IoTや田舎案件、地方DC、リモートオフィス、地球温暖化予想まで
四国中の濃い人が集まるクラウドお遍路はうどんに負けない歯ごたえ
2016年11月01日 07時00分更新
クラウド導入失敗譚とクラウド創生譚
「田舎エンジニアのクラウド導入記(失敗…そして成功へ)」と題したセッションで、クラウド導入のキーポイントについて語ってくれたのは、JAWS-UG 愛媛の加藤 貴宏さん。AWSを導入しようとして失敗した話、そこから得た学びを活かして、後にkintoneの導入に成功した話を披露してくれた。失敗談というのはなかなか発表しづらいものだが、失敗は学びの宝庫だ。失敗経験を活かして成功するところまで語られた加藤さんのセッションは、これからクラウド導入を進めようと思っているエンジニアにとって役立つ内容が盛りだくさんだった。いずれ別稿としてまとめたいと思う。
失敗譚に続いたのは、四国にクラウドを作る創生譚。STNetの森本 哲史さんの「Made in 四国なクラウドサービスに取り組む理由」だ。
「クラウドサービスはパブリックでなければメリットを大きく享受できません。しかし四国の企業にとってパブリッククラウドの利用には大きなハードルがあります。それは、距離です」(森本さん)
クラウドに長く携わっているエンジニアは、サーバーがどこにあろうと大きな問題ではないと体験的にわかっている。実際、最近ではサーバーの仮想化が当たり前になっており、データセンターに駆けつけたところで結局はネットワーク経由でメンテナンスすることになる。しかし経験的に理解できていない人にとって、手の届かない場所でサーバーを運用するのは遠距離恋愛のように感じるものだと森本さんは言う。そしてその不安が、都会と地方とでクラウドサービス普及の格差を生んでいると森本さんは言う。
「東京の企業は東京のデータセンターを使っています。クラウドに移行しても、東京リージョンを使えます。これなら、データセンターを利用していたときと同じくらいの心理的距離感で、パブリッククラウドを使えるでしょう。四国にもデータセンターはありますが、大手パブリッククラウドの四国リージョンというものはありません」(森本さん)
なければ、作ってしまえばいい。それが、森本さんたちSTNetが出した結論だ。同社は香川県に自社データセンターを持っており、その機能性に自信を持っていた。そうして生まれたのが、「STクラウドFLEX」だ。うどん県らしく「うどんはセルフ、クラウドもセルフ」というキャッチコピーがつけられている。とにかく敷居を低く、わかりやすくをモットーに設計され、ほとんどの機能をGUIで提供する。距離による心理的障壁を取り除いてパブリッククラウドを四国に根付かせることができれば、AWSのようなグローバル標準のクラウドサービスを使う心理的ハードルも下がることだろう。地域に密着したSTNetの今後の活動に期待したい。
四国のリモートワークで注目される神山の話も披露
ところで、四国には徳島県名西郡神山町という町がある。リモートオフィスの誘致に力を入れており、名前を聞いたことのある人は多いだろう。その神山町で実際にリモートワークをしているSansan株式会社の辰濱 健一さんが登壇し、「地方のサテライトオフィスで働くエンジニアの仕事と地域との関わり」と題して、神山町におけるリモートワークの実態について語ってくれた。
リモートワークの話といえば、どのようなツールを使ってコミュニケーションを図っているかなどの話が多く聞かれるが、辰濱さんの話では神山町に住み、仕事以外のことを通して地域にどう関わっているかという話題が中心になっていた。
「楽器が好きで、エレクトーンやトランペットを趣味で演奏しています。徳島に来てからは阿波踊りの笛も吹くようになりました。今は企業連と掛け持ちで、町内の連にも加入しています。地元小学校の運動会でも阿波踊りを教えたり、鳴り物のお手伝いをしたりしていて、こうしたことが地域文化の活性化につながっていくんだなと感じています」(辰濱さん)
トランペットの方は、町内で管楽器をやっていた人たちとアンサンブルを結成し、毎週地元の公民館で練習、町内イベントで演奏を披露しているとのこと。地元の方を招いて自主コンサートを開催したこともある。地元の人が初めて生演奏に触れ楽器に興味を持つきっかけを与えたり、飲食店からのお誘いもあるなど、趣味を通じた地域交流は深まっているとのこと。
「サテライトオフィスで働いて、好きなように遊んでいるようでも、結果的に地域のためになっていることがあったんだなと今は思っています」(辰濱さん)
そう語ったのち、辰濱さんは1枚のスライドを提示した。「10<10,000」「1/10>1/10,1000」とだけ書かれたスライドだ。これは、「10人の力よりも1万人の力の方が大きい。しかし10人しかいない地域における1人の影響力は、1万人いる地域における1人の影響力よりも大きい」という意味だ。
「地方創生は、まず参加することから。私なんかが、と思うようなことでも大丈夫!」(辰濱さん)
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