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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第382回

業界に痕跡を残して消えたメーカー 特許問題で深い爪跡を残すOPTi

2016年11月14日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 前回のCHIPS and Technologiesは、搭載マザーやビデオカードが日本にほとんど入ってこなかったため知らない人が多いだろうが、今回紹介するOPTiは秋葉原で結構売られていたので、古い自作ユーザーならまだ記憶に残っていれるかもしれない。

486向けチップセットで
C&Tを出し抜く

 OPTi Inc.は1989年にカリフォルニア州のミルピタスで創業された。前回のC&Tがあったノースサンノゼの東隣と思えばいい。創業者はJerry Chang氏、Kenny Liu氏、Fong-Lu Lin氏の3人。当初はKenny Liu氏が取締役会議長兼最高経営責任者を1994年まで務めた。

 ちなみにその後Stephen Dukker氏(*1)が1995年~1997年に最高経営責任者を務め、その後Chang氏が取締役会議長兼最高経営責任者になっている。

 では残るLiu氏はというと、これは明確な資料がないのだが、最高技術責任者あるいは開発部隊の長だったようだ。というのはOPTiの名前で出されているさまざまな特許(*2)の出願における発明者の筆頭にLiu氏が名前を連ねているからである。余談だが現在もこうした特許の一部が重要な商売のタネになっているのは、なんと評したものか。

 ちなみに創業者には入っていないのだが、OPTi立ち上げ時期に参加して1994年まで営業部専務を務め、その後1996年までは最高執行責任者を務めたのがRaj Jaswa氏(現在はインド工科大学ボンベイ校教授)であるが、彼は前職がインテルとC&Tであった。要するにインテルやC&Tのチップセットビジネスを熟知していた人間が営業のトップにいたわけだ。

 同社は明確にPC向けチップセットやさまざまな製品を投入する。1992年までの製品に関してはもう製品リストすら見つからない(後述の例を除く)のだが、1993年には386/486向けのチップセットである83C206EQを投入する。

 ただこれは厳密には486ではなく「なんちゃって486」向けである。要するにCyrix 486SLCなどの「バスは386互換だが性能は486相当」というCPUもサポートしたという話で、実質386向けチップセットである。

 ちなみにこの82C806という型番は、もともとはC&TのNEAT(引き篭もりの方ではなく、“New Enhanced AT”の略)チップセットに使われていた型番である。C&Tはこれを3チップ構成としたが、OPTiのそれは2チップ構成で、明らかにケンカを売っていたとしか思えないのだが、この結果として両社が揉めたのかどうかはよくわからない。

 ただOPTiは386よりもむしろこれに続く486の方に注力した。同じ1993年には82C802GというコアロジックやVL-Bus/PCI Bridgeの82C832、さらにはShadow RAMをサポートする機能拡張版の82C495XLという486デスクトップ向けチップセット、そして82C463というモバイル向けチップセットをリリースする。

OPTiのデータシートより抜粋した「82C802G」の構成図。当時はチップセットといってもノースブリッジ機能の一部だけで、まだサウスブリッジ機能などは集約されていなかった。またISAバスは原則CPUのバスがそのまま出ているだけなので、バスI/Fらしいものもなかった

 この86C463は、翌年にはさらに機能を増やした82C465MV/MVA/MVBに進化する。

82C465MV/MVA/MVB。ノート向けといっても基本的には同じなのだが、省電力のためにサポートする電圧が増え、省電力機能も増えている。さらに性能が下がることを補うためのローカルバッファや、LCDコントローラーを接続することを前提とするなどの違いがある

 C&Tは486向けチップセットの投入が遅れたこともあり、また台湾のチップセットベンダーはSiSこそすでに全世界への供給を始めていたものの、VIA Technologiesは台湾のマザーボードベンダーへの供給を先行しており、米国内でのシェアはまだないに等しかった。

 こうした事情もあり、OPTiはこの年にIBM、HP、Dell、Compaqに対してチップセットを供給するという、非常に成功した年になった。

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