麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第3回
いしだあゆみ ゴールデン☆ベストやポール・サイモンソロアルバムも!
麻倉特薦:いしだあゆみやポールサイモンをハイレゾで聴く
2016年07月19日 18時30分更新
評論家の麻倉怜士先生が、現在配信中の最新音源から、注目かつ高評価な楽曲をピックアップし、じっくり聞いて評価する本連載。
7月は昭和歌謡の名シンガーのベストアルバムや、ボストン・シンフォニーホールでのボストン交響楽団によるショスタコーヴィチ作品の音源などをピックアップ。「ハイレゾに興味はあるけど、どれを聴けばいいのかわからない」という読者の皆さん、まずは、解説を読んで興味の湧いた作品からはじめてみてはいかがでしょうか?
特にオススメの音源には「特選」「推薦」のエンブレムがついています。ぜひe-onkyoをチェックして、お気に入りの作品に出会ってみてください!
バロックな対話
Baroque DialoguesLa Sfera Musicale
かつて、DVD-ROMで販売されていた、大阪の高音質レーベルWAON RECORDSの代表作がDSD配信された。各国の古楽コンクールで実績を重ねるロンドンのアンサンブルLa Sfera Musicale (ソプラノ+カウンターテナー+チェロ+チェンバロ)の名唱を収録したアルバムだ。
天上的な、清新で精妙な歌唱が音場に拡散し、そして消えゆくまでの音の軌跡が、まるで見えるような細やかな音描写だ。バロック的な華麗で装飾的な歌い回しが、深くて透明な音場にめくるめく広がる。それはルネッサンス時代、石造りのヨーロッパの教会で聴いているイメージそのものだ。DSDの音場再現力を活かし、DSDならではの空気感の熱さと音の上質性、微小信号まで細やかに解像する豊穣な表現力が楽しめる。チェンバロ独奏も典雅でハイフ ィディリティ。2007年7月、高島市生涯学習センター・アイリッシュパーク・ガリバーホールで録音。
WAV:96kHz/24bit
FLAC:96kHz/24bit
DSF:2.8MHz/1bit
Waon Records、e-onkyo music
いしだあゆみの初のハイレゾ配信だ。1曲目「ブルー・ライト・ヨコハマ」から17曲目「夢でいいから」まで、ヒット曲が満載。作曲が筒美京平、中村泰士、井上忠夫、作詞が橋本淳、なかにし礼と制作陣が豪華。歌謡曲のハイレゾは、音調がきれいだけど薄いものが多いが、本作品は違う。濃密なのである。1曲目。「ブルー・ライト・ヨコハマ」冒頭のチェンバロの一撃から金管のオブリガートに至るパッセージはさすがハイレゾのリアリティ。いしだの声はブライトにして、重厚だ。小唄のような突き放し感のニュアンスがハイレゾで、さらに細やかに聴ける。弦の艶っぽいこと。ヴォーカル音像は大きく、押し出しの強いオーケストラとの競い合うよう。6曲目「あなたならどうする」は起伏の大きなヴォーカルの感情表現が聴き物。
WAV:96kHz/24bit
FLAC:96kHz/24bit
日本コロムビア、e-onkyo music
The Traveling Wilburys Collection[Remastered 2016]
The Traveling Wilburys
Traveling Wilburysは1988年〜1990年の2年間だけ活動した覆面バンドだ。メンバーはジョージ・ハリスン、ジェフ・リン(エレクトリック・ライト・オーケストラ)、ボブ・ディラン、トム・ペティ(トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ)、ロイ・オービソン。各個人の所属レコード会社が異なるので、全員が「ウィルベリー家兄弟」となり、実名を伏せたが、聴けば誰もがすぐにわかった。
1曲目、Handle With Care。親しみやすい定番コード進行と、ブライトでメローなヴォーカルと明瞭なコーラスが素敵なチューン。音はとてもクリヤーで、輪郭が明確、しっかりとした力感を付与したリマスタリングの成果だ。ヴォーカル、楽器のひとつひとつが音像的にくっきりと隈取りされ、音場内の存在感も際立つ。スチールギター、ハーモニカの存在感もリッチだ。25曲目のRunaway。死去したロイ・オービソンの代わりに、グループに加わる予定だったデル・シャノンのオリジナル曲だ。私のバンドCRITICSのライブでもフィナーレの曲。シャープで輪郭の立ったTraveling Wilburysの演奏には、ぐっと来るものがある。
FLAC:192kHz/24bit
Concord、e-onkyo music
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