まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第54回
本編も特典もスマホやタブレットで――Viewcast開始の背景をアニプレックス高橋ゆま氏に聞く
「もう金塊を付けるしかない」ほどのアニメBD特典合戦に革命
2016年07月25日 18時10分更新
パッケージに“800P超の絵コンテ”を付けられる冴えた方法
「僕らにはカツカレーしか残されてない」
そんな名言が飛び出した高橋祐馬氏へのインタビューから5年。彼が所属するアニプレックスは今年3月、アニメジャパンにて注目すべきサービスの発表を行なった。それが「Viewcast」だ。だ。
これまでは、購入したDVD・BDの本編・特典映像・副音声などは再生して観るよりほかなかったが、それがすべてモバイルデバイスで楽しめる。しかもパッケージ配送の関係上、同梱を見送られていた数百ページの資料が丸々見られるなどの特典をデータで提供するシステムまで備えている。
その狙いや背景にはアニメとメディアの関係の変化が垣間見える。さっそくキーマンの高橋氏にお話を伺った。
―― アスキーでのゆまさんへのインタビューは5年ぶりです。当時はまどマギが社会現象になっていたり、俺妹の日経全面広告が話題に上っていました。
高橋 配信・パッケージ・海外・ゲーム……たった5年ですが、マーケットは様変わりしましたね。たとえばあの頃、海外市場は下降傾向にあるのかなと思っていたのですが、今は、配信やイベントとの絡め手で非常に面白い状況になっています。
―― 今回Viewcastが始まった背景には、単に「本編が当たり前に公式にネットで見られるようになった」ということに留まらず、テレビ放送やパッケージ販売など、アニメの外側に拡がるメディアとの関係の変化も色濃く反映したものではないかと思っています。
高橋 まさにそうですね。ちなみにViewcastってもう試してみましたか?
本編はもちろん、特典も片っ端からモバイルで楽しめる
Viewcastの使い方をプチ解説!
Viewcastは、購入したパッケージの収録内容をスマートフォンやタブレットで楽しめる視聴サービス。対応作品は現在、アニメBD/DVDの『心が叫びたがってるんだ。』完全生産限定版および『暦物語』完全生産限定版、そして音楽BD/DVDの『LiSA MUSiC ViDEO CLiPS 2011-2015』の3作品。
さらに新規対応作品として、7月27日に発売する『傷物語〈I 鉄血篇〉』、7月より放送中の『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀(9月7日発売)』『クオリディア・コード(9月21日発売)』が決定しており、今後も対応作品は続々増えていくという。
利用方法は、まず「アニプレックス+」の会員アカウントを取得してViewcastの公式サイトからログイン。サイト内でパッケージに封入されている作品ごとのシリアルコードを入力。次に、対象作品の公式アプリ(Viewcast対応)をダウンロード。そしてアニプレックス+のアカウントでアプリ内でログインすればOK。
本編のほか特典映像・特典CD・ブックレットなどをスマホやタブレットで閲覧できる。ストリーミンングだけでなく、ダウンロード可能なところが画期的だ。
利用可能なハードウェアはAndroidないしiOS対応のスマホ・タブレット
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