本連載は、筆者がポケットマネーを出して衝動買いしたモノを、実際に使って、その使い勝手や印象を書くコラムとしてはじめた。
今回も、実はネット上で販売されている、雨予報があると、傘立ての底のLEDが点滅して、玄関を通過して出かける前のご主人様に傘の携帯をするように知らせてくれる、という流行の「ナンチャッテIoT系傘立て」を予約購入して自宅に届いていた。
毎年、台北で開催される恒例の「COMPUTEX TAIPEI 2016」から戻った筆者は、早速、そのブツを開梱して、必要なスマホアプリもダウンロード、すぐさま使ってみたが、どうも動作がおかしい。自宅にあったAndroid系スマホの3台ほどにアプリを入れて使ってみたが、いずれの機種でも動作不良だった。
やってることは、ほかのこの手のIoTガジェットと同様、基本的にお天気サーバーに見に行ってるのはスマホとそのアプリで、傘立てはスマホからのお天気データの送信を受けて光っているに過ぎないが、あたかも昨今流行の“スマートな”傘立てに思えるところがミソなのだ。
しかし、どうも今回だけは、まったくマニュアル通りには行かない不良品(おそらく初期不良)だった。
原稿ネタも、台北ではさしたるガジェットも見当たらず、基本的にはその日暮しのライターゆえ、今回は予備の原稿アイテムもない。
今週は連載をパスしようかなと思った矢先に、この2年ほど商品企画していたツバメノート謹製の革製手帖ができ上がって、出荷開始した。そこで衝動買いアイテムではなく衝動制作アイテムとして急遽ご紹介させていただくことにした次第だ。
時間とコストをかけて贅沢に作るノート
「ツバメ・ダ・ビンチ手帖」は、Thinking Power Projectが企画とプロデュースを担う。紙と手帖部分の製造のツバメノート、革表紙の製造・加工のcobu(小泉製作所)の三者のコラボ製品だ
実は、筆者は仲間数名と2008年よりやっている東京浅草橋の「ツバメノート」とのコラボレーション大学ノートを今までに約70万冊ほど出荷している。
2007年に、数人のメンバーを基盤とした「Thinking Power Project」という大袈裟な名前を付けたプロジェクトを作って、仲間内で企画した大学ノートを「Thinking Power Nitebook」というブランド名で販売している。当初は、仲間内だけで使うためのプライベートブランド大学ノートだったが、いつの間にか一般に販売するようにもなった。
もちろんこの70年間にわたって桁違いな数量を出荷し続けているツバメノートのオリジナル大学ノートとは別企画の商品だ。ツバメノートといえば、あの黒澤明監督やデザイナーのアニエスベーなどの著名人もユーザーだった大学ノートの老舗だ。
2年ほど前にメンバー間の雑談の中から、東京の罫引き職人さんが、すべて手作業で作る大学ノートや、革職人さんが作る革手帖の話が自然と盛り上がり、それが2年の歳月を経てやっと今回発売されることとなったのだ。
ダ・ヴィンチへのオマージュを表わした大きなエンボスが特徴
歴史を超えた“万能の天才”レオナルド・ダ・ヴィンチへのオマージュで、商品名を「ツバメ ダ・ヴィンチ手帖」と名付けた。とにかく商品は、一から十まですべて手作りというのが最大のウリだ。今時、製作コストをまったく気にせずに作る商品などとあり得ない話だが、あり得ないからこそやってみよう、というのが今回のプロジェクトのはじまりだった。
すべてのものが機械化による大量生産が普通の時代に、手帖のもっとも基本となる紙の選択から罫線引き、綴じ方、製本方法、表紙の革張り……それらすべてをそれぞれ異なる専門性の高い職人の手作業で実現した手帖など、平成の世では存在しないだろう。どこにもない贅沢さを時間とコストをかけてとにかく作ってみる、というのが今回の「ツバメ ダ・ビンチ手帖」の最終ゴールだった。
商品企画は2年前からあった訳なので、実現するまでの商品企画にはそれほどの時間を要さなかった。「ツバメ・ダ・ビンチ手帖」は、前述したThinking Power Projectとツバメノート、革加工のcobu(小泉製作所)の3社コラボレーションによる70年に渡るツバメノート史上初の総革製手帖となったのだ。

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