2011年8月15日から米サンフランシスコで検索エンジンとソーシャルメディアに関するカンファレンス「SESサンフランシスコ2011」が開催された。SES2011は、デジタルマーケティングに関する最新情報を学ぶ場として、全米はもとより世界各国から業界関係者や広告主が集まる。13回目となる今回はデジタルマーケティングの市場が拡大を続ける背景もあり、史上最多の業界関係者が3日間で100以上のセッションやネットワーキングイベント、デジタルマーケティングの管理ツールを開発するベンダーや媒体の展示会に参加した。
SES2011の特徴は原点回帰
SES2011でも、従来からあるソーシャルメディアの活用事例や、ソーシャルメディアが検索エンジンのアルゴリズムに与える影響などの最新情報が満載だった。一方、コンテンツの重要性を強調した、原点回帰とも言えるセッションが多くあったことも特徴だ。Googleが圧倒的なシェアを持つアメリカでは、Googleの新アルゴリズム「パンダ」への対応が急務になっている。「パンダ」は、内容の薄いリンク集や外部リンク対策で作られた自動生成サイトの除外を目的に、サイトのテキストの内容を解析して、正しい文法で書かれた文章かどうか、サイトのコンテンツの所有者が誰かなども、解析の対象となっているといわれる。
とはいえ、コンバージョン率を上げる正しい施策を実行していけば、「パンダなんて怖くない」といえるだろう。ECサイトであればランディングページにユーザーが探している商品や訴求ポイントなどの情報を掲載し、カゴに入れてからチェックアウトするまで、ユーザーの期待を裏切らないコンテンツ作りを心がけるなど、検索ユーザーの意図を理解したコンテンツを用意していれば、おのずと検索エンジンにも評価されやすいサイトになるはずだからだ。
SESで毎年人気があるのが、コンバージョン率を上げる施策立案の第一人者であり、「Always Be Testing」の著者でもあるブライアン・アイゼンバーグ氏のセッションだ。SES2011では、過去10年間、コンバージョン率の平均は2~3%という低い数値から改善せず、コストをかけても、ほとんどの人が何もアクションを起こさずにサイトから去る現実が指摘された。
こうした状況を打開策は、ランディングページのABテストを実施する為のツール (アメリカにはABテストを実施する為の様々な無料・有料ツールが存在します)の導入と正しいテストを実施するスキルを持つ人材、そしてプロセスの3つが重要、というのがアイゼンバーグ氏の主張。また、サイトオーナーを対象に、実施しているテストの回数を調査したところ、61%が月間5回以下と回答した (上表)という調査結果を紹介し、Amazon.comのような成功しているECサイトでさえ、月間200以上のテストを実施しているのだから、コンバージョン率を改善するために、他のサイトはまだまだやるべきことがある、とマーケターに耳の痛いメッセージを投げかけた。
ランディングページを改善することでコンバージョン率の向上を目指すアイゼンバーグ氏に対して、広告文のクリック率を上げることに着目しているのがデイビッド・グリーンバウム氏。検索ユーザーの心理を理解して広告文を作成し、特定の人でなく複数のライターが広告文を書き、テストをし続けることが重要という「Searcher Psychology」を強調し、成功の秘訣は存在しないことを強調していた。
「テストをし続けろ」というアイゼンバーグ氏とグリーンバウム氏の主張は当たり前に聞こえるが、実際にテストし続けているマーケターはどれほどいるだろうか。たいしてテストしていないのに「リスティング広告は効果がない」と結論を出してはいないだろうか。
実はSESで強調されるのは毎年同じともいえる。コンバージョンを改善する近道は存在せず、テストし続けるしかない。この現実を受け止め、実際にテストをし続けた人たちにだけ、結果が付いてくるのが現実だ。コンバージョンの改善の鍵は「テストをし続ける意思の強さ」なのだ。
SES2011のテーマといえる「良質なコンテンツを作る」ことは検索エンジン対策上にも、コンバージョン向上にも、ますます重要になるのは間違いない。「良質なコンテンツを作る」ためのライティングスキルを身につけることが、マーケターにとって、これまで以上に大きな課題になるだろう。
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ルグランでは、今年のSESでも話題になった「ライティング」について、来る10月5日、Web Professional編集長 中野克平氏をゲスト講師に迎え、「デジタルマーケティングの効果を最大化するWebライティング~ストーリーを作ろう~」をテーマにセミナーを開催します。ライティングスキルを身につけたい方、この機会にぜひご参加ください。
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