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ユーザーインタビューとペルソナで課題を探る

2016年10月06日 11時00分更新

文●UXデザイナー 瀧知惠美/ヤフー株式会社

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ユーザーインタビューを業務で活用する場合、わからないこと、うまくいかないことが多々あります。このような悩みの解決をサポートするために、実践にあたって気をつけるべき細かなポイントを、実施プロセスに沿って紹介します。第3回では、ユーザーインタビュー実施後の活用事例をまとめました。

ユーザーインタビュー結果からユーザー行動の傾向を分析

Yahoo!ショッピングでは、ユーザーインタビューの実施と並行しながら結果を分析したところ、購買時におけるユーザー行動や課題に対し、複数の人から共通する発言があることがわかりました。今回は、練習と本番を合わせ13人でユーザーインタビューを実施しました。

ユーザーインタビュー実施後の手順は下記のようになります。

まず、インタビュー対象者ごとに感情が動いていそうな発言箇所をピックアップしました。コスメ用品を実店舗でもECサイトでも購入している人(ターゲットユーザー)とコスメ用品をほぼECサイトのみで購入している人(エクストリームユーザー)のユーザー行動を分析すると、次の傾向が浮かびあがりました。

表1:ユーザー行動の傾向(一部)

ターゲットユーザー エクストリームユーザー
  • ECサイトでは基礎化粧品、実店舗ではコスメ用品を購入と、商品ジャンルによって購入方法が異なる
  • 新しい基礎化粧品を購入するときは、実店舗でサンプルをもらい、試してみて自分に合うとわかったら、ECサイトで繰り返し購入する
  • 定期的に同じ商品を購入しているユーザーは、注文履歴から以前購入した商品を探したり、検索して同じ商品を探したりしている
  • すべてのコスメ用品をECサイトで購入している
  • 定期的に購入する日用品と一緒にECサイトでコスメ用品を購入している
  • コスメ用品は、一度自分に合うものを見つけると、同じ商品を一定期間使い続ける

エクストリームユーザーにもユーザーインタビューをする理由は、第2回でも触れましたが、ターゲットユーザーの課題を解決するヒントが得られるためです。今回のインタビューでは、ターゲットユーザーとエクストリームユーザーの購買時における行動を別々に分析することで、それぞれの特徴が明確になり、ターゲットユーザーの課題やニーズを導き出す材料になりました。

チームがユーザー視点で取り組むためにペルソナを活用

インタビュー実施後は、ユーザーインタビューの結果を分析し、表1のようにユーザー行動の傾向を整理しました。ここまでは、ターゲットユーザーとエクストリームユーザーをそれぞれ見てきましたが、以降はターゲットユーザーの分析を進めます。

次に、ユーザーインタビューで得たユーザー行動の傾向から課題を分析し、改善案の検討に入ります。今回は、ユーザーインタビューの実施経験があるメンバーが少なかったこともあり、簡単なペルソナを作成することにしました。

ペルソナを作成するメリットは、主に下記の2点です。

  • プロジェクトメンバー内でターゲットユーザーの思考、行動、課題の特徴について認識を合わせやすくなる
  • プロジェクトメンバーがユーザー視点でユーザーの課題や改善案を考えやすくなる

ペルソナ作成の準備

今回は、インタビューの内容とアクセスログデータを見てわかったことをもとにして、ペルソナを作成しました。

ペルソナを作成する前に、作成に必要な準備を2つ実施しました。

  1. インタビュー結果からユーザー行動の傾向を整理(表1参照)
  2. アクセスログデータをみて、インタビュー結果からわかった特徴的な行動をするユーザーがどのくらいいるのか確認
  3. →コスメ用品を定期的に購入する人は、アクセスログから30〜40歳代に多いことと、Yahoo! JAPAN ID情報から主婦に多いことがわかりました。

このように、ユーザー行動の傾向を明確にし、データによる裏付けをとってからペルソナを作成しました。

作成したペルソナ

  • (思考、感情)日用品の買い物は、義務的なタスクだと思っている
  • (思考、感情)繰り返し購入するものは、インターネットで購入した方が安い、効率がいいと思っている
  • (性格)効率を重視する
  • (行動)購入する商品を選ぶのに時間をかけない

ペルソナは、人物像を具体的に描きますが、細かすぎる設定は、ターゲットユーザーを狭め過ぎかねません。そこで今回は、「ターゲットユーザーは主婦だよね」「時間がない人がターゲットだよね」程度にしました。

インタビューでは、主婦で子供がいる人は、忙しいから効率良く買い物を済ませたいというニーズがあることがわかっていました。そして、アクセスログから30〜40歳代の主婦が多いことがわかっていたので、「その年代の人たちは、幼い子供をもっていて忙しい主婦が多いのでは?」という仮説を立てました。

これで、課題の要因を分析するときに「主婦は忙しいから、ちょっとした空き時間にネットショッピングで買えるものがあれば、素早く買い物を済ませたいのでは?」と、ブレのない意見を出せました。

フォーマットを穴埋めすることだけを考えてペルソナを作成すると、根拠のない「思いつき」で決めてしまいかねません。ユーザーインタビューで得た事実から無理なく推測できる範囲でペルソナを作成することが重要です。

課題、ユーザーニーズ分析にペルソナを活用

ペルソナを作成してターゲットユーザーの人物像が明確になったので、ターゲットユーザーの課題とニーズの分析に取り掛かりました。ユーザーの行動や思考の特徴についてチーム内で共通認識ができていると、ユーザーが抱えている重要な課題は何か、ユーザーのニーズで重要なことは何か、などをまとめやすくなります。

チーム内で議論した「解決すべきユーザーの課題」は、インタビューからわかったターゲットユーザー層がとる行動の特徴「コスメ用品の定期購入」に注目して考え、最終的に課題を1つにまとめました。

ユーザーの行動分析から導き出した課題

行動の傾向(コスメの定期購入) 課題
定期的に同じ商品を購入しているユーザーは、注文履歴から以前購入した商品を探したり、検索して同じ商品を探したりしている。 ユーザーは普段よく購入する商品の購入に手間がかかってしまっている。

購買行動の傾向と課題からユーザーニーズを推測

課題をまとめたら、「コスメ用品を定期購入」時のユーザーの気持ちを推測し、ユーザーがどのような購入体験をしたいと思っているか考えました。ここでペルソナを活用して考え、繰り返し購入する商品は効率よく購入したいと思っているはずだと推測し、「ユーザーは普段よく購入する商品を素早く購入したいと思っている」というユーザーニーズを導き出しました。これを最初のニーズの仮説として次の段階へ進みました。

導き出したユーザーニーズを基に、次はカスタマージャーニーマップを活用した課題の要因分析へつなげていきます。ただし、ここで導き出したユーザーニーズもあくまで仮説であることを忘れずに、次の改善案検討の段階へ進むことが重要です。次回最終回では、改善案を導き出すまでの考え方、カスタマージャーニーマップを活用するコツを紹介します。

ユーザーの生の声からの発見

インタビュー結果の分析で見えてきたユーザー行動の傾向や課題は、既に知っていて当たり前と思うこともあるかもしれません。それでも、ユーザーインタビューによって実際のターゲットユーザーに話を聞いてみないと、ユーザーの考えていることは、プロジェクトメンバーの思い込みであることも多々あります。ユーザーインタビューからユーザーニーズ分析まで整理してみると、ユーザーがそのサービスを利用する一連の行動の中で、どの行動が重要なのか気づいたり、無意識の行動の意味を再認識したりできます。

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