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9限目:情報を掘り起こす 「シャベル」のつくり方

2016年06月24日 11時45分更新

森田哲生/Rockaku

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イラスト:寺井麻美

大変だ! 書くことがなにもないぞ!?

どうも。ついにこの教室が書籍として発売されました。これが、おかげさまでけっこう売れてるみたいなんですよ。Amazonでは複数のカテゴリでランキング1位〜5位くらいをいったりきたりしています。本当にありがたいことです。

というわけで、この授業も「連載」としては今回が最終回となります。

さて、そう思うと非常に名残惜しいですが、今回はなんの話をしましょうかね。あれ? ネタがないですね。困りました。なにもしゃべることがありません。どうしま しょう。これはシャレになりませんね。

と、いうのは冗談ですが(すでに書籍をお読みいただいている方、こんな茶番をお許しください)、こういう「シャレにならない状況」って、案外、実際の仕事の中ではよく起こったりしませんか? 来月には新製品が出るのに詳細な情報が来ない。大量の商品写真だけが送られてきて「なんか書いといて」と言われる。開発部署にコンセプトや特徴についてのコメントを聞いても「特になし」としか言われない。

うーん。思い浮かべただけでもシャレになりませんね。思い当たる節がある人、おなかが痛くなってきますよね。あ、はい、トイレ? どうぞ、ささっと行ってきてください。

そんなわけで、今回は「書くことがなにもない!?」を、どう克服するかについてやっていきましょう。「コイツ、本当に書くことがないからこのテーマに行き当たったんだな……」と思ったあなた! あとで職員室に来ていただきましょうか。

書くことがなにもない!? を疑うべし!

とにかく、いままでの授業でやってきた「コピーの書き方」をいくら勉強しても、書くことがなかったらなにも書けませんよね。この「書くことがない」という状況を打破するたった1つの答え。それは「情報がない」という状況を疑うということ。本当は「ない」のではなく、「見えていない」ということがほとんどです。

じゃあ、どこにあるんだ? といえば、一次情報の持ち主のアタマのどこかに埋まっているんですよね。問題は、コピーを書くために必要な情報と、その一次情報の持ち主があなたに「知らせておこう」と思った情報にズレがあること。だから、このズレを埋めるために、一次情報の持ち主の脳内から有用な情報を掘り起こすための道具となる、いわばコピーを書くための「シャベル」のつくり方と、使い方についてお話をしていきましょう。

シャベル=しゃべらせる道具 
ヒアリングシートのつくり方

今回のテーマに選んだ「シャベル」とは、つまるところ、ヒアリングシートのこと。もうちょっとかみ砕くと「質問表」ですね。これは僕らがコピーを書くためにクライアントを取材する際に制作するツールで、ある種、コピーを書く仕事においてはキモになるものでもあります。なぜなら、コピーの素材となる「質の高い答え」を導き出すには、結局のところ、「質の高い問い」が必要不可欠だからです。

つまり、僕が「シャベル」と呼んでいるヒアリングシートは、「しゃべらせる道具」なんです。言うまでもなくダジャレです。ここ、無理にかけなくてもよかった気がしますが、かかりそうならかけていきます。なぜかって? おもしろかろうが、すべろうが、そのほうが印象に残るからです。

そんな痛々しい決意は置いておいて、さっそく、その基本メソッドについて、2 つのステップ改め、2 つのスコップで解説していきましょう(こうやって思いついたダジャレを言わないと気が済まない感じが老化なのかもしれません)。

【SCOOP-1】
欲しい「答え」を設定して「質問」を書き出す

まずは、すでに発売されている競合・類似商品に対して、どんな強みを打ち出すべきか。どこを攻めるべきか。「戦略」というほどではないですが、コピーを書くに当たって、最低限引き出しておきたい「答え」を想定していきましょう。例えば、商品の特徴をつかむためには最低限、「コンセプト」と「特徴」と「価格」くらいは知っておく必要があります。なので、まずは、その情報を引き出すために簡単な質問項目を書き出します。

でも、これだけだと、有用な答えは返ってきません。なぜなら、この「シャベル」は浅いところを広く掘ることしかできないからです。おそらく、このヒアリングシートだけだと、回答はこんな感じになります。

浅く広い質問は、相手を困惑させ、漠然とした答えしか生みません。これではコピーを書くヒントにはなり得ませんよね。このレベルの情報収集で「なにも出てこない特徴のない商品だから、オレのコピー力でドカンと売ってやるぜ!」みたいなことをしようとすると、「刺さらない」「個性がない」「インパクトがない」……と、ダメ出しを受けるコピーを書いてしまうことになります。

【SCOOP-2】
「質問」を具体的に分解する

というわけで、この「シャベル」をもっと深く掘れるかたちへ改良しなければなりません。カギになるのは「具体性」です。漠然としていた質問項目を、もう少し具体的に分解していくわけです。例えばこんな感じですね。

こうなってくれば、質問された相手も、ある程度、しゃべりやすくなるはず。「コンセプト」なんて、宣伝・広報的な都合で使う言葉なので、もっと具体性のある細かい質問をしていけばいいわけです。手間はかかりますが、結果的には効率は高まります。で、こんなふうに、答えも充実していくわけです。

「例としてつくったこの商品がいったいなんなのか?」という謎は深まりましたが、最初の質問よりも具体的で、コピーを書くための材料は一気に豊かになったと思います。

不親切な質問をしないための不等式

と、まあ、ヒアリングシートの基本的なつくり方を具体的な例で解説してきましたが、結局、「質の高い問い」って、コミュニケーションとして、答える側に対して親切であることが重要なんです。だから、相手がしゃべりやすくなる質問をつくるための「不等式」をご紹介します。

先ほど例に出した「コンセプト」も同じですが、「この商品のイメージは?」と尋ねて、コピー制作に役立つ情報を引き出すのは難しいでしょう。質問が浅くて広すぎます。答える側もうまく答えられない可能性が高いんです。ならば漠然とした「イメージ」よりも、価格や重さ、サイズ感、スペックなど、共有しやすい普遍的な「データ」を引き出したほうが、まだ手掛かりになる。さらに、その商品が生まれるまでのストーリーや、使用者の体験などの有機的な「エピソード」まで掘り当てられれば、より共感できて、かつユニークな答えが手に入る、というわけです。

ホントにヒントがないときに使う「3点ヒアリング」

それからもう1 つ、僕が下準備も予備知識もなしで、急にその場でヒアリングや取材をしなければならなくなったときに使う「3 点ヒアリング」を伝授しちゃいます。まずはこちら。

初対面かつ未知のクライアントや、初見の商品でも、この3つを聞けば、どんな会社か、どんな商品なのか、その輪郭くらいはつかむことができます。ちなみに、この「3 点ヒアリング」からは、こんな構文がつくれたりします。

コピーとして決して強いものではないですけれど、最初の一歩の説明文としては上々です。ついでにもう1 種類の「3 点ヒアリング」もご紹介しちゃいましょう。

これも、非常にミニマムですが、初対面・初見・未知の相手をしゃべらせる、答えを掘り起こすシャベルとしては便利です。この「3 点ヒアリング」がうまくいけば、こんな構文をつくれます。

ヒアリングの相手が他人だとは限らない

「ネタがないぞ!?」からスタートさせてみた今回の授業でしたが、我ながらなかなかどうして、それなりに充実した内容になったのではないかと思います(本当にネタがなかったわけではないんですよ!)。

そうです。今回の授業では、「別部署やクライアントの担当者から情報を掘り起こす」という設定で話を組み立ててきましたが、僕みたいに「書くことが思いつかない自分」に対してシャベルを突き立ててみることも、実は重要なことで、コピーを書く上でも必要なプロセスなんですね。ましてや、みなさんは、自分が商品やサービスの担当者で、かつ、コピーも「書かなきゃいけない人」である場合も多いでしょう。

だから、自分に対して「ネタがないいいい……!」と、うなる前に、コピーを書くために必要な情報を項目化して、他人に質問する感覚で、自問自答を完結させないためのヒアリングシートをつくってみることをおすすめします。

じゃあ、今回はここまで。さっき、僕に対して「コイツ、本当に書くことがないからこのテーマに行き当たったんだな……」という眼差しを向けていた方々はこのあと、説教タイムです。


それでは『書かなきゃいけない人のためのWebコピーライティング教室』、これにて一端終了です。連載開始から約2年間(なのに全部で9回)、ご愛読ありがとうございました。

Rockaku森田先生の次回作にご期待くださいっ。

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Image from Amazon.co.jp
書かなきゃいけない人のためのWebコピーライティング教室

書かなきゃいけない人のためのWebコピーライティング教室

  • 森田哲生[著]
  • 価格: 2,160円 (本体2,000円)
  • 発売日:2016年06月17日
  • 形態:A5(176ページ)
  • ISBN:978-4-04-8656252-0
  • 発売:KADOKAWA
  • 目次
    1限目 カレーで学ぶ、書くための「レシピ」
    2限目 「魔法」でわかるWebコピーライティングの4大属性
    3限目 「看板」から学ぶ「見出し」の基本設計とは!?
    4限目 「キャッチコピー」の「ピラミッド」から脱出せよ
    5限目 「トラウマ」からひもとく、キャッチコピー改善セラピー
    6限目 「ボディコピー」を「ナイスバディ」に変える方法
    7限目 「情報」を「コンテンツ」に変える告知コピー制作メソッド
    8限目 「サッカー監督目線」で組み立てる LPの情報配置
    9限目 「ムシ歯」でかみ砕くUX(コピー制作シート付き)
    10限目 情報を掘り起こす「シャベル」のつくり方
    11限目 「キャスティング」でコントロールする「トンマナ」演出
    コラム1 言葉の揺れを止める「表記ルール」の設定方法
    コラム2 SNS投稿だって立派なWebコピーライティングだぜ

著者:森田哲生(もりたてつお)

著者写真

1978年生まれ/多摩美術大学卒業後、編集プロダクション、デザイン会社勤務を経て2007年に独立し、コピーライター事務所Rockaku(ろっかく)を創業。広告代理店やメーカー、制作会社など多彩なパートナーとともに、コピーワーク、ネーミング、情報設計などを手がける。また、宣伝会議、OpenCU、CSS Nite、スクー、その他企業研修などでコピーライティングの講義を多数担当し、それなりにほめられているらしい。


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