の自分みたいなのがいて(笑)。そっちが追いついてこないことも多いので、早く思いついたものを実現できるようになったらいいのになあ、って思っています」

─完成度の高い楽曲を公開しています。どのように作曲を身につけたのでしょう?

「そうですね……もともと家族と遊びで歌ってみたりとか、遊びで気持ちを歌にしながら話したりとか、そんなことをよくしていたんですよ。そのおかげでメロディーを思いつけるのかな、って思っていますね。DAWに触ったのは『Cubase』が初めてなんです。お姉ちゃんの使っていたエレクトーンをMTR(マルチ・トラック・レコーダー)で録音するように、PCに繋いで録音したり、曲のようなものを作っていたことはあったんですけど」

─どうやったら曲が思いつくのかって思う読者も多いはずです。

「きっと、みんな思いついてるんですよ! たとえば、曲って思いつくんですかね……フン、フン(鼻歌で「曲って思いつくんですかね」を即興でメロディーに)ってやって、これを打ち込んだらメロディーになるんですよ」

─ふだん聴いている音楽から着想を得たりもしますか?

「やっぱりアニメソングやアイドルソングが好きなんですよ!! 特にアイドルマスターシリーズの曲はよく聴いています。明るくて、元気をもらえます。だから、アニメソングに関われたら嬉しいですね。アニメソングやアイドルソングって、結局、ジャンルの幅が広くて、四つ打ち※もあれば、和風なイメージの曲もあれば、メタルもあったり。いろいろなジャンルが楽しめるのも魅力だと思うんですね」

※ダンス・ミュージックなどで、バスドラムなどを1小節に4回等間隔に打ち鳴らすリズムパターンを持つ楽曲。

DTM用にPCまで自作するこだわり性

─DTMをするっていうのも驚きですが、PC自作までしているとか

今使っているPCも、ご自身で週刊アスキーを見ながら組まれたとのこと。Core i7-4770K、16GBメモリーのタワーモデルだそう

「はい(笑)。遊ぶために詳しくなっていった部分が大きいですね。最初は『ネトゲがしたかった』んです。でも、手持ちのパソコンではスペックが足りなくて、インストールすらできなくて……。いろいろ調べて、こういうパーツがあるんだ! グラボやHDDやメモリーを足すとこういうことができるんだ! というのを発見しました。結果、だんだんと詳しくなっていって今に至る感じですね」

─パソコン関連の専門用語もどんどん出てきて驚きました。

「実はメイクやお洋服よりも、機材やDAWのプラグインに興味があるんですよ。女の子同士が集まると『あれが廃盤になったらしいよ?』なんて声が飛び込んでくることがよくあるんですが、まず最初に『機材のことかな?』と思っちゃう。本当は化粧品の話なんですけどね(笑)」

─DAWは、興味を持ちながらもなかなか手を出せない人が多いと思うんです。そういった方に向けて、何かひとことお願いします!

「うーん、そうですね……思っているより道具を揃えることは難しくないし、入門セットみたいなものでも事足りるし……。それこそ、ヤマハさんが販売しているSteinbergのインターフェースを買えば、Cubaseなんかが付属していますよね。『曲を作る』ということは必ず誰でもできると思うんですよ。ぜひ一度挑戦してみてほしいと思いますね。

 思い描いた曲を、自由に思った通りに作れるようになるまでにはいろんなハードルがあると思います。もちろん私も、そのハードルを超えたいと日々勉強している最中です。でも、曲を作ること自体は、誰でも必ずスタートできるはずです」

 声に対する強い興味からDAWの世界に入り込んだ小岩井ことりさん。「女性声優がDAW」ときいて思い浮かべるより、硬派なDAWに対する探究心を感じられた人も多いのではないだろうか。インタビューの最後には、DAWに対する想いを次のように話してくれた。

小岩井「『必要なもの』ですね。自分の夢を実現してくれるもの。声優になりたい、音楽に関わりたいという夢を叶えてくれていますし、夢を叶えてくれるパートナーです」

小岩井ことりさんオススメのDAW技は「サンプラートラック」

 Cubase Pro 9から導入された新機能。オーディオ素材を専用のトラックに読みこませると、サンプリング素材として扱うことができる専用のトラック。トラックにDJ的なエフェクトを気軽に追加したり、手間のかかる波形編集やエフェクト処理をせずに、ユーザーのアイデアを実現できる。

小岩井ことり

 京都府出身の声優。代表作に『アイカツ!』大地ののや『のんのんびより りぴーと』の宮内れんげなど。DAWによる作曲活動でも知られており、2016年にはMIDI検定1級を取得している。

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