通勤や通学で欠かせない屋外での音楽再生環境のグレードアップをサポートする本特集。第3回では、ポータブルヘッドフォンアンプ(ポタアン)を紹介する。
iPhoneでハイレゾ品質の音楽を楽しむならポタアンは必須
ポタアンは、スマホや携帯プレーヤーの高音質化を図るアイテムで、基本的にはヘッドフォン/イヤフォンを駆動するためのアンプだ。
特にスマホは充電なしで長時間使えることが重要なので、ヘッドフォンを鳴らすためのアンプ回路は省電力化のため決してハイパワーではない。もちろん、一般的なヘッドフォン/イヤフォンを駆動するための実用的な出力は十分確保できているが、ハイインピーダンスのヘッドフォンなどを鳴らすには力不足となりやすい。
また、高音質で再生するための作り込みという点でも大きな差が出る。今やスマホはノートPCと変わらない高性能なCPUを持つので、それらが発する高周波ノイズはオーディオ信号に影響を与えやすい。
ポタアンはボディーが別で電源も専用に持つので、それだけでもノイズ対策には有利だ。加えて、スマホでは使用するのが難しい音質に優れたオペアンプをはじめとするオーディオ部品を採用できる。
そんなポタアンには、大きく分けて2つの種類がある。アナログ接続タイプとデジタル接続タイプだ。アナログ接続タイプは、ヘッドフォンを駆動するアンプだけを独立させたもの。スマホなどのヘッドフォン出力とポタアンのヘッドフォン入力をアナログ接続して使用する。
このタイプのメリットは、多くのモデルが採用するヘッドフォン出力で接続できるので、機器を選ばないこと。ただし、ヘッドフォン出力を持たないiPhone 7/7 Plusは使用できない(付属の変換アダプターを使えば接続/再生は可能)。
もうひとつは、デジタル接続タイプ。アンプのほかにDACチップも備えており、信号の劣化に強いデジタル接続の方が音質的にも有利と言える。iPhone 7/7 Plusはこちらを選ぶ方がいいだろう。
そして、iPhoneでハイレゾ音源を(ダウンコンバートすることなく)ハイレゾ品質で再生するためにはポタアンが必須となるので、高音質で音楽を楽しみたいならぜひ購入しておきたい。
アナログ接続タイプで使いやすい
FiiO「A5」
アナログ接続タイプのFiiO「A5」(実売価格 1万8000円前後、販売はオヤイデ電気)は、iPhone 7のサイズに近い薄型ボディーで、スマホと重ねて使えるので持ち歩きにも便利なモデルだ(結束用のゴムバンドが4本付属)。
オペアンプとバッファーアンプは、新日本無線の「MUSES02」とTIの「LME49600」の組み合わせを採用している。使用するパーツを見直して、歪み率を低下させつつ、出力も向上している。
駆動時間は約13時間。サイズ/重量は幅65.5×奥行き14.5×高さ124mm/168gだ。
アナログ接続タイプなのでiPhone 7/7 Plus以外のモデルならほぼすべて使えるし、比較的軽量なので使い勝手も良好だ。
付属品には、11cmの接続用ステレオミニケーブルと充電用USBケーブル、結束用のシリコンゴムバンド、シリコンパッド、ソフトポートが揃っており、必要なものはすべて付属しているのも安心だ。
くっきりと聴きやすいバランスの音
音質的にはくっきりとしたメリハリ型のサウンドで、適度に音を立たせつつも派手さを抑えたバランスのいい音質だ。
クラシックのオーケストラでは、個々の音の粒立ちはほどほどだが、自然な音色でメインの旋律を中心に力強い音で再現する。
低音の力感も十分で、コントラバスのような低音楽器の低く伸びるような音もしっかりと鳴らせる。低音についてはBASSスイッチの切り替えでより量感が増す。オーケストラの雄大なスケール感を味わうならばOnで使うといい。
チェロをメインとしたジャズでは、チェロの帯域である中低域がしっかりと出て、ゆったりとした鳴り方で弾むようなノリの良さもよく伝わる。チェロの胴の厚みも感じられる充実感のある音だ。
ポップスのボーカル曲でも、可愛らしい声の質感もきちんと出るし、溌剌とした歌声を鮮明な音で楽しめる。もう少し細部を細やかに再現できるとなおいいが、表情の豊かさは十分に感じられる。
難しいことを考えずに使えるアナログ接続タイプだし、バランスの良い音はジャンルも選ばずにイキの良い音を楽しめるので、初めてのポタアンとしてもおすすめだ。
この連載の記事
-
第2回
AV
ハイレゾ音源を高音質で聴ける1~2万円のヘッドフォン/イヤフォンはコレだ! -
第1回
AV
iPhoneの音楽をいい音で聴ける1万円台ヘッドフォン/イヤフォンを買う! -
iPhone
iPhone&スマホのオーディオを高音質化する! - この連載の一覧へ