インピーダンススイッチは音色設定でも使える
―― ということは、スピーカーに接続したときは、インピーダンスの設定を変えると音も変わるということですか?
李 あれはパワーアンプがスピーカーキャビネットの特性や歪みの影響を受ける回路なんです。接続されるスピーカーとインピーダンスを合わせないと、規定通りのサウンドにならない。それでインピーダンススイッチを搭載しています。
―― ではキャビネットとの実際のインピーダンス調整は自動でやっているわけですか?
李 はい。設定を間違えると故障するようなものではないです。
―― するとインピーダンススイッチは、一種の音色設定スイッチとしても使えると。
李 キャビネットの特性を反映するので、ボリュームを上げていくと音も変化します。ちょっと試してみましょうか。
というわけでROCKをインピーダンス8ΩのBC112に接続し、4/8/16Ωの3段階あるインピーダンススイッチを切替えてもらった。16Ωだと音量が少し小さくなって歪みが薄くなる印象。4Ωだとかなり音が暴れてコード感も掴みにくい音になる。ボリュームを上げて得られる音圧感も含めて、やはり適正値の8Ωがベストと感じたが、試してみてよいと思えば、それで使うこともできるわけだ。
トーンノブ一発でもイケる秘密
―― 音色設定といえば、ROCKとACがトーンノブ一個なのはなぜですか?
江戸 ROCKとACはトーン一発で狙った音を出せる自信があったんです。それは別の試作で李が作っていたトーン一発のハードを試してみて、これはノブをどの位置に置いても使える音がするなと。そのツマミ一発で勝負する世界を、お客さんに提案してみたかったんです。
―― 買う側とすれば、トーンがノブ一個だけだと、ローパスフィルターだろうと思ってガッカリしちゃうんですけど。
江戸 そうそう、単にハイが増減しているだけじゃないのコレ? っていうことですよね。それがいままでのアンプだったと思うんですけど、このトーンはどの場所にあっても、その場所なりの使える音が出るようになっているんです。
李 ちょっと回してみましょうか。
―― あ、ホントだ。単なるローパスじゃないですね。このトーンの動きはどうなっているんですか?
李 こちらが意図するサウンドや、弾き手が欲しいだろうと思うサウンドに対して、キャビの違いや置かれ方による違いを補正できるようにしています。
―― つまり値は連続的に変わるけど、それぞれに使いどころがあるプリセットスイッチみたいな?
李 そんな感じですね。自分自身もギターを弾いていて感じていることを、いろんな条件を想定して決めています。たとえば、アンプの中にはマーシャルのトレブルだけを抜き出したようなトーンコントロールもあるんですが、現場でそのトレブルの変化が欲しいわけじゃないよね、というのをずっと思っていたんです。それをこのトーンに託している感じですね。
―― 触れるところが少なくて簡単な作りに見えますけど、実際にはいろんなところが細かく実用的にできているわけですね。
李 そうです。
(次回は一見大人しそうに見えるCLEANがすごいというお話です)
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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