いよいよ、AMDの次世代CPUアーキテクチャー“Zen”を採用する初のデスクトップCPU“Summit Ridge”(サミット・リッジ、開発コードネーム)が、市場投入に向けてカウントダウン段階に入った。
AMDは、Intel Developer Forum 2016にあわせ、現地時間の8月17日に記者向け説明会を開催し、Zenアーキテクチャーの概要と製品デモを披露、Zenシリーズの開発が順調に進んでいることをアピールした。
同社を率いるLisa Su社長兼CEOは、AMDは、2016年に入って第7世代APU“Bristol Ridge”(ブリストル・リッジ、開発コードネーム)と新アーキテクチャーGPU“Polaris”(ポラリス、開発コードネーム)を投入。さらに新しいカスタムSoC契約の締結、中国において2つの共同開発案件のスタートなどのビジネス成果を得てきた。
しかし、「今年最大のトピックは、まだアナウンスされていない」として、Zenこそが今年最大のビジネス的成果になるものであり、AMDにとってはこの10年間で最高に競争力のある製品ラインナップと位置づける。
そのZenアーキテクチャーの概要については、同社で製品開発などを統括するMark Papermaster上級副社長兼CTOは、「スクラッチビルドで設計することで、クロックあたりの命令処理性能を大幅に引き上げるとともに、14mm FinFETプロセスの採用などにより省電力性を高め、ファンレスの2-in-1デバイスからデータセンター向けの高性能CPUを展開できる柔軟性を実現した」と説明。
また、キャッシュ階層も新しくし、コア間でデータを共有する8MBのL3キャッシュ、各コアに命令とデータ処理で共有する512KB L2キャッシュと、64KBのL1命令キャッシュと32KBのL1データキャッシュを搭載。キャッシュとコア間は、最大5倍の転送帯域を実現することで、効率的かつ高スループット処理を実現する。
省電力効率を高めるための工夫としては、14nm FinFETプロセスの採用に加え、複数のレベルのクロック制御をよりアグレッシブにするとともに、L1キャッシュのライトバック対応、大きめのMicroOPキャッシュの採用により、クロックあたりの命令処理性能を、現行のExcavatorコアに比べて40%以上高める一方で、電力効率は同レベルに抑えていると言う。
さらにZenアーキテクチャーでは、インテルのHyperThreadingと同様の、1つのコアで2つのスレッド処理を可能にするSMT(Simultaneous Multi-Threading)をサポートする。
AMD初のZenアーキテクチャー採用CPUとなる“Summit Ridge”(サミット・リッジ)では、8つのコアを統合することで16スレッドの処理が可能となる。AMDは、このSummit Ridgeを年内に出荷を開始し、2017年初には、主要パートナーから搭載システムが市場に投入される見通しだ。
Summit Ridgeのプラットフォームには、第7世代APUの“Bristol Ridge”と共通のAM4プラットフォームを採用。同プラットフォームでは、DDR4メモリの対応に加え、SATA ExpressやNVMe対応が果たされるほか、USB 3.1 Gen.2もサポートすることが明らかにされた。ただし、同プラットフォーム用チップセットの詳細などについては明らかにされなかった。
AMDでは、さらにZenアーキテクチャーを2017年第2四半期にはサーバー市場に、2017年後半にはZenアーキテクチャーを採用する次世代APUを投入するとともに、組み込み市場向けにもZenアーキテクチャーを拡大していく意向を示す。
このうち、サーバー市場向け製品としては、36コア/64スレッドの2way SoCの“Naples”(ネープルス)と、その2wayプラットフォームも公開。収益性の高いサーバー・データセンター市場へ、積極的に製品展開を図っていく。なお、Zenアーキテクチャーの詳細については、8月21~23日にカリフォルニア州クパティーノで開催される「HotChip 28」で公開される予定だ。