「オン・ザ・レール感」ってなんだろう?
ほかの媒体のNSXのレビュー記事を読んでいると「オン・ザ・レール感」という言葉がよく出てくる。正直、ピンとこなかった。1.7トンを超える車重のハイパワー車でオン・ザ・レールと言われても……と思っていたのだ。だが、実際に乗ってみると納得。首都高の急なカーブも、それほど減速せずにすーっと曲がれてしまった。まさに、レールの上を走っている感覚。車重を感じさせないくらいスパスパと曲がってくれる。筆者のクルマ(プジョー 207)でちょっとしたオーバースピードでカーブに侵入してしまうと、路面からタイヤが剥がれるかも……とドキドキしてしまうが、NSXに乗っているとそんな感覚はまったくない。
新型NSXの最大のポイントがSH-AWD(Super Handling All-Wheel-Drive)。左右のモーターが前輪の駆動力を調整してくれるので、遠心力が働く場面でも曲がりやすくしてくれるのだ。このせいか、曲がるのがとても楽しいクルマだという印象を受けた。
一般道(下道)走行中はかなり見切りが悪い。車高が低いうえにシートポジションも低く、Mercedes-AMGほどではないが、フロントノーズもそこそこ長い。とくに横幅が1940mmもあるのと、ミラーが横に大きく出ているので、ちょっと狭い道を走るときの緊張感はハンパない。また、信号待ちや渋滞中などにバイクがすり抜けてくるのも心臓に悪い。ミラーにぶつかるなよ~! と祈りながらすり抜けを見守っていた。コンビニなどにも入ったが、入り口の段差は角度をつけて入らないと下を擦りそうだし、輪留めが使えないのでやや前に飛び出した状態で止めなければならず、横に運転が上手じゃなさそうな人が止めたりするとハラハラドキドキ。借り物なので余計に気を遣ってしまう。やはり、気持ちよく走るにはワインディングか高速道路がベストだ。
ある程度速度が出せるようになると、印象はガラリと変わる。背中からエンジン音が聞こえるのはミッドシップレイアウトならではで、気分の高揚に一役買っている。「その気にさせる」というやつだ。パドルシフトを使って、自分で変速することもできるので、AT限定の人でもMTの楽しさを味わえる。アクセルを踏み込んでいけば、ターボならではの強力な加速も堪能できる。一般道は緊張感があるが、渋滞のない高速道路ならNSXの懐の深さを実感できるだろう。
一般道と高速道路でもこれだけ楽しいんだから、サーキットで走ればもっと楽しいに違いない。
ちょっと気になった部分は2つあって、燃費が意外と悪いことと、ミラーが電動じゃない点。まず、燃費だが公式サイトでは「12.4km/L」になっているが、これはQUIETモードだろう。SPORT、さらにSPORT+にするとどんどんガソリンが減っていく。今回、SPORTモードを中心に走ったが6km/L前後だった。そして、ミラー。角度を変えるのは車内のスイッチでできるのだが、ミラーを折りたたむのが手動というのは、2000万越えのクルマなのに……と思ってしまった。筆者のプジョー 207ですら自動なのに。駐車するとき、NSXはミラーが大きいのでまわりがぶつからないようにミラーを折りたたんだほうがいいのだが、これを毎回右と左でやらないといけないのは厳しい。しかも、ちょっと力を入れないといけないので、またまた緊張してしまう。このクルマを買える人は燃費を気にしないし、ミラーもたたまないと思うが。
前モデルも日本車で最高値だったNSX。今回もポルシェの911 ターボSに迫る値段だが、ハイブリッドシステム、専用設計のボディーと職人が組んでいるエンジン、スペシャリストのエンジニアがいる特別なディーラーじゃないとメンテナンスできないなど、セレブでないと買えないようなプレミアム感があるので2370万円という価格は伊達ではなさそうだ。買えないけど。
余談:MSXとNSXの関係性
アスキーには脈々と受け継がれている都市伝説があり、そのひとつがMSXとNSXの関係性だ。その昔、アスキーからリリースされたパソコンといえばMSXだが、商標登録する際にMSXとNSXを両方取っており、HONDAにNSXの商標を譲ったかわりにNSXを1台もらった、というのが巷に流れている噂話。眉唾モノだが、当時のアスキーの地下駐車場には誰がオーナーかわからないがNSXが止まっていたという。この当時をハッキリと覚えている編集者はおらず、HONDA側にも当時の担当者がいるとは思えないが、取材してみたいものだ。ちなみに、MSXマガジン(アスキー刊)という雑誌で、「MSX turbo R vs HONDA NSX」というバカ企画が行なわれたこともあり、多少なりともHONDAと繋がりがあったと思われる。筆者も数年前に「Xperia Z3 vs BMW Z3」というバカ記事を担当しており(関連記事)、アスキーのブレなさに驚いている。
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