[短期集中連載]AIとディープラーニングが起こす"知能革命" 第2回
「もしドラ」仕掛け人・加藤貞顕×人工知能プログラマー清水亮 徹底対談
「創作する人工知能」を誕生させるために必要な条件
2017年02月07日 09時00分更新
人工知能に映画を理解させる方法を世界中の天才大学生たちが競っている
清水 クリエイティブ関連では、最近またすごいAI関連の論文が出てきちゃって。映画の映像とそのプロットを見せるだけで、質問に答える人工知能っていうのが今配布されてるんですよ。「MovieQA」っていうんですけど。
加藤 質問というと、映画の中身に対する?
清水 そうそう。たとえば「マトリックスとは何か?」って聞くと「マトリックスとは架空のコンピューター上につくられた世界である」とか。
加藤 え、それすごくないですか? それができるんだったら文章の中身を理解して解説できるんじゃ……。
清水 ただ、まだ精度が低い。まあ、精度が低いと言っても70%なんですけど。
加藤 それ、ヘタな人間よりは理解度が高いかもしれませんよね。へぇ、もう動かしてるんですか。(Macの画面を見ながら)あ、GitHubに上がってるんだ。
清水 まあでもこれは、どちらかというと今はチャレンジですね。みんなでこれ試してみようね、みたいな感じで。実行するコードはあるよと。学習データセットも多分公開されているんでしょうね。
加藤 (GitHubを見ながら)ああ、これ音声は結局文字に起こして、LSTMとWord2Vecを使って……なるほどね、そういうことをやってるんだ。
清水 MovieQAのリーダーズボードがあって、これで今、全世界が戦ってるんですよ。どこまで精度が高められるかって。
加藤 なるほど。こうやってみんなで競争してあっという間に高まっていくんですね。
清水 面白いのは、字幕を読ませただけだと36%までしか正解率が上がらない。これが世界1位。
加藤 あ、これ、いろんな部門で競争しているんですね?
清水 そうそう。
加藤 それはすごい。
清水 シナリオだけ読ませても、やっぱり30何%までしか正解率は上がらないんです。だけど、プロットシノプシス(Plot Synopses、いわゆる箱書き)だと75%までいけるとか。今1位のシンガポール大学はこういう技術でやってて、一方でロンドンはこれ使ってるとか、わかる。面白いでしょ。
加藤 ヤバいですね。これ、動画とか絵はまだ使ってないんですか?
清水 いや、動画もデータとしては公開されていて使ってもいいんだけど、映像と音だけだったらまだ25%ぐらい。でも面白いでしょ、このチャレンジは。あとはムービービデオ+サブタイトル、つまり映像と字幕だと23%とか。
加藤 意外と(映像と字幕だけでは)全然駄目なんだ。
清水 でも大体23パーが最低だから、頑張り次第じゃないですか? チャレンジが始まったことが、とにかく大事なんですよ。
加藤 いや、そうですね。なんか数年で相当な水準にいきそうですね。
清水 いくでしょうね。
加藤 なるほどね。日本語のメディアサイトの文章の内容評価なんて、これと比べたらかなり簡単なんじゃないですか。
――――
人工知能をめぐる最新事情は、なぜか人をワクワクさせますよね。次回はいよいよミリオンセラー編集者・加藤貞顕さんの興味の本題に入っていきます。人工知能で弟子は作れるのか? そして人工知能プログラミングは清水さんが言うほど「簡単」なのか?続きます!
出演者の申し入れにより記事の一部修正しました(2017年2月7日)
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