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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 ― 第25回

アニプレックス 宣伝プロデューサー 高橋ゆま氏インタビュー(後編)

覇権アニメ請負人ゆま氏「僕らにはカツカレーしか残されてない」

2011年06月29日 09時00分更新

文● まつもとあつし

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 『劇場版 空の境界』『化物語』『俺妹』――ヒット作の陰に(も日向にも)この人あり。アニメを中心とした映像作品の製作・販売大手アニプレックスの宣伝プロデューサー「ゆま」こと、高橋祐馬氏だ。

 ゆま氏インタビュー前編(関連記事)では、「ゴミ屑みたいな社員」(本人談)から、ユーザーに最も接近して作品を紹介する宣伝マンとして名を馳せるまでの紆余曲折や、宣伝自体をエンタメコンテンツに昇華させる手法を伺った。

 後編では、ゆま氏が考えるアニメビジネスの過去・現在・未来、そして総合プロデューサーとして奔走したアニメコンテンツエキスポの開催決定までの事情など、笑いを交えてざっくばらんに語っていただく。

 なお、引き続きインタビュー中の名称は、ネット連載であることを考慮して、あえてニックネームの「ゆま」で統一している。ご了承いただきたい。

テレビアニメというマラソン

―― “テレビに頼らない”という意識って、持たれていたりしますか? つまり、これまではテレビで流すこと自体が最大の宣伝だった。ところが(私の考えでは)2005年前後からちょっと潮目が変わったのではと。アニメをテレビで普通に流しても、録画データさえ手許にあれば、パッケージを買う動機はかなり弱くなる。ですから“宣伝がコンテンツ”という考えにはすごく、なるほど感がありました。

テレビは依然強いものの、流せば勝ちという時代ではなくなったとゆま氏は語る。観続けてもらう仕掛け作りこそ宣伝マンの腕の見せ所だ

ゆま 「私見ではありますが、テレビアニメはなくならないと思っています。

 100年、200年経てばわからないですが、ここ5年、10年で家庭からテレビが消えることは、おそらくないかなと。テレビの影響力は、4マスのほかの媒体同様、昔と比べて多少下がっているとしても、依然強いメディアであることに変わりはないと思っています。

 けれども、テレビで流すことが、唯一無二の最大の宣伝という時代はもう……。今はお客さんが飽きちゃう。番組が始まる5分前にはトイレを済ませて、みたいな時代でもありませんし。

 そもそも毎週テレビ番組を見るという行為を、1クール13本完走することがまず大変ですよね。

 テレビで流れるという、ある種の普遍性は確実にあります。ですが、単純にテレビで流しているだけでは、お客さんの気持ちが続かない。1クールに数本は見られますが、全部見続けるのは無理ですし、多くの作品は気持ちがどっかで切れちゃう」

―― 1週間、間が空きますし。

ゆま 「4話目ぐらいで見逃したら最後、もういいや、となるのが一番怖いです。テレビを見てもらうための努力が、ここ数年間で重要になりましたね。『テレビに流してるだけでThat's all』という時代は終わったと思います。

―― 「完走」と仰いましたが、最近「BDマラソン」という表現をよく目にします。パッケージの定期購入行為をマラソンだと捉えると、宣伝は、一生懸命走っているランナー(お客さん)を応援すべく、沿道で旗を振ったり、給水所を作ったりする行為に近いのかもしれません。苦しいこともあるマラソン大会を楽しいお祭りとして盛り上げて、マラソン=祭りへの参加だと思ってもらうための仕掛け作りといいますか。

ゆま 「まさに、盛り上がってる感であったりとか、『会社として力入れてます!』というこちらの思いが、ネットを介して良くも悪くも伝わっちゃう時代かなという気はしています。そういう意味では仰った通り、僕のやっていることは想いを伝える旗振りなのかもしれませんね」

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