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スペシャルトーク@プログラミング+ 第2回

「”クール IT”でプログラマーのイメージ改善せよ」

Ruby作者まつもとゆきひろ氏2万字インタビュー(後篇)

2016年09月19日 19時00分更新

文● 角川アスキー総研

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プログラミングは二極分化がすすんでいる

──U-22プログラミング・コンテストの審査をしてらっしゃるとお聞きしたのですが、いまの若い子の中にもやはり凄い子はいますよね? 私も、パソコン甲子園の審査員やっていますけど、優秀でしょう。

まつもと「何年かに1度は言語を作って持ってくる子もいますよ。中には結構できのいいものもありびっくりします。僕の高校時代は本を読むだけにとどまっていましたが、実際に作っているわけですから少なくとも僕のことは超えているわけですよ」

──そういうとき、どういった言葉を投げかけるんですか?

まつもと「いやもう《お前は俺よりすごいから頑張れ!》と(笑)。なんていうか、いまプログラミングは二極分化が進んでいる思います。インターネットがあるので敷居自体はすごく下がっているんですよね。わからないことがあったらすぐに調べられるし、オープンソースを引っ張ってくることもできるわけです。でも、プログラミングをしなくてもいい環境下にあるからほとんどの人はしない。しかし、その中でもプログラミングに興味があるという人は少なからず存在して、そのひとたちは昔の人には届かなかった領域まで行けるんです。僕の母校でも、大学入学時にプログラミング経験がある新入生の割合は昔に比べても下がっていると言っていました」

──2年ほど前《スマホのアプリを作ってみたいですか?》という調査をしたのですが、20代男性では3割くらいいたんですよ。ふだんから馴染んでいるものですからね。でも実際に本屋で本を買って始めてみたらスマホアプリって意外に難しいので挫折をしてしまったという人が非常に多かった。あるいはどうやって始めたらいいか分からない。30年前にMSXやPC-8801が宣伝されていた時代よりいまは始めにくいんだと思います。そういった、いまから始める人に向けたアドバイスをお願いします。

まつもと「スマホアプリって難しいんですか? 知らなかったです」

──ひとりで始めるのはまず無理では?

まつもと「なんていうか、それはツール提供側の罪ですよね。プログラミングの楽しさは、自分で書いたプログラムが動かせたという達成感にあると思うので、それを感じるために敷居を下げる事が必要なんじゃないかと思います。子供の教育にも同じ事が言えますね。簡単な事でも繰り返せば知識も広がるし技能も上がる。モチベーションを積み上げる事が大事です」

──慶応SFCで、プログラミングはコピペですべてやっているという学生がいるらしいんですよ。想像しにくいと思いますけど、それを家庭教師している高校生にやらせて、それで小遣い稼ぎもしている。要するに筋道だって学習すべきなのか、とにかくやってみた中で覚えていくのか、いっそコピペでもいいのか。

まつもと「体系的に覚える必要はあまりないんじゃないかな。きっちり体系的に学ぶっていうのは教える側の自己満足で、聞く方には関係ないですからね。英語の学習指導要領に従わないと英語が話せないかというとそうじゃないですからね。ただ、著作権的な話を置いておくにしても、なにかプログラムに問題があった時にはいずれ自分で直す事が必要になってくるので、中身の理解なしにコピペだけでやっていくのはきついはずですけどね」


 

(次ページ、「“クールジャパン”よりも“クールIT”を!」に続く)

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